東京交響楽団 川崎定期演奏会 第87回 Live from MUZA!
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2022年9月18日(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:アジス・ショハキモフ
トランペット:ティーネ・ティング・ヘルセット
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 
ドビュッシー:「管弦楽のための映像」より “イベリア”
   T.通りから道から
   U.夜の香り
   V.祭りの日の朝

トマジ:トランペット協奏曲

(ソリストアンコール)
オーレ・ブル:ラ・メランコリー

(休憩20分)

プロコフィエフ:交響曲 第5番 変ロ長調 op.100
  

 今回は、5月以来4ヶ月ぶりの東京交響楽団の「ニコ響」生配信を視聴させていただくことにしました。同時刻に開催された長岡での東京フィルの演奏会に行きましたので、リアルタイムでは視聴できませんでしたが、見逃し配信がありましたので、これを視聴させていただきました。

 今日の川崎定期演奏会は、前日のサントリーホールでの第703回定期演奏会と同じ内容です。指揮者のアジス・ショハキモフはウズベキスタン出身の指揮者で、トランペット協奏曲で共演するティーネ・ティング・ヘルセットは、ノルウェー出身です。ともに初めて聞く名前であり、事前知識も全くありませんでしたが、定期演奏会に招聘されたわけですので、それなりの実力者なんだと思います。
 曲目は、ドビュッシーとプロコフィエフは聴いたことがありますが、トマジは初めてです。どんな曲で、どんな演奏を聴かせてくれるのか興味深く思われました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟定期方式が、すっかりと川崎でも定着したようですね。最後にニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られました。今日の次席は廣岡さんで、田尻さんは2列目におられました。オケは16型のフル編成で、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置です。ハープが2台、ピアノ、チェレスタもあって、ステージいっぱいのオケは壮観です。

 ショハキモフさんが登場して、ドビュッシーの「イベリア」で開演です。オーボエの荒木さんを始め、東響管楽器陣の素晴らしさが如実に示され、ビロードのような弦楽アンサンブルの美しさに感嘆しました。夢幻の夜が明けて、チューブラベルが鳴り響いて祭りが始まり、賑やかさ街の喧騒の中で曲は終わりました。美しいサウンドに魅了され、指揮者の曲作りに感心しました。

 ステージが転換されて、オケはかなり縮小されて、続いてはトマジのトランペット協奏曲です。トマジという作曲家は初めてですが、フランス出身で指揮者としても活躍しましたが、難聴のため作曲活動に専念したそうです。
 花柄のドレスで、ショとカットのヘアが麗しいヘルセットさんとショハキモフさんが登場して演奏開始です。タブレットでの楽譜を見ながらの演奏で、2種類のミュートを使い分けて、多彩な音色で楽しませてくれました。
 当然時初めて聴く曲ですが、ジャズ的な雰囲気もあり、素人でも難曲だと分かるものでした。超絶的なハイトーンの美しさ。目まぐるしく変わる音色の多彩さ。聴かせどころと思われる長大なカデンツァ。そのまま第1楽章は終わってしまいました。 
 ハープの伴奏で始まった第2楽章ノクターンは、夢幻の世界へと誘われ、夜霧が漂う月明かりの深い森の中に迷い込んだかのようで、しっとりと美しかったです。第3楽章は、明るく躍動的にリズムを刻み、軽快な音楽にウキウキさせられながらフィナーレを迎えました。
 拍手に応えて、日本語で挨拶があり、ソリストアンコールは、ノルウェーの曲のようですが、心にしみる美しい曲であり、美しい演奏でした。
 なお。カーテンコールでの出入りで気付きましたが、ヘルセットさんは靴は履かず裸足でした。靴を履くと安定しないんでしょうね。

 休憩後の後半は、プロコフィエフの交響曲第5番です。オケのサイズは再び大きくなって16型に戻りました。ショハキモフさんが登場して演奏が始まりましたが、指揮棒なしでの演奏です。
 プロコフィエフの交響曲は、CDは持っているのですが、食わず嫌いでほとんど聴いていないのが実情です。しかし、この5番だけは聴きやすいように思います。随分と前の話しになりますが、2000年4月に、ゲルギエフ指揮のロッテルダム・フィルが新潟で演奏しており、そのときの感動は今でも記憶に残っています。
 第1楽章は同じ主題が何度も出てきて耳から離れなくなりますが、最後はドラが鳴り響き、壮大な盛り上がりの中に楽章を閉じました。
 第2楽章は疾走するように軽快に走り抜けて、途中でひと休みを挟みながら、蒸気機関車が徐々にスピードアップするかのように軽快にリズムを刻み、猛スピードで突進しました。
 第3楽章は、ゆったりとしたアダージョ楽章ですが、息が詰まるような重苦しさと、うねるような感情の渦巻きが次第に大きくなって、切なく胸に響いてきました。
 第4楽章は、第1楽章の主題が現れて、その後は再び蒸気機関車のように軽快にリズムを刻み、耳なじみのよい主題が次々と形を変えては現れて、どんどんとスピードアップしてフィナーレを迎えました。
 躍動感に溢れて軽快に走り抜ける音楽は気持ちよく、暑さを吹き飛ばすような爽快な気分にさせてくれました。指揮者の技量がどうなのかはわかりませんが、これほどの演奏を創り上げたわけですので、すばらしい指揮者なんだと思います。まだお若いようであり、今後の活躍が期待されました。

 先回は東京フィルの素晴らしさに感嘆したばかりですが、東響も負けていませんね。特に管楽器陣の素晴らしさは賞賛すべきでしょう。ネット配信ではありましたが東響の良さが伝わってきました。こんな演奏を無料で聴かせてもらって感謝したいと思います。

 

(客席:PC前、無料)