東京交響楽団 名曲全集 第177回 Live from MUZA!
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2022年5月15日(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ノット
オルガン:大木麻理
コンサートマスター:小林 壱成
 
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

デュサパン:オルガンとオーケストラの為の二重奏曲「WAVES」
                        (日本初演)
(休憩20分)

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 op.90

(アンコール)
マーラー:交響曲第1番 より 花の章
 今日は出かけることができず、代わりに「ニコ響」で無料配信された東京交響楽団の名曲全集第177回を聴かせていただくことにしました。このプログラムは、昨日の東京オペラシティシリーズ第127回と同じ内容です。

 ニコニコ生放送のサイトに接続しますと、無人のステージが映し出されていました。このページを作り始めたところで開演時間となり、拍手の中に団員が入場し、最後に本日のコンマスの小林さんが入場して大きな拍手が贈られました。
 オケは12型で、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、コントラバスとチェロは左側で、ヴィオラは右です。今日の次席は田尻さんで、廣岡さんはお休みのようです。指揮台には譜面台がありません。

 チューニングを終わり、マスクをしたノットさんが登場、マスクを外して演奏開始。1曲目はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です。相澤さんのフルートが美しく、深遠な音楽世界へと誘われました。オーボエをはじめ、管の各パートもお見事で、弦も美しく、高雅な音楽に、汚れた私の心が浄化されるように感じました。

 続いては、指揮台に譜面台と楽譜が運び込まれ、打楽器・金管など団員が増強されてチューニングとなりました。オルガンの大木さんがノットさんとともに登場して、デュサバンの「オルガンとオーケストラのための二重奏曲」です。
 オルガンの演奏台はステージ右奥に設置されていました。通常オルガン奏者は地味な衣裳が多いのですが、今回はオルガンが主役ということで、大木さんは右肩を露出した濃いピンクの衣裳で艶やかでした。オルガンには譜めくり・ストップ操作の助手が付きました。
 P席後方のオルガンの両脇にフリューゲルホルンが一人ずつ配置され、見たこともないような楽器も含む多彩な打楽器群が目を引きました。
 日本初演ということですが、昨日オペラシティで演奏されていますので、厳密には、今日は2回目ということになりましょう。
 当然初めて聴く曲ですが、オルガンとともに金管や打楽器群が賑やかに、不気味に鳴り響きました。怪獣でも現れそうな重く、おどろおどろしい音楽で、PCを介しての演奏は、オルガンの重低音が身体に響きませんので、その迫力は伝わりにくかったと思いますが、会場で聴いたら音の洪水で溺れそうになったのではないかと思います。凡人の私には理解しがたかったですが、聴き応えある曲で、緊張感の中に心地良い疲労感を感じました。打楽器群の大爆発で曲は終わりました。
 大きな拍手が贈られ、P席にいたフリューゲルホルンの2人もステージに降りてきて、ノットさんや大木さんとともに拍手を受けていました。

 休憩後の後半は、ブラームスの交響曲第3番です。譜面台は片付けられていました。ノットさんが登場して演奏開始です。
 第1楽章開始とともに、あまりのゆっくりさに驚きました。ゆったりと、朗々と歌わせるのは良いかと思いますが、さすがの東響もアンサンブルが危うげで、どうなるかと心配したのですが、徐々にまとまってきて、私の耳も慣れてきました。終盤のうねるような弦楽のアンサンブルは美しかったです。大きくテンポを揺り動かして盛り上がるのですが、でも、やっぱり遅すぎかなあ。
 第2楽章も同様に進行しました。ゆったりと歌わせた音楽は牧歌的な世界を感じさせ、癒しを与えてくれるように感じました。木管と弦楽のアンサンブルが美しかったです。
 第3楽章は、切々と胸に迫る感傷的なメロディが魅力なのですが、ゆっくりと歌わせた分だけ味わい深く、より悲しく、より切なく胸に響きました。ホルンやオーボエなどの聴かせどころのソロも美しかったです。
 第4楽章は、ゆっくりした序奏の後はギアチェンジして疾走と期待したのですが、基本は変わりません。でも、曲自身が盛り上がる構成ですので、次第に熱を帯びていき、ほどほどの爆発をしてくれました。最後は再びゆっくりと、ゆったりと歌わせ、金管のコラールも美しく、優しく包み込むように静かに曲を閉じました。
 全体として、個性的で非常に美しい演奏でしたが、私的には、やはりゆっくりすぎに感じました。ノットさんの曲作りと私の波長が合わなかったのだと思います。ゆっくりした中に緊張感を保ち続け、美しく乱れることなく演奏を続けた東響の素晴らしさは賞賛すべきでしょう。

 大きな拍手に応えて、サプライズがありました。なんとアンコールとして、マーラーの交響曲第1番の「花の章」が演奏されたのです。
 トランペットソロが美しく、心に染み渡りました。オーボエもきれいで、東響の管楽器群の素晴らしさを実感しました。美しい演奏に酔い、先ほどのブラームスより感動できました。

 拍手は続き、団員が去った後もノットさんはステージに出て、拍手に応えていました。終わり良ければすべて良し。良い演奏会だったと思います。
 

(客席:PC前、無料)