外村理紗ヴァイオリン・リサイタル
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2022年6月18日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ヴァイオリン:外村理紗
ピアノ:沼沢淑音
 
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op.45

シベリウス:4つの小品 Op.78より 第2曲「ロマンス」
シベリウス:5つの小品 Op.81より 第3曲「ワルツ」
                 第2曲「ロンディーノ」
シベリウス:2つのユーモレスク Op.87

(休憩20分)

フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28

(アンコール)
エルガー:愛の挨拶

 りゅーとぴあの会員増を図るための「りゅーとぴあ会員限定コンサート」が今年度も3回開催されますが、その第一弾がヴァイオリンの外村理紗(ほかむらりさ)さんのリサイタルです。共演するピアニストは沼沢淑音(ぬまざわよしと)さんですが、どちらもちょっと読みにくい名前ですね。

 外村さんは、2001年生まれという若さですが、2017年の第86回日本音楽コンクールで第2位となったあと、2018年の第10回インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで第2位(最年少ファイナリスト)を受賞し、これは日本人としては6大会24年ぶりの入賞だったそうです。さらに同年にニューヨークで開催されたYoung Concert Artists International Auditionで優勝と、輝かしい実績を残されて注目されました。
 そして、昨年7月の東京交響楽団第121回新潟定期演奏会に登場し、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で新潟の聴衆を魅了しました。その実績を買われて、今回のりゅーとぴあでのリサイタル開催へつながったものと思います。
 また、ピアノで共演する沼沢さんについては、今回まで存じ上げませんでしたが、1987年生まれで、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマからモスクワ音楽院で学び、国内外の数多くのコンクールで優勝・入賞されておられます。新潟出身の鍵冨弦太郎さんと今日の演目でもあるフランクのヴァイオリンソナタを録音されており、今日の演奏も楽しみでした。
 
 私もりゅーとぴあの有料会員の端くれですので、この会員限定のコンサートを聴かせていただくことにしましたが、フランクのヴァイオリンソナタをメインに、今年1月から日本音楽財団から貸与されているストラディヴァリウス「ジュピター」とともに、どんな演奏を披露してくれるのか期待が高まりました。

 与えられた雑務をこなし、りゅーとぴあへと車を進めました。白山公園駐車場に車をとめ、上古町の楼蘭で極上の冷やし中華をいただき、りゅーとぴあへと向かいました。
 今日は何かのイベントでもあるのか、古町通りや白山公園では写真撮影している若者たちがたくさんおられました。何はともあれ、人が多いのは良いことですね。

 りゅーとぴあに入館し、チラシ集めをして、開場とともに入場して、この原稿を書きながら開演を待ちました。会員限定コンサートということもあり、客の入りはほどほどというところでしょうか。1階中央は混雑していましたが、私の席周辺は空いていて、隣を気にすることなく音楽に集中できました。

 時間となり、白いドレスの外村さんが、ピアノの沼沢さん、譜メクリストとともに登場。1曲目は、グリーグのヴァイオリンソナタ第3番です。プログラムの解説には、演奏される機会の多い人気曲とありましたが、録音を聴くことはあっても、実演を聴くのは、もしかしたら今回が初めてかも知れません。
 いきなりの力強い演奏に圧倒されました。地に足が着いたといいますか、どっしりと、重心が低い安定感のある演奏でした。若さ溢れるフレッシュな演奏を想像していたのですが、見事に裏切られました。
 第2楽章は、ゆったりと歌わせて心を鎮めてくれましたが、もっとロマンチックな方が個人的には好きです。第3楽章は、再びピアノとともにたたみ掛けるようにグイグイと攻めてきて、フィナーレへ向けて熱く燃え上がりました。もっと軽めの演奏を予想していましたので、1曲目から心地良い疲労感を感じました。

 続いては、シベリウスの小品が5曲続けて演奏されました。「ロマンス」「ロンディーノ」「ワルツ」は、優しさが感じられるチャーミングな曲であり、先ほどのグリーグのソナタで感じた疲労感を癒してくれて、うっとりと聴き入りました。「2つのユーモレスク」は、情熱的であり、再び大きく燃え上がって感動を誘い、前半のプログラムを閉じました。

 休憩後の後半最初は、フランクのヴァイオリンソナタです。第1楽章は、個人的にはあっさりとした演奏に感じました。ポタージュスープを期待したらコンソメスープが出てきた感じでしたが、私の勝手な思い入れです。
 第2楽章は、最初はピアノの激しさに負けていたかと思いましたが、次第に熱を帯びてきて攻め込みました。第3楽章は、しっとりと、透明感のある音で、ゆったりと歌わせて、心にしみました。第4楽章は、最初は若干線が細く、ヒステリックに響くことがありましたが、次第に盛り上がってフィナーレを迎えました。

 プログラム最後は、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」です。これは超絶技巧を駆使しながらも、さらりと演奏し、堂々とした演奏で盛り上げてくれましたが、トリを飾るには短い曲ですので、少しあっけなくも感じました。
 前半後半ともソナタを最初に持ってきて、その後に小品という構成には深い意味があるのでしょうが、素人的には逆の方が楽しみやすい良いように思いました。

 大きな拍手に応えて、外村さんと沼沢さんの挨拶があり、アンコールはエルガーの「愛の挨拶」です。デザート代わりの爽やかな演奏で、コンサートを締めくくってくれました。

 外村さんと沼沢さんの共演は今回が初めてだったそうです。外村さんは、リハーサルまで沼沢さんがどんな人か知らなかったそうです。プロとはいえ演奏家も大変なんですね。

 2001年生まれとのことですので、まだ21歳という外村さんですが、安定感のある演奏に驚きました。逆に言えば、若さを感じない演奏ともいえ、フレッシュさや華やかさ、光輝くような色彩感は感じさせず、演奏する姿、生み出される音を含めて、どっしりとして、巨匠然とした、燻し銀の風格すら感じさせる演奏でした。
 名器・ストラディヴァリウス「ジュピター」の豊潤な響きもあってのことと思いますが、この年齢で、ここまで熟した演奏を聴かせてくれるとは大したものですね。まあ、私の勝手な妄想ですけれど・・。

 これからさらに羽ばたいていくこと間違いなしであり、若きこの日に、新潟でリサイタルを開催し、それを聴いたということが、後の宝になるようにも思われました。今後の発展を祈念し、陰ながら応援していきたいと思います。
 

(客席:2階C3-7、¥3000)