東京交響楽団 川崎定期演奏会 第79回 Live from MUZA !
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2021年5月2日(日)14:00 ミューザ川崎コンサートホール
指揮:大植英次
ヴァイオリン:木嶋真優
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

(休憩20分)

チャイコフスキー:交響曲 第4番 へ短調 op.36

  
  

 2021年1月17日に予定していた「川崎定期演奏会 第79回」の延期公演が、本日開催されることになり、ニコニコ生放送で無料配信されることになり、せっかくですので視聴させていただくことにしました。
 東京は緊急事態宣言下にあり、コンサートの開催は難しい状況になっていますが、多摩川を隔てた川崎は緊急事態宣言から外れており、予定通りの開催となりました。

 今日の指揮者は大植英次さん、そしてヴァイオリン独奏は木嶋真優さんです。大植さんもさることながら、美人に弱い私は木嶋真優さん目当てであることを正直に告白しましょう。

 なお、大植さんと東響との共演は、2014年3月の東京交響楽団第82回新潟定期演奏会で聴いて以来7年振りですが、そのときもプログラムはチャイコフスキーでした。
 木嶋真優さんは2018年7月に上京した折に、新日本フィルハーモニー交響楽団ルビー 第16回でブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて以来ですので、3年振りになります。

 さて、2日14時の開演でしたが、この時間は東京グランド・ソロイスツのコンサートに行っていましたので、リアルタイムでは視聴できず、タイムシフトによりゆっくり視聴させていただきました。


 ということで、ニコニコ生放送のサイトに接続し、開演を待ちました。次第に客席が埋まってきましたが、空席もかなり目立ちました。自粛している方も多いのでしょうか。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にニキティンさんが入場して大きな拍手が贈られました。こういう光景は新潟では当たり前ですが、東京や川崎では珍しく、コロナ禍になってからのように思います。
 オケはやや小ぶりで、弦5部は12-10-8-6-4で、対向配置ではなく通常の並びです。今日の次席は田尻さんで、弦楽器はマスクを着用しています。指揮台には譜面台はありません。定番曲ということで、スコアは必要ないのでしょう。

 クリーム地に銀のスパンコールのドレスが麗しい木嶋さんと大植さんが登場して、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。
 ゆったりとした出だしで、ゆったりと大きく歌わせ、オケもゆっくりと堂々と歌わせました。ちょっとゆっくりすぎじゃないのと思うほどでしたが、緩急のうねりをつけての音楽作りでした。堂々としたカデンツァに圧倒され、木嶋さんの本領発揮というところでしょうか。
 第2楽章は太い音で悠々・堂々と演奏し、メランコリーさは排除し、ヴァイオリンと木管との絡み合いも少し醒めた感じで、ゆっくり、ゆったりと歌わせました。
 そして、力強く燃え上がる第3楽章へ。最初のピチカートは弦が切れんばかり。力でグイグイと押し切って行き、蒸気機関車が疾走するような爽快感がありました。中間部の緩徐部ではゆっくりと歌わせ、終盤で一呼吸して汗を拭き、ギアチェンジしてスピードアップ。パワー全開でフィナーレへと突き進みました。
 パワーあふれるオケと堂々と渡り合い、力では圧倒するかのようでした。弾き終えた瞬間の木嶋さんの疲れたような表情が熱演を物語っていました。
 数回のカーテンコールでの満足げな表情の木嶋さんが美しかったです。ソリストアンコールを期待しましたが、そのまま休憩に入りました。

 休憩後再び拍手の中に団員が入場。編成が若干大きくなって14型となりました。大植さんが登場し、後半はチャイコフスキーの交響曲第4番です。
 ホルン軍団のファンファーレで演奏開始。全休止の部分がバシッと決まるのが好きなんですが、ばらけた感じで締りがなかったのが少し残念でした。
 第1楽章は、全体として、これでもかというようにゆっくりとした演奏で、崩壊寸前で食いとどまっている感じでした。ちょっとやりすぎというくらいにテンポを揺り動かし、正に大植節です。でも遅すぎというのが私の感想ですが、緊張感を持って演奏し続けた東響の素晴らしさを再認識しました。
 第2楽章も同様にゆったりと歌わせました。緩徐楽章ですのでゆっくりは良いのですが、これもやりすぎに思われました。
 第3楽章はさすがに軽快なピチカートを聴かせてくれましたが、手を使わずに目だけで指揮した大植さんには驚きました。この勢いのまま、アタッカで第4楽章に突入して欲しかったですが、小休止が入りました。
 第4楽章は軽快に勢い良く行くかと思ったのも束の間で、再びゆっくりゆったり、牛歩の歩み。そしてすぐに猛スピードと、この緩急の揺り動かしには降参です。
 最後はギアチェンジしてアクセル全開でフィナーレへと燃え上がりました。ここまでゆっくりすぎるくらいにためを作っていたのは、このフィナーレでの大爆発を計算してのものと気付きました。終わり良ければすべて良しといえましょうか。

 前回聴いたときの印象そのままの大植ワールドの炸裂にひれ伏すのみでした。あまりにも遅すぎて、私の好みとは乖離がありましたが、超個性的な演奏で楽しめたことは間違いありません。

 大植さんの曲作りに見事に応えた東響の皆さんの底力には脱帽です。来日できないノットさんに代わって、大植さんはが15日、16日の演奏会を指揮します。これも期待できそうですね。
 東響は、8日のサントリー定期は中止になりましたが、9日には新潟定期があります。ノットさんに代わって高関さんの指揮です。一部曲目変更されますが、素晴らしい演奏を聴かせてくれるでしょう。楽しみに待ちたいと思います。
  


(客席:PC前、無料)