夏に恒例のオルガン・サマーデイズが、新型コロナ禍の中、今年も無事に開催されました。せっかくですので、昨年に引き続いて参加させていただきました。
この催しは、りゅーとぴあが誇るパイプオルガンを、市民に親しんでもらおうと企画され、市民の体験演奏やオルガンコンサートなどが行われてきました。始まりは2003年頃、和田純子さんが専属オルガニストだった頃ではなかったかと記憶しています。
その後2006年から山本真希さんに引き継がれ、夏の恒例行事になったかと思われましたが、2011年を最後に中断され、昨年久しぶりに開催されました。そして、今春で山本さんが退任され、石丸由佳さんが新専属オルガニストとしてこの催しを引き継がれました。
8月5日には、オルガン演奏経験者のための「思いっきりオルガン演奏体験」が開催され、今日のコンサート後には、オルガンを弾いてみたいという人たちを対象に、「誰でもオルガン演奏体験」という催しが行われます。
このコンサートは、リサイタルとは違った親しみやすいプログラムが組まれ、一般500円(小学生以下無料)の1コインで、市民にオルガンを楽しんでもらおうという企画です。
石丸さんは6月20日に、就任後初のリサイタルを開催され、色彩感豊かで、パワーあふれる演奏で魅了されたばかりであり、今回のコンサートを楽しみに待っていました。
長い梅雨が明けて、真夏の太陽がまぶしく感じたのもつかの間で、天候は崩れ、今日も朝から雨模様です。大雨にならないだけありがたいと思うべきでしょうか。
天気はジメジメ、心もジメジメのなか、りゅーとぴあに到着しました。ちょうど開場となり、検温を通過し、500円を払って入場しました。
客席は、2階正面のCブロックは1席おきに座るようにテープが貼られていましたが、他のブロックは自由に座れるようでした。今回はステージにスクリーンが設置されていましたので、2階正面に席を取りました。
席に座ってこの原稿を書き始めましたが、後から来て私の後に席を取られた御婦人方が賑やかにおしゃべりを始めました。1席おきでしたので、身を乗り出すようにして大きな声でしゃべっておられ、ちょっと困ってしまいました。ときどきこういう目にあいますが、今日はついていないとがっかりしました。
精神修養が足りない私は、いたたまれず開演時間までホワイエに避難しましたが、さすがに開演とともに静かにされて良かったです。
時間となり、グリーンの衣裳の石丸さんが登場して、バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」で開演しました。数あるオルガン曲の中でも、最も有名で演奏を聴く機会が最も多い曲だと思いますが、重々しさは感じられず、明るく軽快な印象を受け、いつも聴く演奏とは一味違ったバッハを聴かせてくれました。
演奏の様子がスクリーンに映し出され、四肢を縦横無尽に動かす神業に、オルガニストのすごさを今さらながら感じました。
ここで石丸さんの挨拶があり、オルガンの説明と、ストップについての解説がありました。「トラベルソ・フルート」というストップについての説明があり、「平均率クラヴィーア曲集第1集第1番」が演奏されました。
前奏曲は「トラベルソ・フルート」の優しく柔らかな響きに酔い、続くフーガは、華やかな豪華な響きで盛り上げてくれました。
続いて、「プリンシパル」というストップの説明があり、パイプの実物を提示し、口で吹いて音を出して説明してくれました。
バッハの「幻想曲」の音形の説明があり、「叫びの音程」、「ため息の音程」などの分かりやすい説明のあと、「幻想曲」を物悲しく、しっとりと演奏しました。
次に、「クロモルヌ」というストップの説明がありましたが、「クロモルヌ」というのはルネサンス期の2枚リードの楽器だそうです。
このストップが演奏効果をあげるバッハの「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」を、明るく軽やかに演奏し、この曲の新たな魅力を感じさせてくれました。
次は、「水平トランペット(トランペッタ・バッターリャ)」と「太陽のストップ」の説明があり、ケルルの「バッターリャが演奏されました。
この曲は先日の「オーケストラはキミのともだち」のウェルカム演奏でも演奏してくれましたが、水平トランペットの賑やかな響きが、勇ましい戦いの雰囲気を醸し出し、最後はオルガン頂上の太陽がカラカラと鳴って演奏を盛り上げました。
ここで、先ほどの「太陽のストップ」の説明があり、実際にどう動いているのか動画で説明してくれて良かったです。
そして「オーボエ」のストップの説明があり、ギルマンの曲が演奏されました。曲名が長いので省略しますが、表彰式で演奏されるお馴染みのメロディが次々と形を変え、最後は壮大な音楽へと登りつめました。
プログラム最後は、これまで紹介したいろいろなストップが大活躍するヴェルディの「凱旋行進曲」を、華やかに力強く演奏し、コロナ禍に疲弊した観客に、元気と希望を与えてくれました。
鳴り止まないは拍手に応え、予定になかったアンコールとして、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」をしっとりと演奏し、聴く者の心を癒して終演となりました。
ファミリー向けの1コイン・コンサートだったはずでしたが、解説もたっぷりとあり、内容の濃いコンサートでした。石丸さんのお話もわかりやすく、新たな発見がたくさんありました。
石丸さんの魅力を再認識し、満足気分で外に出ますと雨が降り続いていました。上古町の楼蘭でいつもの冷やし中華大盛りをいただき、降りやまぬ雨の中に帰路に着き、ストレス多い現実世界へと立ち戻りました。
(客席:2階C5-3、¥500) |