NHK交響楽団 新潟特別演奏会
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2018年10月7日(土) 16:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:井上道義
ヴァイオリン:辻 彩奈
ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル
 

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」

 (ソリストアンコール)
  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン パルティータ第3番 BWV1006
          第3曲 ガヴォット

(休憩15分)

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

 (アンコール)
  J.シュトラウスII/ユーゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ

 りゅーとぴあ開館20周年記念のコンサートです。開館20周年記念という大きな節目ですが、ウィーン・フィルやベルリン・フィルでなく、N響というのが新潟らしいといいますか、今の新潟の身の丈にあった公演に思えます。
 東響定期会員の招待枠の日本のオーケストラシリーズとして考えますと、大御所のN響は、20周年記念に相応しいといえましょう。

 まあ、それはさておき、2017年1月以来久しぶりののN響の新潟公演となります。前回は広上淳一さんの指揮でしたが、今回は井上道義さん。熱い演奏が期待されます。井上さんの新潟での指揮は、2017年4月のラ・フォル・ジュルネ新潟以来です。
 共演するソリストは、ヴァイオリンの辻彩奈さんです。辻さんも2017年のラ・フォル・ジュルネ新潟に出演されています。そのときは出演予定者が演奏できなくなり、急遽代役として演奏したにもかかわらず、素晴らしい、熱い演奏を聴かせてくれたのが今でも記憶に残っています。その後の活躍も目覚しく、日本を代表する若手ヴァイオリニストとして不動の地位を確立されています。前回のような熱く燃え上がるような演奏を期待したいのですが、今日の演目はちょっと小粒な「トルコ風」ですので、静かに燃えることになりましょうか。

 さて、N響は、今日と同じプログラムを昨日埼玉会館で演奏しています。今日は2日目ということで、演奏もこなれているものと思います。どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみにしましょう。


 昨日は日本海を進む台風によるフェーン現象で、記録的な猛暑となりました。夜半からは強風が吹き荒れて、新幹線が止まってN響の皆さんが来れなくなるんじゃないかと心配しましたが、台風は過ぎ去り、強風も収まってよかったです。

 16時開演ということで、ゆっくりと昼食を食べ、所用を済ませて、早めに会場入りしました。明日は新潟シティマラソンが開催されますので、その準備で陸上競技場の駐車場が閉鎖されており、白山公園駐車場はかなり混み合っていました。早めに行って良かったです。

 ロビーでチラシ集めをして、年末恒例の某コンサートのチケットを買い、開場とともに入場しました。ビュッフェでコーヒーをいただき、席に座ってこの文章を書き始めました。ステージ上ではチェロとコントラバス奏者が練習に励んでいました。
 次第に客席が埋まり、いつもの東響定期より客の入りは良く、9割程度は入っていたのではないでしょうか。さすがにN響ですね。

 拍手の中に団員が入場。ゲストコンマスのキュッヒルさんも同時に入場し、挨拶もないまま、チューニングとなりました。前半はモーツァルトで、オケの編成小さく、10型?でしょうか。指揮台はありません。

 井上さんが颯爽と登場して一礼し、振り返るや否や演奏開始。井上さんは指揮棒なしです。演奏は軽やかであり、流れるような音楽は心地良かったです。

 続いて辻さんを迎えて「トルコ風」です。オケの編成はさらに小さくなり、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが刈り込まれ、それぞれ6-4-2となりました。
 井上さんに導かれて青いドレスの辻さんが登場し、演奏開始です。小型で機動力に溢れ、変幻自在に自由に揺れ動くオケに乗って、辻さんのヴァイオリンが自由闊達に、草原を舞う蝶の如く、光り輝く流麗な音楽を奏でました。
 アップテンポの演奏は小気味良く、ちょっと地味な印象を持っていたこの曲からメラメラと湧き上がる感動と興奮を導き出しました。
 辻さんを優しくサポートし、思うが如くに自由に仕事をさせ、ともに全力で駆け抜けて行った井上さんとN響の皆さんのパフォーマンスに感銘を受けました。
 辻さんはアンコールにバッハの「ガボット」をチャーミングに演奏し、上等なデザートをサービスしてくれました。 1997年生まれで、現在現役の音大生というのも驚きです。若き才能を再認識し、今後の更なる発展を確信しました。

 休憩後の後半はブラームスの4番です。オケの編成は大きくなり、14型の通常サイズに増強され、指揮台も設置されました。
 井上さんが登場して演奏開始。前半の小型で機動力あるオケと同様に、大編成のオケでもスピード感に溢れ、一糸乱れずに疾走しました。暗さ、渋さも魅力のブラームスですが、固定観念の皮をそぎ落とし、新時代のブラームスがそこにありました。生き生きと輝きのある音楽。流れ出る音の洪水。
 先週の東響定期で、若き指揮者のエメリャニチェフが、新時代のブラームスを聴かせてくれましたが、井上さんも負けていません。 
 N響のツワモノたちを見事にまとめ上げ、鼓舞し、燃え上がるような熱い演奏を引き出した井上さん。熟練の井上さんとN響の信頼関係があってのことと思いますが、ゲストコンマスのキュッヒルさんの力もあったものと思います。

 大きな拍手に応えて井上さんの挨拶があり、アンコールにピチカート・ポルカを演奏して終演となりました。終わってみれば開館20周年を祝うに相応しい感動と興奮の演奏会になりました。良い音楽を聴いたという満足感を胸に家路に着きました。

(客席:2階C*-**、東響定期会員招待)