東京交響楽団 第107回新潟定期演奏会
  ←前  次→
2018年5月13日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:齋藤友香理
ヴァイオリン:アンティエ・ヴァイトハース
コンサートマスター:水谷 晃
 

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 op.26

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64

(休憩20分)

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

 東京交響楽団新潟定期演奏会の新シーズンのスタートです。今日のプログラムはヴァイオリン協奏曲の定番の3本立てという魅力あるもので、昨日開催された東京オペラシティシリーズと同じ内容です。指揮の齋藤友香理さんも独奏のアンティエ・ヴァイトハースさんも新潟初登場です。どんな演奏を披露してくれるか期待が高まりました。

 定期の日恒例の東響ロビーコンサートでコントラバス・デュオを楽しみ、その後は県民会館小ホールでのコンチェント・ウィンズの演奏会を聴き、連続で東響定期に臨みました。さすがに連続で疲れました。

 いつものように拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスの水谷さんが登場して一段と大きな拍手が贈られました。
 オケは第1ヴァイオリンが12人のいわゆる12型で、ヴァイオリンが左右に分かれ、コントラバスとチェロが左、ヴィオラが右の対向配置です。コンマスは水谷さん、次席は廣岡さんで、田尻さんは2列目です。

 長身のヴァイトハースさんが、 小柄な齋藤さんを従えるようにして登場。水谷さんから音をもらって調弦し、ブルッフで開演しました。
 変にいじることのない、堂々とした演奏。凛とした立ち姿そのままに、燃え上がる熱情を表には出さず、揺らぐことのない堂々とした演奏でした。1曲目から力を抜かない横綱相撲で、節度の中に風格と貫禄すら感じさせました。

 2曲目はメンデルスゾーンです。ロマンチックなメロディが魅力の定番曲ですが、甘くなりすぎず、王者の貫録を感じさせました。華やかに燃えるきらめきの中に、五重塔の心柱のごとく、曲を貫く柱があって、感情に流されず、信念をもって突き進む音楽がありました。濁りのないクリアなサウンドに剃刀の刃のような切れも感じさせました。
 オケも抜群。特に管楽器の素晴らしさも特筆すべきでしょう。素晴らしい演奏でした。前半の2曲だけでも満足感いっぱいになりました。

 休憩後はチャイコフスキーです。3曲目ということで、疲れもあるはずですが、そんなことは微塵も感じさせませんでした。前半の2曲は、ある程度の節度を感じさせましたが、一転して後半のチャイコフスキーではリミッターが外されて、早めのテンポで、熱く燃え上がるような演奏を聴かせてくれました。
 オケも堂々と渡り合い、猛スピードで駆け抜けるF1マシンに臆することなく競り合い、丁々発止の怪演を生み出しました。精神的高揚感がかき立てられ、興奮と感動のフィナーレを迎えました。

 疲れも見せず3曲弾ききったヴァイトハースの体力と演奏技術、そして芸術性の高さに感嘆しました。それを支えて盛り上げた東響の素晴らしさ、燃え上がり爆発させながらも、乱れることなくまとめあげた若き指揮者・齋藤さんの統率力と音楽性の高さ。三者が競い合い、高めあって、一期一会の奇跡を生み出したように思います。今シーズンのベストコンサート候補に挙げておきたいと思います。

 

(客席:2階C*-*、S席:定期会員)