SanDoコンサート vol.88 癒しのアコースティックサウンド
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2018年4月21日(土) 15:00 朝日酒造 エントランスホール
 
フルート:手島尚子
19世紀ギター:植木和輝
 

ジュリアーニ:18の夜のディヴェルティメントより 6曲抜粋 (F&G)

リヴィエ:優しい鳥たち (F)

ガルデル:ポル・ウナ・カベーサ (F&G)
菅野よう子:花は咲く (F&G)

(休憩15分)

レゴンディ:練習曲第1番ハ長調 (G)
マッカートニー:イエスタデイ (G)
禁じられた遊び (G)
ショパン(タレガ編):ノクターン第2番 Op.9 (G)
マッカートニー(武満編):ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア (G)

クーラウ:6つのディヴェルティメント より 第6番 Op.68 (F)

ピアソラ:タンゴの歴史 より 第2楽章カフェ1930、第1楽章 ボーデル1900 (F&G)

(アンコール)
プレスリー:好きにならずにいられない (F&G)
 

 アンサンブル・オビリーの片野さんのプロデュースで、毎月第3土曜日に開催されている「3土(SanDo)コンサート」です。
 会場は、定期的に公演が行われている場所としては県内ではおそらく最も残響が長いと思われる朝日酒造エントランスホールです。豊かな響きの中で聴く音楽は言葉では表現しきれない魅力があります。
 今回は88回目ということであり、長く開催し続けている朝日酒造の芸術への思い入れを賞賛したいと思います。私はこれまで何度か聴かせていただいていますが、今回は昨年2月以来ですので、1年2ヶ月振りとなります。

 今日の出演はフルートの手島さんと19世紀ギターの植木さんです。手島さん、植木さん、それぞれ演奏を何度か聴かせていただいていますが、お二人のデュオとしての演奏は都合が合わなくてこれまで聴けず、私としましては今回が初めてです。

 初夏の陽気の中、快適に朝日酒造に到着。天候の良さも相まってか集客も良く、いつもよりびっしりと椅子が並べられ、100人近く集まったのではないでしょうか。私は正面2列目に席を取りました。

 開演時間となり、クリーム色のドレスの手島さんと黒いスーツの植木さんが登場。挨拶の後、ジュリアーニの「18の夜のディヴェルティメント」から6曲が続けて演奏されました。
 小型な19世紀ギターの優しい音色と、残響豊かなホールに響く柔らかなフルート。土曜の午後にゆったり聴くには最良の極上の音楽に、早くも心は癒されました。

 続いてはフルートソロで「優しい鳥たち」。ミステリアスな響きに魅了され、鳥たちが飛び上がっていく情景が目に浮かぶようでした。

 次は譜面台を横にやり、「ポル・ウナ・カベーサ」。息のあった二人がアイコンタクトしながら、お馴染みのタンゴのメロディが優しく軽快に響きました。そして、前半最後は「花は咲く」で、しっとりと穏やかななかに締めくくりました。


 後半はプログラムの順番を変えて、植木さんのギターソロで始まりました。レゴンティの「エチュード」の後は、「イエスタデイ」、「禁じられた遊び」、「ノクターン第2番」というお馴染みの名曲が演奏され、プログラムにはなかった「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」が追加で演奏されました。
 抜群のテクニックに裏打ちされ、ガット弦の19世紀ギターならではの柔らかな響きが耳に優しく、心に癒しをもたらしました。5曲演奏されましたが、この間手島さんは椅子に座ってひと休み。

 植木さんの独奏コーナーが終わって、満を持しての手島さんのフルートソロ。クーラウの「ディヴェルティメント」が演奏されましたが、手島さんの魅力が溢れ、フルート音楽の魅力を知らしめてくれるような渾身の演奏だったと思います。

 最後はピアソラの名曲「タンゴの歴史」から、順番を変えて第2楽章・第1楽章の順で演奏されましたが、最後を飾るに相応しい柔らかさの中にも情熱を秘めた演奏だったと思います。

 アンコールに「好きにならずにいられない」を演奏して終演となりましたが、まさに“好きにならずにいられない”ような、素晴らしい演奏だったと思います。

 容姿端麗な手島さんのフルートは心を洗うようであり、音楽の女神が降臨したかのよう。美しい人が美しい曲を美しく演奏すると、美しさは何倍にも増幅され、この上なく美しく感じます。(何を言いたいのか・・)

 そして、植木さんの19世紀ギター。ガット弦を爪でなく指ではじく19世紀ギター。ちょっと体を揺らしながらの立奏での演奏。繰り出される音はどこまでも優しく、柔らかく、聴く者の心を包み込むような包容力をも感じさせます。

 この二人が、残響豊かな極上の空間で創り出す音楽は、「癒しのアコースティックサウンド」というコンサートの副題がぴったりです。

 活発な活動をされている二人はいろんな場所で、疲れきった現代人の心を癒してくれることでしょう。次は5月5日の新潟クラシックストリートでも演奏されるそうです。

 良い音楽を聴いた満足感を胸に、快晴の空が広がる中、新潟市へと帰路に着きました。
 

(客席:正面2列目、当日券¥1200)