牛田智大 ピアノ・リサイタル
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2015年10月11日(日) 14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ピアノ:牛田智大
 

グリンカ/バラキレフ編:ひばり

モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265

グラナドス:組曲「ゴイェスカス」恋するマホたち より “愛と死(バラード)”

ショパン:バラード第1番 ト長調 Op.23

リスト:死の舞踏 「怒りの日」によるパラフレーズ S.525

(休憩20分)

エルガー:愛の挨拶

クライスラー/ラフマニノフ編:愛の悲しみ、愛の喜び

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43 より 第18変奏曲

ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー

(アンコール)
プロコフィエフ:戦争ソナタ より 第3楽章
ベートーヴェン:ピアノソナタ「月光」より 第2、第3楽章
リスト:愛の夢
 

 15歳の天才ピアニストというキャッチコピーの牛田さんのリサイタルです。新潟への来演は、2014年6月の、ウィーン・カンマー・オーケストラとの共演以来であり、そのときはショパンのコンチェルトをロマンティックに聴かせてくれました。単独のリサイタルとしては2013年2月以来であり、どのように成長した姿を見せてくれるか期待が高まりました。

 今日は他にも行きたいコンサートが同時刻に重なり、悩ましい日となりました。先にチケットを買っていたこのコンサートに行くことにしましたが、ほかは行けなくて誠に残念です。

 今日は新潟シティマラソンが開催され、1万2千人のランナーが健脚を競いました。陸上競技場横を通りましたら、ちょうど最後のランナーが帰ってくるところでした。天候すぐれぬ中、皆さんご苦労様でした。

 ホールに入りますと、3階席は使用されませんでしたが、1階と2階正面はほぼ埋まり、なかなかの盛況です。さすがに女性客が多いですね。それも若い人が多く、牛田人気を感じさせました。

 グリンカの「ひばり」で開演しました。詩情溢れる美しい響きに心が奪われました。最初から牛田ワールドが炸裂し、ダイナミックさと繊細さを併せ持つピアノの響きに酔いしれました。

 以下、どの曲も、曲こそ違いますが印象は同じでした。変幻自在、豪快に弾いたかと思えば、たっぷりとためを作って歌わせ、自分の世界を創っていました。
 その自由な音楽は、ジャズの即興演奏に近く、クラシック音楽という枠にはめることはできません。ホールいっぱいに響き渡る強靭な響きは豪快であり、力強さに溢れ、アイドルチックな容姿からは想像できません。目を閉じて聴けば、ロシアの大柄のピアニストが弾いているのではないかと思うほどです。
 どの曲も楽譜から離れて自由であり、牛田さんの音楽です。芸術性がどうの、精神性がどうのと論ずるのは意味がなく、素直に流れる音楽に身を委ねました。

 終演後はサイン会が開催されましたが、若い女性がずらりと並び、その数に圧倒されました。牛田さんを聴くのがこれが3回目となりましたが、目覚しい成長に驚きを感じました。

 しかし、このように崩した音楽は、賛否両論があるかもしれません。豪快さ、ダイナミックさは、裏を返せば荒っぽさと裏腹であり、もっと丁寧に演奏すべきという意見もあるかもしれません。どの曲も同じように聴こえたというのも問題かもしれません。でも、楽しく聴けたということは間違いなく、心地良いひとときを過ごすことができて良かったです。

 アンコールをたっぷりと演奏して終演は4時20分。曲目多彩で、ボリュームいっぱい。大いに楽しませていただきました。ステージマナーも好感度満点。すばらしい好青年です。これからどのようなピアニストに成長していくのか、応援しながら見守りたいと思います。
 
 

(客席:2階C5-3、¥3500)