春のえんとつ音楽祭 薫風の音
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2015年4月4日(土) 15:00  新潟古町えんとつシアター
 
薫風之音  箏:藤崎浩子、尺八:鯨岡 徹
 


時の細道、とうりゃんせ

花舞の空

砂山 〜汐鳴りのしらべ〜

たまゆらのもり

籠の鳥

月の雫

百花咲く

(アンコール)さくらゆらり
 
 
 コンチェルトさんでのインストアライブを終えて、今度は薫風之音のライブです。東堀通6のGEビルの地下にできた新潟古町えんとつシアターという小劇場のオープニングイベントのひとつとしての公演です。どんな場所か確かめるついでに参加させていただきました。

 薫風之音は、箏の藤崎さん、尺八の鯨岡さんの二人によるユニットですが、邦楽という枠から飛び出し、オリジナル曲を携えて、いろんな場所で活発な活動をされています。私個人としましては、薫風之音の演奏を聴くのは昨年10月以来となります。
 また、鯨岡さんは、新潟市ジュニア邦楽合奏団の指導者としての側面もあり、先日の新潟市ジュニア音楽教室のスプリングコンサートでも、子供たちから見事な演奏を引き出してくれました。演奏者として、指導者として、新潟の音楽界の牽引者のひとりであることは間違いありません。

 さて、会場の古町えんとつシアターは、雑居ビルの地階にあり、入り口は狭く、雑然としていますので、初めての人にはちょっとわかりにくいかもしれません。総定員50人ほどの小劇場で、階段状に組まれた台の上にパイプ椅子が並べられていました。開演時間が迫っていましたが、前の方は席が空いていましたので、最前列に席を取りました。

 演劇を主体とする小劇場ということで、寸劇風のオープニングで開演しました。虚無僧が現代にタイムスリップしたという趣向。藤崎さんと鯨岡さんの軽妙な掛け合いで、会場の空気を一気に和ませました。以後、狭い空間ながらPAも使用しての演奏でした。

 着物風のドレスで、片側の肩を出した藤崎さんは、相変わらずの美貌です。のどを痛めて声が出ないとのことでしたが、演奏には影響はないご様子でした。通常の十三弦の箏のほか、十七弦の箏も使用し、あらかじめ録音していたと思われる演奏と合奏するようなやり方で演奏されました。
 1曲ごとにチューニングを手際よくされていましたが、そのお姿もひとつのパフォーマンスとして見映えがありました。演奏の素晴らしさは言うまでもないですが、ビジュアル的にも魅了されました。最前列に席を取って大正解でした。

 鯨岡さんは箏のチューニングの間はトークで楽しませ、ユーモアあふれる演出に会場は和やかな雰囲気でした。1尺8寸と1尺6寸の2本の尺八を用意されていましたが、ほとんど1尺6寸の尺八を使用しての演奏でした。
 演奏は新潟を代表する尺八奏者ですから、素晴らしいとしか言いようがありません。迫力と繊細さを併せ持ち、尺八の魅力を十二分に発揮されていました。箏と寄り添い、時にはせめぎ合い、心に響き、染み渡るような音世界を創り出していました。

 砂山では観客も参加。私も波の音の擬音に加わりました。いずれの曲も鯨岡さんのオリジナル、あるいは編曲であり、箏と尺八の絶妙のアンサンブルを楽しませてくれました。

 1時間ほどの短い公演であり、各楽器の独奏も含めてもう少し聴きたかったようにも思いましたが、古町えんとつシアターのオープン記念公演のトップバッターとしては大成功ではなかったでしょうか。

 最近元気がない古町地区にあって、この小劇場の開場はうれしいことであり、街の活性化に繋がるのは間違いありません。今後の発展を陰ながら応援したいと思います。


(客席:1列目正面、当日券:\1500)