プロジェクト・リュリ第5回演奏会  フランソワ・クープランを巡って vol.3
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2012年11月23日(金) 14:00  だいしホール
 
ヴァイオリン:佐野正俊、ヴィオラ・ダ・ガンバ:中山 徹、チェンバロ:師岡雪子
(友情出演) ソプラノ:風間左智、ヴァイオリン:庄司 愛
 


パッヘルベル:組曲集「音楽の歓び」より Partie IV 
(庄司、佐野、中山、師岡)

クープラン:組曲集「諸国民」より 「ビエモントの人々」 
(佐野、庄司、中山、師岡)

(休憩15分)

クープラン:王宮のコンセール 第4番 
(佐野、中山、師岡)

モンテクレール:カンタータ「誠実な愛の勝利」 
(中山、師岡、風間)

ヴィヴァルディ:フォリア (トリオソナタ集作品1より) 
(庄司、佐野、中山、師岡)

(アンコール)
ブクステフーデ:Herr, wenn ich nur dich habe 
(庄司、佐野、中山、師岡、風間)
 
 

 今日は勤労感謝の日。幸い休みがとれました。当初の暖冬の予報が覆され、寒い冬になるとの予報。明日の天気予報は雪マーク。職場は山の麓なので、朝一番にカー用品店で冬タイヤを購入して装着。冬への準備を整えました。そして午後はこのコンサートへ出かけました。

 クラシック好きの私ですが、古楽やバロック音楽には疎く、あまり聴く機会がありません。主催者である旧友の中山氏よりお誘いを受け、不得意であるこの分野の見聞を深めるため、第3回第4回に引き続いて今回も聴きに行きました。

 小雨が降り、肌寒い休日の午後。開場時間にホールに到着し、席に着きました。客の入りは、いつも程度でしょうか。久しぶりに会う友人夫婦の姿もあって、言葉を交わすことができて良かったです。また、すぐ近くには、ブログでご活躍の某氏のお姿もありましたが、声はおかけしませんでした。

 1曲目はパッヘルベルです。左から庄司さん、佐野さん、中山さんと並び、後方に師岡さんです。これまでクープランを中心として、フランスの音楽を演奏してきていましたが、今回はドイツの音楽で開演されました。

 落ち着きのある佐野さんのヴァイオリン、豊かな響きの中山さんのガンバ、控えめながらも土台を支える師岡さんのチェンバロ。そして庄司さんのきらめきのあるヴァイオリンが花を添えていました。ヴィブラートをかけない古楽奏法が優雅な響きを作り出し、まさに宮廷に居るかのような気分にさせてくれました。

 2曲目は庄司さんと佐野さんの場所が入れ変わってクープランの「諸国民」です。場所が変わっただけでなく、庄司さんのヴァイオリンの響きが穏やかになり、違って聴こえたのが面白かったです。

 休憩後の3曲目は佐野さん、中山さん、師岡さんのオリジナルメンバー3人で、クープランの「王宮のコンセール」です。ヴァイオリン、ガンバ、チェンバロの柔らかな響きと見事なアンサンブルが心地よかったです。

 4曲目は中山さん、師岡さんにソプラノの風間さんが加わって、モンテクレールのカンタータが歌われました。ピンク色のドレスに金色のヴェールを頭にかぶった風間さんは、遠目ではフランスの貴婦人のようでした。柔らかなガンバの音ときれいに融合する風間さんのソフトな歌声は落ち着きがあり、聴いていてうっとりとしました。

 そして5曲目は庄司さんが再登場してヴィヴァルディが演奏されました。最後を飾るにふさわしい、素晴らしい演奏であり、熱演だったと思います。

 アンコールは、ドイツで始まったので、ドイツで〆るということで、全員で、ブクスデフーデの声楽曲を演奏しました。風間さんの歌声と、各奏者の演奏が融合し、見事なフィナーレでした。

 渋さと落ち着きのある柔らかい佐野さんのヴァイオリンの調べ。豊かな響きの中山さんのガンバ。そして、自己主張することなくアンサンブルを支え続けた師岡さん。プロジェクト・リュリとしての活動も5回目となり、円熟味が増しているように思います。

 中でも、中山さんのガンバの豊潤な響きが美しかったです。早いパッセージでの演奏技術も素晴らしく、聴き惚れる場面も多々ありました。チューニングのときの低音の響きすら美しく感じられ、やはり、このガンバがアンサンブルの根幹を成していることを実感しました。

 そして、友情出演の庄司さん、風間さんも良かったです。トリオ・ベルガルモで活躍する庄司さんは度々聴いていますので、改めて言うまでもないですが、バロックから現代まで、幅広い活躍ぶりは大したものと思います。
 また、風間さんのソプラノはお見事。衣裳といい、本日の公演を盛り上げた最大の功労者ではなかったでしょうか。曲と声質が良く合っており、ホールを宮廷へと変えてくれたように思います。

 プロジェクト・リュリは、クープランの代表的室内楽曲の「王宮のコンセール」と「諸国民」の全曲演奏を当初の目標としていたそうですが、今回で一区切りとなります。次回はどのようなプログラムを聴かせてくれるのか楽しみです。今後の益々の活躍を祈念したいと思います。

 日頃、オーケストラ中心に聴いている私ですが、たまにはこういう曲を聴いて、優雅な気分になるのも良いですね。出演者に見送られ、晴れ晴れとした気分で外に出ると、天候はすぐれず時雨模様。暗い冬が来るんだなあと現実に引き戻されました。
 

(客席:F−7、自由席:¥1000)