京都市交響楽団
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2012年4月5日(木) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:広上淳一
ヴァイオリン:パベル・シュポルツル
コンサートマスター:渡邊 穰
 


ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1番ハ長調 作品46-1

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品53

(アンコール)
 ドヴォルザーク:ユーモレスク (オケ伴付)
 パガニーニ:24の奇想曲より No.5 イ短調 (ヴァイオリン独奏)

(休憩20分)

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35

(アンコール)
 ドヴォルザーク:スラブ舞曲 作品46-3
 
 

 “東響定期+α「日本のオーケストラシリーズ」”と題されたコンサートです。東響定期会員は無料招待され、同じ席で東響との聴き比べができるというのが売りです。無料ということになっていますが、これも定期会員料金に入っているとみるべきでしょうか。

 京都市交響楽団を聴くのは、2006年11月に、大友さんとともに新潟に来演したとき以来です。そのときは茂山狂言とのコラボで「くるみ割り人形」が演奏されたほか、マーラーの「巨人」が演奏されました。残念ながら、必ずしも最上の演奏ではなかった記憶があり、今回は広上さんの指揮でどのような演奏を聴かせてくれるのか期待が高まりました。

 今日は木曜日。平日開催のコンサートはきついです。本来はコンサートに行くことなど無理だったのですが、仕事を調整して何とか可能となりました。しかし、6時半からのロビーコンサートは聴けるはずもなく、開演のチャイムとともに息を切らして入場し、開演直前にどうにか着席することができました。客席は、いつもの東響定期よりも空席が目立ちました。やはり平日は出かけにくい人が多いものと思います。

 ステージ上では一部の楽員が音出しをしていて、その後拍手とともに他の楽員が登場してチューニングとなりました。小柄な広上さんが登場して演奏開始となりました。

 第一印象は「なんじゃこりゃ」。音のバランスが悪く、いつも聴いているオーケストラの音ではありません。管楽器・打楽器に比して、弦が弱く、アンバランスです。弦が埋もれてしまって、聴こえてきません。お馴染みのスラブ舞曲でしたが、初めは何の曲か分からないほどでした。このようなバランスの音は、国内オケ、海外オケ、プロ、アマ含めて初めて聴くものでした。
 もしかしたら、弦が弱いというより、管楽器・打楽器が強すぎるのかもしれません。響きの良いりゅーとぴあに慣れておらず、音量のバランスが取れていないのでしょうか。でも、プロならリハーサルで修正するはずですし、前回の京響の新潟公演でもこんな音じゃなかったです。これが広神さんが求める音なのかもしれませんし、良く考えれば、広上さんというシェフを迎えて、京響としての独自の音色を作り出しているのかもしれません。

 そんなことをあれこれ考えながら、音楽を聴いていました。残念ながらは音は重く、流れません。とても「舞曲」とは言い難い鈍重な演奏に感じました。でも、面白い。
 全身を使った広上さんのオーバーアクションな指揮ぶりは、ラジオ体操でもしているようで、見ていて楽しかったです。異質ではありましたが、音響的に楽しめました。

 続いては、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲です。いい曲なのに、新潟で演奏される機会はなく、私は生演奏を聴くのが初めてなので、実は今日のプログラムの中では一番楽しみにしていました。
 長身で、髪を後ろに束ね、白シャツに黒いチョッキ姿のパベル・シュポルツルが、青いヴァイオリンを携えて登場しました。小柄な広上さんは指揮台に載って、ようやく同じ高さになるくらいです。
 演奏は容姿から想像される通りのもの。テクニックはあるのでしょうが、繊細さは排除され、ガンガン鳴らす感じです。豪快ともいえますが、荒っぽいとも感じます。オケの音色は1曲目と同様に、管と弦のバランスは悪いままでした。抒情的要素はなく、うっとりと聴き入るという場面はありませんでした。
 こういう演奏もありかなとは思いますが、力で押し通すだけでなく、強弱、剛柔、緩急を弾き分けるような配慮もあって良かったのではないかと思いました。これは奏者の問題なのか、指揮者の意向なのか分かりませんけれど。

 カーテンコールの最中に、トロンボーン奏者が入場したりして、あれっと思ったのですが、アンコールは、オケ伴付でユーモレスクが演奏されました。優しく、柔らかな演奏を期待しましたが、ヴァイオリン独奏とオケが合わない場面が垣間見え、ちょっと聴き苦しく感じたというのが正直な感想です。
 アンコール2曲目は独奏でパガニーニのカプリース。これは曲調もあって、シュポルツルの実力が発揮され、曲芸的な速弾きで、超絶技巧を楽しめて良かったです。

 休憩後はシェエラザードです。オケのバランスは相変わらずですが、多少修正されたのか、あるいは、こちらの耳が慣れたのか、前半よりは聴きやすく感じました。前半同様に、繊細さ、メランコリーさは排除され、ゴージャスに豪快に鳴らし、音響で圧倒するような演奏でした。
 音楽を楽しむというより、ホールいっぱいに溢れる音響に身を包まれ、音を楽しむ感じとでも言いましょうか。独特な節回しが気になる部分もありましたが、これは広上さんの曲作りなんでしょうね。
 全身を使った元気いっぱいな指揮から繰り出される極彩色の音響は、気持ち良いもので、おもちゃ箱をひっくり返したような音の洪水に浸りました。ひと時の娯楽としては十分に楽しめました。
 管楽器・打楽器の音量に比して、弦が弱く、バランスが悪かったですが、吹奏楽を聴くような爽快感は感じました。この曲は随所で管楽器のソロが活躍しますが、各奏者とも見事だったと思います。ホルンやオーボエにうっとりしましたが、特にクラリネットが良かったです。総じて、管楽器は充実していましたが、弦楽器にもっと音量があり、分厚い響きがあればなあという思いは残りました。

 広上さんの挨拶の後、アンコールにスラブ舞曲を演奏して終演となりました。指揮棒を持たず、全身を縦横に動かし、元気あふれる広上さんの指揮は、視覚的にも楽しめ、そこから繰り出される豪快な音楽は、分かりやすくて良かったです。でも、あれだけの指揮をしていたら相当に疲れるでしょうねえ・・
 いつもの聴きなれた音、聴きなれた演奏じゃなく、ちょっと異質な演奏を楽しむことができたのは良かったです。音響的バランスも含め、東響と全然違うという感想をもてたことは、「東響定期+α」の存在意義があるということと思います。今度は、広上さんの指揮で東響を聴きたいなあ・・・

 音楽を芸術性がどうの、精神性がどうのなどと堅苦しく考えず、第一に娯楽として考える私には、スカッとして大変楽しめるものでした。前半・後半含めて3曲のアンコールがあり、サービスも満点。内容豊富な演奏をただで聴けたのですから、何も文句はありません。
 

(客席:2階C5-*、東響定期会員招待)