新日本フィルハーモニー交響楽団第487回定期演奏会
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2012年1月21日(土) 14:00  すみだトリフォニーホール
 
指揮:ダニエル・ハーディング
コンサートマスター:豊嶋泰嗣
 



マーラー:交響曲第9番 ニ長調






 

 
 

 現在の若手指揮者の中で、人気と実力を兼ね備えている点では、ハーディングは群を抜いているのではないでしょうか。新日本フィルともこれまでにすばらしい演奏を披露しており、今日のマーラーも前評判は高いようでした。
 マーラーの9番といえば、昨年11月にラトル指揮ベルリンフィルで聴いたばかりですが、何といってもマーラーでは私が一番好きな曲ですので、ハーディングのマーラーを是非聴きたいと思っていました。

 そんなとき、「大人の休日倶楽部パス」の利用期間がこのコンサートと重なることが判明し、スケジュール調整をして、新潟から遠征することにしました。急遽決めたので、残っているチケットはわずかしかなく、否応なくA席となりました。

 関東の冬晴れを期待して上京したのですが、冷たい雨が降っていて、気温は新潟と変わらずがっかりでした。錦糸町駅前で昼食を取り、ホールへに向かうと、途中に東京スカイツリーが見えましたが、展望台以上は雨雲に隠れていました。ホールに着くと、すでに開場が始まっていました。
 このホールは2度目ですが、狭い敷地に建てたためか、ゆったり感がありません。客席に行くにも階段が多いし、トイレにも階段があって、とても快適とは言えません。ホール内のデザインも奇抜すぎて、威圧感があり、私は好きではありません。

 今回の客席は2階の最後方で、視界は良いのですが、3階席が上にかぶっているので、音響的には悪そうな場所です。この定期演奏会は、昨夜に続いての2回目の公演です。昨夜は当日券もあったようですが、今日はチケット完売となりました。ハーディングの人気のほどが伺われます。

 ホールに入ると、ステージ上では木管の皆さんが音出しをしていました。開演時間となり、パラパラと楽員が入場。全員揃ったところでコンマスが一礼して拍手。これがここの流儀のようです。

 大編成でステージいっぱいのオーケストラは壮観です。オケの配置はドイツ式の対向配置。コントラバスとチェロが左、ヴィオラと第2ヴァイオリンが右です。これだけの大編成になりますとトラの動員も必要となりましょう。出演者の名前と配置の図が配られましたが、なんと第2ヴァイオリンのトップは、新潟でお馴染みの東響アシスタント・コンサートマスターの田尻さんじゃないですか。こんなところで何してるのと思いましたが、余計なお世話ですね。

 ハーディングが登場して開演です。数秒の沈黙の後演奏開始。まず、新日本フィルの弦の美しさに感動しました。先週新潟で東響を聴いたばかりですが、残念ながらこちらが上に思いました。管もお見事。昨夜の公演ではホルンのミスが目立ったとの話も聞きましたが、今日は問題とするようなミスもなくて良かったです。
 弱音の美しさと、濃厚なサウンドという点では、残念ながら(当然ながら)昨年のベルリンフィルにはかないませんが、これを単独で考えれば、十分に美しい演奏じゃなかったでしょうか。
 田尻さんが見事に第2ヴァイオリンを統率し、豊嶋さん率いる第1ヴァイオリンと対向配置の演奏効果を高めていました。ヴィオラもきれいでした。
 
 やはり良い曲であり、曲の良さを十分に感じさせてくれた演奏でした。冒頭の「大地の歌」の終結部の「ewig」の音型を聴いた瞬間から演奏に引き込まれました。
 濃厚な演奏ではなく、むしろ淡々と演奏が進められました。第3楽章などはもっと爆発する面があっても良かったかもしれませんが、燃えすぎず、爽やかさを感じました。第3楽章からアタッカで突入した第4楽章の歌わせ方は胸に迫るものがあり、いつしか目に涙が浮かぶようでした。最後の音が消えていく部分には息をのみ、胸が熱くなりました。この緊張感は生ならではの感動です。フライングもなく、音が消えてから指揮棒を下ろすまでの数十秒の無音を観客全員で共有できたのは大きな喜びでした。すばらしい演奏であり、すばらしい聴衆でした。

 期待を裏切らない演奏であり、はるばる上京した甲斐はありました。CDを買った人は終演後にハーディングのサイン会が行われましたが、次の予定があるためホールを後にしました。
 

(客席:2階5-2、A席:7500円)