樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ デュオ・リサイタル
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2010年12月7日(火) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
 



ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ニ長調 作品12-1

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調「春」作品24

(休憩15分)

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第10番 ト長調 作品96

(アンコール)ヴァイオリン・ソナタ 第10番 第4楽章より
 
 

 ベルリン・フィルの第1コンサートマスター就任内定(この度正式就任決定)ということで話題となった樫本さんが新潟に来るとあって楽しみにしていたコンサートです。共演のリフシッツにも興味があり、是非聴きに行かねばと思っていました。しかし、平日ですから仕事があわただしく、聴きに行けるかどうかは定かではありませんから、チケットはA席にしておきました。
 樫本さんを聴くのは、1999年11月のチェコ・フィルとの共演以来になりますから、11年振りになります。この間、ベルリン・フィルのコンマスになるまでに研鑽を積み、どんな演奏を聴かせてくれるのか期待がふくらみました。

 出張先から高速を飛ばし、途中のPAで軽食を取って、りゅーとぴあに急ぎました。白山公園の駐車場は満車。市役所の駐車場に何とかとめることができました。県民会館や音楽文化会館で公演が重なり、混雑していたようです。

 さて、ホールの客の入りは6分程度でしょうか。この種のリサイタルでは3階席は使用されないのが普通ですが、今回は話題の樫本さんということのためか、強気で3階席も含めて全客席が売り出されたようです。しかし、S席エリアはそれなりに埋まっていたものの、空席がかなりあり、1・2階席にまとめれば満席という感じでした。私の今回の席はDブロックの一番内側です。

 今回の演目はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタが3曲であり、ちょっと渋めの内容です。第1番と最後の第10番、そして一番ポピュラーな第5番の組み合わせというのは、よく考えられたプログラムといえましょう。

 第1番で開演。ピアノはホールに良く響いていましたが、ヴァイオリンは繊細な音色で、音量的には不足していました。リフシッツはたえず樫本さんの方を見て合わせようとしていましたが、ヴァイオリンはピアノに埋もれる場面が多く、ちょっと物足りなく感じました。リフシッツのピアノだけが目立っていました。樫本さんの使用楽器は1674年製のアンドレア・グヮルネリとのことですが、イマイチ鳴りが悪いように思いました。

 続く第5番も同様であり、演奏そのものは良いのではないかと思うのですが、いかんせん音量不足は致命的です。艶のない、ドライフラワーみたいな音色で、ちょっと盛り上がらない、欲求不満の演奏でした。

 休憩後の第10番はなかなか良かったです。相変わらず音量は不足していましたが、熱演が伝わってきて、それなりに感動をいただきました。

 アンコールは別な曲を期待したのですが、演奏したばかりの第10番の第4楽章が演奏されました。この部分に限っては聴き応えある演奏で、ピアノとヴァイオリンのせめぎ合いがあって良かったです。会場からはブラボーの声も
上がりましたが、ブラボーに値する演奏と思いました。前半もこうだと良かったのですけれど。

 ヴァイオリンとピアノが対等に渡り合うような演奏を期待しましたが、リフシッツだけが目立っていて、樫本さんの面目なしという印象を受けました。どんなに良い演奏でも、音が客席に届かないことには始まりません。今後の頑張りに期待したいと思います。

 さて、ベルリン・フィルの第1コンマスとして試用期間中であった樫本さんは、12月10日に、正式にコンサートマスターに就任することが発表されました。試用期間中のコンマスぶりはテレビで見る機会があり、頼もしく思っていました。しかし、試用期間が終わっても団員の3分の2の同意を得ないと正式に就任できませんので、1年3ヶ月に及ぶ試用期間の苦労は大変だったものと思います。この辺の厳しさは昨年見たドキュメンタリー映画の「ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて」(→ブログ)に紹介されていました。晴れて正式に就任できましたことをお祝いしたいと思います。

 この文章は、グリュミオー&ハスキルの演奏を聴きながら書いていますが、古い録音ながらも良い演奏です。
  

(2階D5−31、A席:会員割引4500円)