金聖響/関西フィル チャイコフスキー選集 第3回
  ←前  次→
2010年10月31日(日) 14:00  ザ・シンフォニーホール
 
指揮: 金 聖響
管弦楽: 関西フィルハーモニー管弦楽団
 
 

チャイコフスキー:スラブ行進曲 op.31

チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ op.32」

(休憩20分)

チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調「悲愴」 op.74

(アンコール)
シューベルト:「ロザムンデ」間奏曲第3番
 
 

 昨夜に引き続いてのコンサートです。午前中はびっしり講習会に参加し、雨の中ザ・シンフォニーホールに向かいました。当日券を買って入場。最高ランクがS席でなくA席というのはやっぱり大阪流なんでしょうか。

 客席は8割程度の入りでしょうか。P席が賑わっているのは聖響ファンが多いためでしょうか。私は2階席正面左寄り2列目の席で、前・横は空席で、ゆったり聴くことができました。
 オケの配置は、昨夜のイスラエル・フィルと同様にヴァイオリンが左右に分かれる対向位置。チェロ、コントラバスが左、ヴィオラ、ハープが右です。管楽器は1列目にフルート、オーボエ、2列目にクラリネット、ファゴット、トランペット、その後ろにホルン、トロンボーン、チューバという配置です。打楽器は何とステージ手前の右に配置。客のすぐ前に大太鼓があります。最前列の人はうるさかったのではなかったでしょうか。ホール天井、ステージ上ではマイクが多数あり、レコーディングしていたようです。

 まばらな拍手の中楽員が入場。女性のほとんどがノースリーブというのにちょっと感激しました。先週加茂で聴いたばかりの聖響さんが颯爽と登場して開演です。コンサート名が示すように、今シーズンは3回に分けてチャイコフスキーの後期交響曲と管弦楽作品を演奏しており、今回がその3回目とのことです。前半が管弦楽作品を2曲、後半が「悲愴」です。

 さて、演奏は、最初の「スラブ行進曲」からしてびっくりしました。実は関西フィルを聴くのは初めてであり、あまり期待していなかったのです。ところが、すぐに音色のよさに驚きました。昨夜のイスラエル・フィルとは差がありましょうが、負けず劣らずの良い演奏だったと思います。金さんの統率力の良さを示すような演奏で、きびきびした指揮に応えて、要所要所をバシッと決めてくれました。メロディーが泥臭く感じる曲ですが、変にいじることなく、直球勝負でまとめ上げていたように感じました。

 続く「フランチェスカ・ダ・リミニ」は日頃聴く機会がなく、重苦しい曲調が好きでないのですが、劇的な緊張感を感じさせてくれて、心地よい疲労を覚えました。長大な曲を飽きさせず、ダイナミックに表現した演奏は良かったと思います。

 後半は「悲愴」です。多少の乱れはあるものの見事な演奏でした。演奏する側、聴く側が一体となった一期一会の心に迫る演奏でした。
 地を這うようなコントラバスの唸り、うねるような弦の情感あふれる音色。管楽器も良い音を出していました。音量も十分あり、オケの鳴りも良かったです。
 狂気的に突進した第3楽章からそのままアタッカで第4楽章へ。泣き叫ぶような感情のうねり。心拍が停止すかのように最後のコントラバスの響きが消えて数秒間の沈黙。フライング拍手もなく胸に迫る感動をいただきました。

 アンコールはシューベルトのロザムンデ間奏曲。チャイコフスキー選集というプログラムですから、やはりチャイコフスキーで締めるべきかと思いましたが、演奏自身は良かったです。

 金さんの指揮はテンポを大きく動かすことなく、いたずらにオケを煽るようなこともなく、その点新鮮味や斬新さには欠けるようにも感じますが、安心して曲に没頭できるようにも思います。
 関西フィルの演奏も期待以上のものであり、気合が入っていることが伝わって来ました。ときどき、特に地方公演では投げやりな演奏をすることが多い某メジャー・オケより数倍心に迫りました。
 各奏者とも良かったですが、クラリネットのお姉さんが光っていたと思います。関西のオケを聴く機会はほとんどないのですが、在京オケだけでなく、視野を広めるべきと実感しました。

 帰りにロビーではケーキやパンを割引販売しており、さすがに大阪だなあと実感しました。外に出ると相変わらずの雨模様。楽屋口は金さんのサイン会で賑わったようですが、空港へのリムジンバスに乗るべく大阪駅へ急ぎました。
 

(客席:2階BB10、A席:5000円)