東京交響楽団 第54回新潟定期演奏会
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2009年6月14日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮: シュテファン・アントン・レック
チェロ: ダニエル・ミュラー=ショット
 

 
 
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129

(アンコール)ラヴェル:ハバネラ形式の小品


(休憩20分)


マーラー:交響曲第6番 イ短調「悲劇的」


 
 

 
 

 今週は梅雨空で、どんよりした天候でしたが、今日は午後から晴天となり、すこし風が冷たいですが、爽やかな日曜日です。
 今日の定期演奏会は、今年度のプログラムの中では一番楽しみにしていました。マーラーの6番は、おそらく新潟初演であり、大編成のオーケストラの醍醐味を味わえるものと期待していました。この曲を実演で聴くのは、2004年5月のN響定期を聴いて以来です。
 そしてもうひとつの楽しみはチェロのミュラー=ショットです。私は良く知らなかったのですが、音楽好きの知人がファンであり、CDを何枚か貸してくれました。その中で、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲に感動し、私もファンになってしまいました。今日のシューマンではどんな演奏をしてくれるか楽しみでした。もちろん指揮のアントン・レックも新潟は第45回定期以来の2度目の来演で、期待が高まります。

 早めに駐車場に車を停め、某コンサートのチケットを買い、やすらぎ堤を散歩しました。信濃川の流れを見ていると心が落ち着きます。その後、東響定期の日は1割引になるCDショップのコンチェルトでCDを買い、ホールに行くとちょうど開場の時間となっていました。客の入りはいつもより若干空席が目立ちます。私には楽しみな曲目ですが、一般的には馴染みにくい曲かもしれませんね。

 いつものように拍手の中楽員が入場。今日のコンマスは高木さんです。イケメンのミュラー=ショットが登場し、前半はシューマンのチェロ協奏曲です。チェロの音色がきれいで、良く鳴っていました。3楽章が続けて演奏されましたが、容姿そのままのきれいな演奏でした。ボーマンさんとの掛け合いは息もピッタリで、うっとりしました。アンコールも繊細で美しい演奏で魅了されました。

 休憩時間にホワイエでCD販売していたので1枚購入。すると突然ミュラー=ショットが現れて、サインしてくれるとの申し出があり、買ったばかりのCDにサインしてもらいました。全く予定になかったサプライズで、担当者もびっくりのようでした。私も良いタイミングでそこにいたものですね。握手もしてくれて、私に「Thank You.」と言ってくれました。気さくな好青年ですね。益々ファンになってしまいました。
 
 後半はいよいよマーラーです。ステージいっぱいのオケは壮観です。楽器の種類も数も多く、こういう曲を新潟のような田舎町で聴けるなんて、本当に幸せです。この6番は、第2楽章、第3楽章をどういう順番に演奏するかが話題になりますが、今日は、スケルツォ、アンダンテの順でした。この文章はゲルギエフ指揮ロンドン響のCDを聴きながら書いていますが、こちらは逆の順です。
 さて演奏は、アントン・レックのキビキビした指揮ぶりに呼応した颯爽とした演奏で、気持ちよくオケが鳴っていました。ステージ袖のカウベルが牧歌的な雰囲気を出していましたが、打楽器奏者は移動して大忙し。管楽器のベルアップしての演奏は視覚効果も満点。名物の第4楽章のハンマーは、ハンマーというより餅つきの杵みたいでしたが、いい音を出していました。以前N響で聴いたときシンバルの5人同時打ちでしたが、今日は3人でした。

 マーラーの交響曲の中では6番、7番は混沌として馴染みにくく感じていたのですが、今日は楽しめる演奏でした。豪快に飛ばして、明るく爽快感があり、決して「悲劇的」な印象は受けませんでした。聴いていて、スケルツォを第2楽章、アンダンテを第3楽章に持ってきて正解だったようにも感じました。長大な第4楽章の前には緩徐楽章があった方が聴きやすいように思います。

 演奏がどうだったかというと意見はありましょうが、実演を聴く機会が乏しい私としましては、音響的にも視覚的にも満足でした。こういう曲は生が一番です。まさにオーケストラ演奏の醍醐味と言えましょう。演奏技術がどうの、芸術性がどうのと議論する人もありましょうが、私は聴いて楽しければそれでいいので、その点では楽しめる演奏でした。あえて言えば、もっと金管が爆発し、緩徐楽章ではもっとせつなく演奏してほしかったですけれど。明るさだけでなく、暗さも感じられたらもっと良かったかも。

 最後に残念だったのは、指揮棒を下ろす前に拍手した人が1人いたこと。どうして待てないのでしょうね。ほかの人たちはみんな息を殺していたのに・・・。
 

(客席:2階C5-**、S席:定期会員、5500円)