フランス国立ロワール管弦楽団 市民招待特別演奏会
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2008年5月7日(水) 18:30  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮:ペーテル・チャバ
ヴァイオリン:戸田弥生
 

 

ラヴェル:クープランの墓

サン=サーンス:ハバネラ

サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28

(休憩15分)

シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」

ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 作品72

(アンコール)
シューベルト:「ロザムンデ」序曲

 
 

 今回は「日仏交流150周年記念」と冠されたコンサートです。新潟市とフランスのナント市は10年前から交流協定を結んでおり、本年中に姉妹都市となる予定です。その関連で、「ラ・フォル・ジュルネ」に出演するために来日するナント市に本拠を置くフランス国立ロワール管弦楽団を新潟市に招待することになり、市民招待の特別演奏会が開催されることになりました。往復葉書での応募でしたが、優良なる納税者(新潟市民)でありますから、応募しないわけにはいきません。
 さて、GW直後の平日の夜にコンサートに出かけるのは仕事上つらいものがありましたが、何とかやりくりをつけて開演10分前にホールに着くことができました。新潟市民1500人を招待ということでしたが、関係者席がかなり確保されていたこともあってか大変な混みようで、3階のサイド席にかろうじて空きを見つけて着席できました。手すりに遮られて視界が良くありませんが、仕方ありません。

 オーケストラはやや小振りで、ステージにはかなりの余裕があります。恰幅の良いチャバが登場して演奏の開始です。最初は「クープランの墓」でしたが、柔らかなサウンドに感心しました。豊潤な響きに包まれた上品な音色です。曖昧な言い方ですが、いかにも「フランス」というような洗練された演奏だったと思います。3曲目の後に何故か拍手が沸きましたが、余韻を味わった後だったので救われました。
 次はブルーのドレスの戸田さんが登場してサン=サーンスの2曲です。戸田弥生というは名前は知っていましたが、聴くのは初めてす。美しさは予想通りでしたが、演奏は個人的予想に反して、堂々として力強い音色でした。3階の私の席まで音量豊かに響いてきました。繊細さは感じられませんでしたが、情熱的な演奏が心に響きました。まだお若いかと勝手に思っていたのですが、エリザベート・コンクールで優勝してからもう15年も経つんですね。どうりでステージ姿も凛々しく、貫禄を感じさせたわけです。ヴァイオリンは1740年製ピエトロ・グァルネリとのこと。鳴りのいい楽器なのかもしれません。アンコールを期待しましたが、休憩に入りました。

 後半は「未完成」。これがまたいい演奏で、木管の美しさにうっとりしました。「未完成」といえば、昨年新潟交響楽団東響定期でも演奏されていて、東響の演奏に感動したことを覚えていますが、それにも勝るような印象を受けました。「ラ・フォル・ジュルネ」でも演奏したばかりなので、十分にこなれているものと思います。ここでも1楽章の後に拍手が沸きましたが、それだけいい演奏ということでもあります。
 最後は「レオノーレ3番」。これもつい先日の東響定期で聴いたばかりですが、それに勝るとも劣らない演奏だったと思います。弦の響きも大変きれいでした。アンコールに「ロザムンデ序曲」が演奏されて終演となりました。りゅーとぴあのホームページでは終演予定が20時10分となっていましたが、終演は20時40分。充実した演奏会でした。

 実は今回のコンサートまで、ロワール管弦楽団について良く知りませんでしたし、チャバという指揮者も知りませんでした。ただ、毎年「ラ・フォル・ジュルネ」に来演していたことは知っていました。しかし、一般の演奏会や国内ツアーはやっていなかったようなので、たいした団体じゃないんだろうなあ、というような認識しかありませんでした。実際は素晴らしい演奏を聴かせてくれて、その実力は侮れないと感じました。特に木管の皆さんはいい音を出していたと思います。また、弦もマントヴァーニ楽団を彷彿させるような美しい音色を聴かせてくれました。東響定期で毎回聴いている2階Cブロックと違って、今回の3階サイド席は残響が豊かに感じられ、直接音と間接音がほどよくブレンドされ、オーケストラを聴くには良い席だと思います。この点もこのオケの音色に対して好印象を感じた一因かもしれません。視覚的には良くありませんでしたけれど。

 期待以上の演奏を聴くことができて大いに満足できました。これで無料ですから、まさに拾いものでした。市民招待ということで日頃コンサートに来られない方々が多数おられたとは思いますが、皆さん熱心に聴いておられました。こういう機会をきっかけに、生のオーケストラサウンドのすばらしさを体験し、クラシック音楽の裾野が広がるといいなあと感じた次第です。

(客席:3階 J1-12、無料招待:全席自由)