東京交響楽団 第47回新潟定期演奏会
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2008年4月27日(日)17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:シャン・ジャン
ヴァイオリン:イダ・ヘンデル
 
ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番 作品72b

シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120

(休憩20分)

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

(アンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番より アンダンテ
ラロ:スペイン交響曲 第3楽章 インターメッツォ

 
 

 昨日午前中は好天でしたが、予報通りに午後には天候が崩れ、仕事を終えた頃は雨模様でした。今日もちょっと肌寒く、気分爽やかとはいきません。陸上競技場では陸上競技の大会が開かれていて駐車場は混み合っていました。公園の桜は青葉が鮮やかでした。午後時間があったので、東響定期の前に音楽文化会館で行われた新潟チェロアンサンブルの定期演奏会を聴いてからりゅーとぴあに向かいました。

 今日は2月以来の久しぶりの東響定期であり、新年度になって最初の定期演奏会です。今シーズンのチラシは裏表で2公演分を兼用になっており、経費削減の意図がありありです。一昨年のような単色刷よりはましですが、ちょっと見栄えはよくありません。せっかく昨年度はまともなチラシに戻って安心していたところだったので、ちょっと残念です。

 さて、今日のプログラムは、中国出身の若手女性指揮者と超ベテランの女性ヴァイオリン奏者との共演です。興味深いといえばそうなのですが、この組み合わせがどういう意図なのかはわかりません。注目はイダ・ヘンデルでしょう。録音がほとんどないので、私は良く知らなかったのですが、音楽仲間に聞いたら、伝説的な名ヴァイオリニストなんだそうですね。調べてみたら今年80歳になられるはず。期待と不安が交錯しますが、失礼ながら、彼女の演奏を聴く機会はこれが最後かと思われ、話の種になりそうなので、楽しみにしていました。

 客の入りはチケット完売の前回とは違って、空席が目立ちます。私の左横も2席空いていて、おかげでゆったり聴くことができました。オケの編成はやや小振り。コンマスは高木さんです。
 拍手の中楽員が入場。第1ヴァイオリンの末席に座る枝並さんは存在感たっぷりで目立ちます。ジャンが登場し、最初はレオノーレ3番。颯爽とキビキビしたジャンの指揮ぶりが気持ちよく、演奏もそれに呼応してメリハリがありましたが、アンサンブルが雑に感じました。いつもの東響サウンドとは違って、ざらついた印象がありました。
 続くシューマンも同じような印象でした。東響らしからぬサウンドに始めはガッカリしましたが、軽快で小気味の良い演奏で、これまで私がイメージしていたシューマンとは異なり、新鮮さを感じました。だんだん東響の調子も出てきたようで、終楽章は聴き応えのあるいい演奏でした。

 休憩の後、後半はベートーヴェンのコンチェルトです。ジャンに手を引かれて、イダ・ヘンデルが登場。ショッキング・ピンクのドレスが目に鮮やかですが、足元がおぼつかなく、ちょっと心配させました。さすがにご高齢でいらっしゃるなあ、と感じさせました。演奏も線が細く、繊細な音色、というよりは、弱々しい音。このまま最後まで弾き通せるのかハラハラしながら聴いていたので、緊張感がありました。「椅子に座らせてあげて。枝並さん、代わりに弾いてあげてよ」などという雑念も頭をよぎりました。東響の皆さんも優しくサポートしていて、前半とは異なって、柔らかな音色で、壊れ物を真綿で包むような演奏でした。こんなにソフトな、こんなに優しさに満ちたベートーヴェンは初めてです。演奏の質としては、冷静に考えると疑問に感じざるをえません。しかし、ハラハラ、ドキドキしながら、オケも観客も一体となってヘンデルを見守った緊張感は、これまで味わったことのないものでした。全曲を弾ききって感動を与えてくれました。

 カーテンコールの足取りもヨボヨボであり、これで終わりかと思いましたが、アンコールを何と2曲も演奏してくれました。まず、バッハの無伴奏ソナタ。これは渋いいい演奏でした。ヘンデルにしか出せない枯れた味わいがあって、絶品というべきものでした。もうこれで終わりと思ったら、今度はスペイン交響曲を弾いて度肝を抜かせました。アンコールにこういう曲を演奏するなんてさすがですね。これが年齢を感じさせない堂々としたものでした。ベートーヴェンでは弱々しさを感じましたが、このアンコールは音量もあって、異なった印象を感じました。まだまだ現役という気概を感じさせ、やっぱりただ者じゃないことを理解しました。アンコール2曲目の前に長々とスピーチしたのですが、ヒアリングが苦手な私は、曲目以外は聴き取れませんでした。どんな話をしてたのでしょうね。

 さて、振り返って演奏はどうだったのか考えてみますと評価は分かれましょう。ここはあれこれ考えすぎず、伝説のヴァイオリニストがはるばる新潟まで来てくれたことに、素直に感動するべきなんだと思います。どうかお元気で演奏を続けられますように・・・。
 

(客席:2階C5-35、S席:定期会員、5000円)