東京フィルハーモニー交響楽団 フレッシュ名曲コンサート
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2002年12月6日 練馬文化センター 大ホール
 
指揮:円光寺雅彦
ヴァイオリン:川久保賜紀
   

   〜スペイン音楽の夕べ  ノーチェ・エスパーニャ〜

シャブリエ:狂詩曲「スペイン」

ラロ:スペイン交響曲(ヴァイオリン協奏曲第2番)

(アンコール)
クライスラー:「愛の悲しみ」

(休憩15分)

ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」

ラヴェル:ボレロ

(アンコール)
ビゼー:カルメン前奏曲
 

 
 

 東京出張2日目の夜、昨日の日本フィルに引き続き、今夜は東京フィルです。N響定期に行こうか最後まで迷ったのですが、結局練馬まで繰り出しました。練馬区民向けの名曲コンサートのようで、曲目に魅力はないですが、今年のチャイコフスキー国際コンクールで1位なしの2位となり、一躍注目された川久保賜紀が出演すことを知り、急遽こちらに決定しました。
 練馬はかなりの田舎で、電車の乗り継ぎやらで時間がかかり、夕食を取る間もなく7時の開演ぎりぎりに会場に到着しました。初めてのホールですが、どこにもあるような多目的ホール。座席は1階席中央で、いい場所です。

 本日のコンサートは「スペイン音楽の夕べ」と題されていますが、曲目を見てのとおり、スペインの作曲家という意味でなく、スペインにちなんだ音楽です。
 まずはシャブリエ。もともとが演奏栄えのする曲ですので、オケの力量を知るには不足ですが、昨日の日フィルよりいい鳴りです。出だしの出し物としては上出来です。
 そしてお目当てのスペイン交響曲。真っ赤なドレスの川久保さんの登場。チャイコフスキー・コンクールの時と同様に、髪を後ろで束ね、髪をおろしたチラシの写真の姿とはかなり印象が異なります。写真は憂いを秘めた繊細な乙女という印象でしたが、ステージ上は堂々とした姿。前奏の間体でリズムをとる姿は、ふと昨年聴いたチョン・キョンファを思い起こさせました。
 演奏も堂々としたもの。哀愁に満ちた、さわやかな、フレッシュな演奏をするものと勝手に思いこんでいましたが、巨匠然とした演奏で、予想は覆されました。緩急・強弱自在のダイナミックな演奏ですが、悪く言えば、崩しすぎ、力みすぎ、雑にも感じました。こんなにガリガリ弾かないで、もっと肩の力を抜いてもいいのになあと強く感じました。

 アンコールにクライスラーの小品を演奏しましたが、これもまた力の入った演奏。バッハでも聴くような重苦しい重厚な演奏。こんなにかしこまって、力んで演奏するような曲じゃないのになあ、とちょっとがっかり。実は今年のチャイコフスキー・コンクールで注目されたものの、すでに長い演奏歴を持っています。若さ、爽やかさを勝手に期待したのが間違いだったのかな。

 休憩後、「三角帽子」。東フィルのすばらしい演奏でいい気分。昨日の日フィルでは感じられなかったオーケストラの醍醐味を味わうことができました。そして、「ボレロ」。これも力の入ったすばらしい演奏。ところどころソロの雑な面は垣間見えましたが、これまで聴いたボレロでも最も盛り上げ方の良かった演奏に聴こえました。
 アンコールは、予想通りというか、当然というか「カルメン」。大いに盛り上げて終演となりました。最後に楽員は全員でお辞儀をして退場。

 まあ、芸術性がどうのではなく、安価にオーケストラを堪能できたという意味で、今日は収穫でした。ただし、川久保さんに期待しすぎたのは失敗だったかな。
 

(1階N32、S席4000円)