痔瘻とは肛門内から細菌感染を生じ肛門周囲膿瘍を形成した後、大部分は肛門周囲の皮膚に排膿し、肛門内と肛門周囲との間にトンネルができた状態です。
まず、肛門周囲膿瘍の場合、膿がたまっている状態では痛みも強く抗生物質も効きが悪いので、外来で局所麻酔を使って小さな切開して膿を出します(切開排膿)。「肛門周囲膿瘍の時期に痔瘻根治手術を行う」方針の施設もありますが、私は切開排膿だけにとどめています。その理由として、切開排膿だけで痔瘻に発展せずに治ってしまう場合があるからです。また膿瘍期には周囲の組織が脆弱で必要以上に大きな傷を付ける恐れもあります。
切開排膿後、多くの場合は痔瘻となります。痔瘻になってしまうと肛門内のトンネルの入り口から便に混じった細菌が侵入してくるわけですから、薬をつけたり抗生物質を飲んだりしても治りません。また、痔瘻を放置しておくと枝分かれして複雑痔瘻になったり、ごく稀ですが複雑痔瘻から痔瘻癌が発生しすることもあり、痔瘻はなるべく早く手術で完治させることが望まれます。
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