Lesson-2 肛門科専門医
 『おしりの悩み相談室』へ送られてくる相談メールで最近多くなってきているのが「近くの専門医を紹介してください」というもの。肛門科の社会的認知度も年々高くなって、「恥ずかしがらずに、専門医の診察を受けたほうがよい」と考える人が増えていることは喜ばしいかぎりです。

 巷には『肛門科』の診療科目を掲げている病院はいくつもありますが、何か資格がないと『肛門科』の看板は出せないのでしょうか?

答えは・・・・「No〜〜っ!!」
(ロボット博士風に・・・といってもわかるかなー)

 日本の医療制度では、医師免許をとれば、その後の経歴などには関係なく、どのような診療科目を掲げて開業することもできます。極端なことをいえば、一般外科や肛門科としてしか診療経験のないDr.OKが『精神科』を名乗ってクリニックを出すことだって、制度的には可能です。まぁ、そこまでひどくないにしても、『肛門科』の看板が出ているから、即、『肛門科の名医』とは言えないところに問題があります。
 
 この問題の根本にあるのは、「アッペ(虫垂炎、いわゆる盲腸)ヘモ(痔)ヘルニア(脱腸)の手術は、ウンテン(新米医者)の仕事」と昔から言われ、いまだに外科医の中に根強く残っている意識。この3つの病気は、命にかかわることがないので、卒業後2-3年の医師に任されることが多く、大学にだって『肛門科』という講座や研究室はありません。その後の外科医には、癌の手術を中心とした膨大な修行期間が控えていますから、特別に興味のある人以外、痔の手術は後輩に任せることになります。そういう経歴の人が、その後何らかの事情で痔の手術を手がけることになっても、ベテラン医師に違いはありませんが痔の手術については「ウンテンと大差ない」ということも考えられるわけです。

 そこで期待されるのが、専門医制度。
 日本にはさまざまな分野別医学会があり、痔の分野では「日本大腸肛門病学会」という専門学会があり、専門医制度もあります。ただ、専門医認定試験は治療や学会発表の経験数などを申請して、書類審査した上で口頭試問を行って認定されますから、一般の人が知りたがっている「この医者は痔の手術がうまいかどうか」という保障にはならないのが残念なところです。
 まぁ、専門医の認定をとっている人のほうが、知識や経験は豊富だと考えていただいて間違いはないと思いますが、大腸肛門病学会専門医は『大腸外科』『肛門外科』『内科』の部門別認定ですから、痔の専門家を探すのであれば、『肛門外科』部門で専門医を取得した医師を探すべきでしょう。