痔核の本体
- 肛門と、直腸下端の周辺には網の目のような血管(静脈)があります。この静脈が膨らんでこぶ状になったもの(静脈瘤)が痔核の本体です。この静脈瘤から出血したり、静脈瘤内に血栓(血豆)を作って腫れるなどの症状が発生します。内痔核と外痔核 直腸下端の粘膜下にできたものを内痔核と、肛門(歯状線より外)の肛門上皮下にできたものを外痔核と言います。内痔核は出血するが痛みはなく、外痔核は出血しないが、腫れるとひどく痛みます。
痔核の原因
- 人類が垂直歩行を行うようになったため、肛門は心臓より低い位置になり、痔静脈の圧力が高くなりました。それが証拠に、四つん這いの動物には痔核はありません。従って、長時間立ったり、座りっぱなしの生活習慣は、痔核を発生させると考えられています。また、排便時の強いいきみの習慣も同様に痔核に悪影響を及ぼします。
- 素質 痔静脈の周囲の組織が弱い体質の人は、痔静脈が圧力により拡張しやすく痔核の本体である静脈瘤に発展しやすいと言われています。従って、痔になりやすい体質は遺伝すると考えられています。
- 加齢変化 年をとると肛門の支持組織が弱くなり、痔核が肛門外に脱出しやすくなります。
- その他 酒類、辛子や胡椒などの刺激物などのとりすぎは、出血や腫れを増悪させます。女性は、妊娠、出産で悪化します。
痔核の分類
第1度 |
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出血が主な症状で肛門の外に脱出しない |
第2度 |
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排便時に脱出するが、排便後自然の元に戻る |
第3度 |
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脱出後、手などで押し込まないと戻らない |
第4度 |
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排便と無関係に常時脱出している |
痔核の症状
- 外痔核:歯状線より外側にある痔核を外痔核と言います。もっとも多いものは血栓性外痔核といいこれは外痔核の静脈に生じた血栓(血豆)が本体です。突然肛門の外に、強い痛みを感じるしこりが生じますが出血することはまれです。ただし、血栓部分の皮膚が破れると、赤黒い血栓が溶けて少量の出血をおこし、血栓はしぼんで痛みも急速に治まりますが、保存的療法(軟膏、鎮痛剤、入浴など)でも徐々に血栓が吸収され直ります。血栓が大きい場合、早く治したいのであれば局所麻酔で切開し、血栓を除去します。
- 内痔核:歯状線より奥にある痔核を内痔核と言います。内痔核は痛みを感じませんが、出血をするのが特徴です。また、周囲の支持組織が弱くなって肛門外に脱出するようになったものを脱肛と言います。
痔核の治療
- 出血や痛み:保存的治療を主にします。肛門を清潔にして温め、便秘や下痢にならないように便通を整えます。食事療法だけでは便通が整わない場合には、整腸剤や緩下剤を服用します。それに加えて、坐薬や軟膏を使用し、症状に応じて鎮痛剤や抗炎症剤を服用します。
- 脱肛:治療には 手術 が必要です。ただし痔は良性の疾患であるため手術の適応は、患者さんが脱肛を治したいかどうかで決定します。脱肛しても気にしない患者さんには、手術の適応がないと考えています。