東京交響楽団 名曲全集第204回 Live from MUZA!
  ←前  次→
2025年2月22日(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:原田慶太楼
ヴァイオリン:吉本梨乃
 
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61

(ソリストアンコール)
パガニーニ:24のカプリース より 第1番

(休憩20分)

チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 op.64
 
 
 今日は中越地方では記録的な大雪になっていますが、新潟市内はわずかな降雪だけで済み、穏やかな天候になりました。今日の午後は特別な予定はなく、家でこのコンサートの生配信を視聴することにしました。このようなコンサートを、無料で配信してくれる東京交響楽団に感謝し、その恩恵を享受したいと思います。

 今日はネコの日。我が家の2匹のネコと戯れ、某所での所用を終えて、開演5分間に帰宅しました。すぐにニコ響のサイトに接続しますと、ミューザ川崎の無人のステージが映し出されていました。
 ほどなくして開演時間となり、拍手の中に団員が入場し、最後にニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られてチューニングとなりました。弦は対向配置の14型です。ニキティンさんの隣は、いつもの田尻さんではなく、木村さんでした。

 青地に薔薇が配されたドレスの吉本さんと燕尾服姿の原田さんが登場して、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲で開演です。
 柔らかなティンパニに導かれて長い序奏が始まりました。穏やかに、堂々と、そして流麗に、ベートーヴェンが始まるぞという気分を盛り上げてくれました。
 待ちくたびれた頃にヴァイオリンが加わり、協奏曲の始まりです。まず安定感のある堂々とした演奏に驚きました。艶のあるヴァイオリンとともに、自分の世界を創り出し、風格すら感じました。対峙する東響の流麗な演奏とともに、新鮮な喜びを感じました。
 吉本さんは、今回まで全く存じ上げませんでしたが、2003年神戸生まれとのことですので、今年でまだ22歳とは驚きです。この若さで、こんなにも安定感のある豊かな演奏を聴かせてくれるなんて・・。
 14歳からウィーン国立音楽大学で学び、数々のコンクールでの受賞歴を誇り、使用ヴァイオリンはストラディヴァリウス「ムンツ」とのこと。やはり只者ではないですね。音楽の泉が湧き上がり、流れるような長大なカデンツァ。聴き応え十分でした。
 第2楽章は、これでもかとゆったりと歌わせて、天上の世界へとトリップしました。艶のあるヴァイオリンの美しさに息を呑みました。
 そして切れ目なく第3楽章へ。春が来て舞い踊るかのように明るく駆け抜けました。生き生きとしたオーケストラとともに、躍動感に溢れる音楽に心躍りました。
 吉村さんのヴァイオリンのすごさもありますが、原田さん率いる東響の躍動感に溢れる演奏があってのこと。東響の各パートの見事さはさすがでした。
 息もつかせぬ圧巻のカデンツァから、優しく歌って、興奮と感動のフィナーレへと熱量を上げて終演となりました。

 当然ながらブラボーが湧き上がり、若きヴァイオリニストの好演を讃えました。鳴り止まない拍手に応えてのアンコールは、パガニーニにのカプリース第1番。この難曲をさらりと弾ききって、超絶技巧に圧倒されました。若き才能を知ることができて、このコンサート聴いた甲斐がありました。

 休憩後の後半は、チャイコフスキーの交響曲第5番です。拍手の中に団員が入場し、ニキティンさんも一緒に入場。全員揃ったところでチューニングとなりました。
 原田さんが登場して、クラリネットが奏でる悲しげな運命の動機で演奏が始まりました。最初は指揮棒を持たず、間を十分に取って、ゆっくりと始まりましたが、指揮棒を持って次第に歩みを速めて行き、以後は原田ワールドの炸裂です。
 メロディーを思いっきり歌わせたかと思えば速足し、緩急自在・強弱自在。これは原田さんの世界です。アタッカで4楽章を休みなく続けて演奏し、ひとつの音楽劇へとまとめ上げました。
 この原田さんの指揮に見事な演奏で応えた東響の各パートの素晴らしさとその実力に感嘆しました。こんなにも躍動感に溢れ、魂を揺さぶる演奏に巡り会えるなんて幸運でした。緩急のアクセントの付け方はやり過ぎにも思いましたが、原田マジックの術中に見事にはまってしまいました。
 第2楽章の要のホルンソロも美しく、木管群も完璧なパフォーマンス。運命の動機の激しさと甘いメロディの対比の見事さは圧巻でした。
 アタッカ続いた第3楽章。ワルツを踊り、足早に駆け足。木管群が良い仕事してました。そして切れ目なく第4楽章となり、運命の動機とともに力強く行進し、金管群が炸裂し勝利の凱歌を高らかに歌い上げました。
 ただでさえ興奮させられる楽章なのに、緩急の幅を大きくとって、エネルギーを蓄えて、蒸気機関車がフルスピードで平原を駆け抜けるが如く猛スピードで突進し、否が応でも魂が揺さぶられ、高揚させられてしまいます。これは反則ですよ、原田さん。全休止を置いて、猛スピードで興奮と感動のフィナーレへと駆け抜けました。

 緩急自在の原田ワールド。チャイコフスキーを自分の音楽劇として創り上げていました。やりすぎにも思えましたが、ここまでやられると返す言葉はなく、圧倒的な演奏にひれ伏すのみです。
 こんな原田さんの指揮に見事に応えて、抜群のパフォーマンスを披露してくれた東響の素晴らしさにも感嘆しました。主席クラスで休みの方が多いように見受けられましたが、東響の底力を感じました。

 このところ、肉体的・精神的に病んでいましたが、前半の吉本さんの見事な演奏に感嘆し、後半の魂を揺さぶられるようなチャイコフスキーにエネギーを注入してもらい、生きる元気をいただきました。音楽の素晴らしさ、大切さを実感して、ニコ響のサイトを後にしました。


(客席:PC前、無料)