今日のコンサートは、2015年にドイツから帰国された後、新潟の地で、アンサンブル・ピアニストとして多彩な音楽活動をされている斉藤晴美さんが企画する「Aber
eins(でも、ひとつ)」シリーズの第7回です。
2016年8月に第1回が開催され、斉藤晴海さんのピアノを中心として、様々な楽器・演奏家と共演を重ねてきて、新型コロナでの休止もありましたが、今回は7回目になります。
他では聴けないプログラムが魅力ですが、2022年の7月の第4回からフランスのジャズ・ピアニストのクロード・ボリング(ボラン)の作品シリーズが始まり、今回はその4回目になります。
このコンサートは、これまではスタジオAで開催されていましたが、今回は秋葉区文化会館での開催になりました。予想外のホールでしたので、間違って別のホールに行ってしまった人もいたという話も聞きました。
今回は2台ピアノのためのソナタが演奏されますので、コンサート用のグランドピアノが2台必要です。りゅーとぴあのスタジオAでも2台ピアノのコンサートの開催は可能ですが、今回は2台のピアノ以外にもパーカッションやコントラバスも共演しますので、スペース的に狭すぎますし、もう1台のピアノの搬入も難しく、困難だったものと勝手に想像しています。
スタジオAがだめならコンサートホールや県民会館がありますが、さすがに大きすぎますし、音楽文化会館は工事中です。
新潟市内でグランドピアノが2台使えるホールを考えたときに、秋葉区文化会館には、スタインウェイD274のほかに、ステージ裏の練習室にカワイの中型グランドピアノが備えられていて、2台のピアノの使用が容易であり、ここが選ばれたものと推測します。
今日は3連休最後の日のスポーツの日です。連休中は天候に恵まれて、秋晴れが続き、絶好の行楽日和となりました。
今日は出かける予定はなかったのですが、所用を終えて時間ができましたので、好天に誘われて出かけることにしました。どこに行くか思案しましたが、新潟の音楽家を応援する意味も込めて、このコンサートに行くことにしました。
バイパスを使わず、ショートカットの道で、快適に秋葉区文化会館に到着しました。円弧状でとめにくい駐車場に車をとめて館内に入りますと、既に開場されており、受付で当日券を買って入場しました。当日券を買うときに、たいそう感謝されて、恐縮しました。
ホールに入りますと、後方の席は使用されていませんでした。右側に席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。
ステージには、スタインウェイのフルコンサートグランドピアノの他に、蓋が外された小型のグランドピアノが設置され、その右にバーカッション、コントラバスが並んでいました。
客席は次第に埋まり、前方には若干の空きがありましたが、開放された客席はかなりの入りとなりましたので、開演間近になって後方の客席も開放されました。主催者の予想より集客が良かったものと思います。盛況で何よりでした。
開演時間となり、黒と青柄のドレスの斉藤さんが登場して、左のスタインウェイに着席して、ピアノソロで「Basin street
blues」が演奏されました。スウィング感はなかったですが、まさにジャズでした。ピアノの豊潤な低音の響きが快かったです。
ここで斉藤さんの挨拶があり、クロード・ボリングとこれから演奏する曲についての説明がありました。クラシック・ピアノとジャズ・ピアノの融合が特徴で、斉藤さんは小型のグランドピアノの方に移動して、ジャズ・ピアノを担当するとのことでした。
斉藤さんのほか、ゲストのピアノの品田真彦さん、パーカッションの倉澤桃子さん、コントラバスの別森 麗さんが登場して、「2台のピアノためのソナタ
No.1」です。
品田さんがスタインウェイ、斉藤さんは小型のグランドピアノに着席し、倉澤さん、別森さんがスタンバイして演奏開始です。
Part1、Part2、Part3 からなりますが、切れ目なく続けて演奏されました。ピアノ、パーカッション、ベースというジャズトリオに品田さんのピアノが加わっての演奏です。
生み出された音楽はジャズですが、クラシック的な部分とジャズトリオによるジャズ演奏とが交じり合い、次々と形を変えて、演奏に引き込まれました。
Part2では、ゆったりと、しっとりと2台のピアノが対話し、メランコリックなメロディにパーカッションとベースが加わり、熱き感情を高ぶらせました。情感豊かに、切なく胸に響きました。
Part3では、パーカッションが鳴り響き、激しいリズムとともに、2台のピアノがぶつかり合い、共鳴して、次第にエネルギーを増してエンディングを迎えました。
演奏というよりライブであり、聴衆に興奮をもたらし、大きな拍手と掛け声で演奏を讃えました。クラシック演奏家によるジャズ演奏はなかなかの聴きものだったと思います。
休憩後の後半は「2台のピアノためのソナタ No.2」です。品田さんに代わって、スタインウェイはアズキ色のドレスの小黒さんです。斉藤さんは白地に青・黒柄のドレスに衣裳替えし、倉澤さんは赤い上衣をまとい、別森さんは赤いジャケットを着て登場しました。
前半の No.1 と同様に、全体は Part1、Part2、Part3 からなりますが、各パートとも更に細かいパートに分かれており、それらが続けて演奏されましたので、今どの部分を演奏しているのか分からなくなってしまいました。
まず小黒さんのピアノに始まって、ピアノトリオが加わって、2台のピアノが交互に歌い合い、バトルが繰り広げられました。ジャズテイストに溢れるピアノトリオとパワフルな小黒さんのピアノがせめぎ合い、ヒートアップしていきました。
曲調が変わって静かにメロディを奏で、同じメロディを繰り返しながらパワーアップ、スピードアップし、スウィングしながら高速に走り抜けました。
そして静かに、ゆったりと歌い上げるも、メラメラと熱く燃えました。小黒さんが、静かに情感豊かにたっぷりと歌い上げ、ここに斉藤さんのピアノ加わって重合し、ニ重奏となりましたが、この部分は一番聴き応えがありました。
そして、スイッチが切り替わって、激しいリズムとなり、斉藤さんの激しいピアノに導かれて爆速で突進し、フルスピードで走り抜けました。
一旦スピードを落として小休止し、再びアクセルを踏んでフィナーレとなり、聴衆に感動と興奮をもたらして、大きな拍手とブラボーが贈られました。
品田さんも登場して拍手に応え、アンコールに、斉藤さんの友人の加藤さんに、このコンサートのために編曲を依頼し、1週間前にできて、練習もできなかったという「ラジオ体操第1・ジャズバージョン」が演奏されました。
斉藤さんがスタインウェイ、品田さんと小黒さんが小型グランドピアノで連弾、倉澤さんはカホンを使用して、お馴染みのメロディが出てきてニヤリとさせながら、ジャズの演奏で盛り上げて終演となりました。
クロード・ボリング(ボラン)のCDは何枚か持っていますが、今日の「2台ピアノのためのソナタ」はこれまで聴いたことがありませんでした。
クラシックとジャズを融合した珍しい曲が、新潟が誇る演奏家により初めて演奏され、おそらくは今後も聴く機会はないものと予想されますので、貴重な演奏会となりました。このようなコンサートを企画した斉藤さんに大きな拍手を贈りたいと思います。
(客席:8-30、当日券:\3500) |