東京交響楽団第137回新潟定期演奏会
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2024年7月21日(日) 17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:ジョナサン・ノット
コンサートマスター:小林壱成
 
ラヴェル : クープランの墓(管弦楽版)
  T.前奏曲
  U.フォルラーヌ
  V.メヌエット
  W.リゴードン

(休憩20分)

ブルックナー : 交響曲 第7番 ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版)
  T.アレグロ・モデラート
  U.アダージョ
  V.スケルツォ
  W.フィナーレ



 

 6月に引き続いて、今シーズン2回目の東京交響楽団新潟定期演奏会です。今回は年に1回の音楽監督・ノットさんの演奏会です。ノットさんの音楽監督としての任期も2026年3月までですので、今回の演奏会は貴重です。

 今回の演目は、前半がラヴェルのクープランの墓、後半がブルックナーの交響曲第7番です。ノットさんは、ブルックーナーの7番を、2015年6月の第90回新潟定期演奏会で演奏しており、9年ぶり2回目となります。どうせなら別の曲が良かったですが、好きな曲ですので、大いに楽しませていただきましょう。

 だいしほくえつホールを出て、柾谷小路を渡りますと、温度計は37℃を表示していました。ぷらっと本町のアーケード街を出て、人情横丁を横切り、人通りのない本町通りを上本町へと進みましたが、気温は高いものの、日陰での風は爽やかでした。県政記念館横の歩道橋を渡ってりゅーとぴあに裏から入りました。冷房が効いた館内で涼み、開場を待ちました。

 時間となり、開場とともに入場し、席に着きましたら、いつもお世話になっている音楽仲間より、県外遠征のお土産をいただきました。いつもありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。

 ほどなくして、恒例のプレトークが始まり、榎本さんと団長の廣岡さんとのトークで楽しませていただきました。今日の演目のラヴェルのクープランの墓について説明があり、6曲構成のピアノ組曲から、ラヴェル自身が4曲構成の管弦楽曲に編曲したものとのことでした。
 そして、後半のブルックナーの交響曲第7番の説明がありました。新しく購入したワーグナーチューバが使用されることや、演奏の難しさ、版のことなどについての解説がありました。
 そのほか、音楽監督のノットさんのことなどの話もあり、団員紹介コーナーは、今回はトロンボーンの大馬さんでした。
 質問コーナーは、対向配置についての質問に答えて、オケの配置についての詳しい話がありました。対向配置は、実はベートーヴェンの時代からの古典的な配置なんですね。
 そして、指揮者によってオケの音は変わるのかについてなどの話もありました。最後に、アフタートークには、ノットさんも出られるとの話もあり、榎本さんに促されて大きな拍手が贈られました。

 開演時間が近付き、次第に席は埋まってきましたが、結局はいつも程度のようでした。昨夜のサントリーホールは満席でしたので、今日の入りはどうなるかと期待したのですが、空席の多さが寂しく感じられ、衰退する新潟の現実をしみじみと感じました。
 定期会員が増えていませんので、こんなものなのでしょうね。昨夜の演奏会のチケットを買えなかった首都圏の皆さんに申し訳なく感じました。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスが登場して、一段と大きな拍手が贈られました。
 オケの配置は、ヴァイオリンが左右に別れる対向配置で、オケのサイズは12型で、弦5部は、私の目視で 12-12-8-6-4 でした。
 今日のコンマスは小林さん、そして、隣は何とニキティンさんで、田尻さんが2列目という超強力な布陣です。否が応でも期待が高まりました。

 ノットさんが登場して、前半はラヴェルの「クープランの墓」の管弦楽版です。第1曲(前奏曲)は、美しい弦のアンサンブルにうっとりし、第2曲(フォルラーヌ)は、弦のはかに管の美しさにも感嘆しました。第3曲(メヌエット)は、柔らかな管とともに、優しく音楽が流れ出ました。ハープと弦楽が美しく響き、管楽器では、特にオーボエが素晴らしかったです。第4曲(リゴードン)は、激しくリズムを刻み、リズミカルに軽快に走り抜け、そして、ピチカートとともにオーボエやクラリネットが静かに歌い、再び激しくリズムを刻んで、フィナーレへと進みました。東響の素晴らしさを感じさせる美しい演奏で、前半だけでも大きな満足感を感じました。

 休憩後の後半は、いよいよブルックナーの交響曲第7番(ノヴァーク版)です。休憩時間に客席におられた廣岡団長に、どうしてハース版でなくて、ノヴァーク版なんだと不平を述べておられた方がおられましたが、私にはどうでも良いといいますか、その違いなどわかりません。
 オケは16型(16-14-12-10-8)に拡大され、ワーグナー・テューバ4人とテューバが左、トロンボーンが中央、トランペットが右という、通常とは反対の並びが興味深かったです。

 ノットさんが登場しましたが、指揮台には譜面台はなく、暗譜での指揮です。ブルックナー開始で第1楽章が始まりました。ヴァイオリンの静かなトレモロからチェロとヴィオラがメロディを奏で、管が加わって、ゆったりと歌い出しました。艶のある美しい弦楽にうっとりし、金管の炸裂にもうっとり。ティンパニのやりすぎとも思えるような激しい連打とともに、壮大な大音響のコーダで圧倒されました。
 第2楽章は、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの低音の嘆きのメロディに始まり、ゆったりと、ふくよかな弦楽サウンドで魅了し、濃厚なポタージュスープのような味わい。弦のあまりの美しさに涙し、極上のアダージョを聴かせていただきました。何度か現れる天上の音楽をゆったりと歌わせて、その美しさに癒され、繰り返される大きなうねりが最大となり、ワーグナー・テューバとともにホルンが泣き、ゆったりとした静けさの中に楽章を閉じました。
 第3楽章は、激しく燃えました。ブルックナー休止の一瞬の静寂の中での残響音にゾクッとし、何度もこれでもかと繰り返されるタンタン・タッタタ・タンというメロディが耳から離れません。スカッと切れの良いエンディングも最高でした。
 第4楽章は、弦に導かれて、管楽器が歌い、演奏が始まりました。美しく、ゆったりと曲が流れ、安穏を切り崩すように金管が激しく鳴り響き、静けさの中から金管が咆哮を繰り返し、全休止の余韻に酔いました。繰り返される中に金管はエネルギーを増して興奮は最高潮となり、壮大な大音響の中にフィナーレとなりました。

 大きな拍手とブラボーとともにカーテンコールが繰り返されました。今シーズンから終演後は写真撮影可能になりましたので、私も撮影させていただきました。
 小林さんが一礼して終演となりましたが、東京ではお決まりの、団員が引き上げた後のノットさんの登場なしにお開きになりました。
 終演後の定期会員限定のアフタートークにはノットさんが出演するので、是非とも参加したいところではありましたが、明日の朝が早いので、断念して帰宅を急ぎました。

 さすがにノットさんのときの東響は違いますね。トランペットが1か所、あれっと思う場面があったほかは文句の付けようはありませんでした。
 ゆっくり目な演奏でも緊張感が途切れることはなく、一貫して美しい演奏を聴かせてくれました。弦も管も、そして激しく打ち鳴らしたティンパニも、最高のパフォーマンスでした。

 同じブルックナーの7番が演奏された第90回新潟定期演奏会の私の感想を読み返しますと、そのときの私の心理状態もあったかもしれませんが、良い印象を感じなかったようです。
 しかし、今日の演奏は前回とは全く異なり、渾身の演奏で大きな感動をもたらしました。この間の9年間で、ノットさんと東響との関係が熟成され、その進歩が演奏に反映されているものと愚考しました。もちろん団員の入れ替わりがありましたし、聴く方の私の耳や精神状態も大きく異なりますけれど。

 また、今日の演奏では大音響でも音が飽和することはありませんでした。低音から高音まで解像度の高い響きにも感嘆し、りゅーとぴあの素晴らしさを再認識しました。

 指揮者、オケ、ホールと、三位一体となって、一期一会の名演がもたらされたものと思います。大きな感動と満足感とともにホールを出て、駐車場へと向かいました。
 今日は歩いた距離も長く、疲労も満足感もたっぷりな1日でした。良い音楽を楽しめた喜びを噛みしめながらハンドルを握りました。
 
 
(客席:2階C*-**、S席:定期会員:¥7000)