SanDo concert Vol.160 クラリネットと弦楽四重奏
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2024年4月20日(土) 15:00 朝日酒造 エントランスホール
クラリネット:辻 笑子
アンサンブルオビリー(Vn1:佐々木將公、Vn2:阿部智子、Va:加野晶子、Vc:片野大輔)
 
J.S.バッハ:G線上のアリア
後藤 丹:佐渡おけさ幻想〜北前船西廻り航路〜
ドヴォルザーク:ユモレスク
シュライナー:Immer Kleiner

(休憩15分)

モーツァルト:クラリネット五重奏曲 K.581

(アンコール)
愛のメドレー(愛の賛歌〜愛の花)

 

 長岡市の朝日酒造は、朝日山や久保田で知られる新潟を代表する酒蔵のひとつです。この朝日酒造本社のロビー(エントランスホール)では、毎月第3土曜日に、アンサンブルオビリーのプロデュースによるコンサートが開催されており、SanDo concert と命名されています。
 地元の音楽家を中心とした魅力あるプログラムで楽しませてくれており、私もこれまで何度か参加させていただいています。
 160回目となる今回のプログラムは「クラリネットと弦楽四重奏」と題され、長岡市出身のクラリネット奏者の辻笑子さんとアンサンブルオビリーの共演です。プログラム的にも魅力がありますし、好天に誘われて、思い立って遠征することにしました。SanDo concert に参加するのは、2021年7月以来ですので、3年ぶりになります。

 与えられたルーチンワークを終えて、昼食を摂り、12時過ぎに出かけました。いつものように、分水・与板経由で長岡入りし、市街地は通らずに西側を進んで越路へと抜けました。
 混雑もなく、快適なドライブで、家から57km、1時間半で朝日酒造本社に到着しました。早く着きすぎてしまい、途中に寄り道すれば良かったと悔やみました。開場時間までかなりの時間がありましたので、玄関前に駐車した車の中で、テレビを観ながら時間をつぶしました。

 開場時間となり、列に並んで入場し、右寄り3列目に席を取りました。私の右前方には、作曲家の後藤丹先生が座られました。
 客席は次第に埋まって満席となり、椅子がかなり追加されました。最終的には102人の集客とのことでしたので、大盛況と言えましょう。
 毎度のことながら、出演される片野さんが、エプロン姿で受付をしたり、会場整備をしたりと、お忙しく動き回っておられました。

 開演時間となり、片野さんの話があり、アンサブルオビリーのメンバーが登場しました。第1ヴァイオリンが佐々木さん、第2ヴァイオリンが阿部さん、ヴィオラが加野さん、そしてチェロが片野さんです。

 1曲目は挨拶代わりに、バッハの「G線上のアリア」です。安定感のある美しいアンサンブルが、残響豊かなホールに響き渡り、今年結成20周年となるアンサンブルオビリーの皆さんの素晴らしさを再確認しました。
 残響時間はかなり長いですが、こもったようなお風呂場サウンドではなく、透明感のあるクリアな響きがこのホールの魅力です。音楽ホールではありませんが、このような空間を社屋内に造った朝日酒造の英断には拍手を贈りたいと思います。

 片野さんによるユーモアあふれる軽妙なMCがあり、次に演奏される曲目紹介がありました。2曲目は、アンサンブルオビリーが後藤丹先生に委嘱した作品の「佐渡おけさ幻想〜北前船西廻り航路〜」で、今日が初演となります。
 客席におられた後藤先生も呼び出されて、笑いも誘いながら曲の解説がありましたが、佐渡おけさを中心として、北前船の寄港地である北海道、山形、富山、福井、鳥取、香川、大阪等の各地の民謡を題材にした曲です。
 後藤先生自身が面白い曲になったと話しておられましたが、なじみやすく、聴き応えのある曲で、弦楽四重奏の各パートが順にメロディを奏でて、ゆったりと楽しむことができました。
 新潟の地に根ざして活躍するアンサンブルオビリーのオリジナル曲として、今後大切に演奏されていくものと思いますが、その初演の場に立ち会えて、はるばる遠征してきた甲斐がありました。

 続いて、片野さんがクラリネットの辻さんを紹介して、ドヴォルザークの「ユモレスク」です。弦楽のピチカートに載せてクラリネットがメロディを奏で、柔らかな響きが快く感じられ、辻さんの挨拶代わりにはちょうど良い演奏だったと思いました。

 前半最後は、シュライナーの「Immer Kleiner」です。「だんだん小さく」という意味だそうですが、曲ではなく、クラリネット自身がだんだん小さくなってしまうというもので、演奏途中にクラリネットを順に分解していき、最後はリード部分だけで演奏するという面白い曲で楽しめました。

 演奏を終えて、辻さんが分解したクラリネットを組み上げている間に、片野さんが後半に演奏するモーツァルトのクラリネット五重奏曲の解説があり、休憩に入りました。

 休憩時間を終えて、辻さんとアンサンブルオビリーの皆さんが登場。いよいよメインのクラリネット五重奏曲です。辻さんは着席しての演奏で、佐々木ー阿部ー辻ー加野ー片野という並びです。
 安定感のある弦楽四重奏に支えられて、若き辻さんがモーツァルトが残したクラリネットの名曲をのびのびと演奏し、穏やかな気分で全4楽章を楽しむことができました。辻さんの演奏を聴くのは今回が初めてでしたが、期待以上の演奏であり、今後のさらなる活躍が楽しみです。

 アンコールには、愛に関係するお馴染みの曲の「愛の賛歌」と「愛の花」の2曲をメドレーで演奏して、聴衆の心を和やかにして、予定のプログラムは終了しました。

 最後は恒例の抽選会です。入場時にちぎったチケットの半券の番号で抽選し、朝日酒造の銘酒等の景品が当たるのですが、私は外れでした。会場にいた阿部さんのご主人が当たったりして、和やかな雰囲気の中でコンサートは終了しました。

 事務棟とボトリング工場の間にあるエントランスホールは、幅9m、奥行き90mという空間で、円柱が立ち並び、奥にはステンドガラスがある魅力的な空間です。
 この素晴らしい空間の中央部で催されるこのコンサートは、観客と奏者の距離も近く、サロンコンサート的な雰囲気が魅力です。芸達者な片野さんの軽妙でユーモアあふれるMCもあって、堅苦しくなく音楽を楽しむことができます。固定ファンも多いようで、地元の音楽ファンに親しまれていますが、私のように遠くから駆けつけている人も多いようです。

 今年結成20周年という熟練の弦楽四重奏と若きクラリネット奏者の共演を楽しみ、良い音楽を聴いたという満足感を胸に、往路と同様に新潟市へと車を進めました。
 

(客席:右寄り3列目、当日券:\1200)