今日は秋葉区文化会館で開催された村治佳織さんのソロリサイタルに行ってきました。「ギター・オリジナル名曲選 & シネマ名曲選」という副題が付けられたリサイタルで、親しみやすい曲目でもあり、たまには肩の凝らないコンサートも良いかなということで、聴かせていただくことにしました。正直申し上げれば、村治さんの美貌に惹かれてということもあります。
私が村治さんの演奏を生で聴いたのは、20年前の2002年5月、新潟でのワールドカップ開催を記念してのワールド・ガラコンサートが最初です。そのときはアランフェス協奏曲が演奏されました。
その後は、2009年3月のりゅーとぴあでのリサイタルを聴いて以来になりますので、今回は13年振り3回目になります。
日本のギタリストのトップランナーの一人であり、当然ながら私は大ファンです。チケットの完売必至と予想され、チケット販売開始とともに速攻でネット購入しました。案の定チケットは早々に完売となり、人気のほどがうかがえます。
前回りゅーとぴあ・コンサートホールで聴いたリサイタルは、ホールが大きすぎて音量に難がありましたが、今回は小さなホールですので、音響的にも濃密な演奏が期待されました。
今日は朝からぐずついた天候で、小雨が降ったり止んだりしました。暑かった昨日から、気温は一気に下がって20℃に届かず、肌寒さも感じるほどでした。
某所で昼食を摂り、秋葉区文化会館に着きますと、ちょうど開場時間となり、入場が始まっていましたので、私も入場して席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちました。
私の席は3列目の左寄り。ご想像の通り、ビジュアル面を重視して、この席を選びました。ステージには、椅子、足台のほか、MC用のマイク、ギター用マイクと小型スピーカーが設置されていました。小さなホールですので、生音だけでも良いのかなと思いましたが、PAを使用するようです。チケット完売だけあって、満席のホールは熱気に満ちていました。
開演時間となり、白い衣装に黒いブーツの村治さんが登場。椅子に座ってギターを調整しから「愛はきらめきの中に」で開演しました。
最初は映画音楽のコーナーです。演奏もさることながら、至近距離で見る村治さんは美しく、うっとりと見つめながら聴きました。
奏者と小型PAスピーカーとは1mくらい離れていて、奏者の右斜め前方数メートルの私の席からは、ギターの生音とスピーカーからの音とが分離して聴こえ、音像が拡大して聴こえましたが、次第に慣れて違和感を感じなくなりました。
ここで村治さんの挨拶とトークがあり、曲目紹介に続いて、映画音楽が3曲、「愛のロマンス」「ムーン・リバー」「ガブリエルのオーボエ」が演奏されました。「愛のロマンス」「ムーンリバー」は村治さん自身による編曲で、オリジナルにはない序奏も加えられて新しい印象を与えてくれました。モリコーネの名曲に涙し、曲良し、演奏良しで何も言うことはありません。
村治さんの最近の演奏活動のことについてなど、楽しいトークがあり、続いてはギターのオリジナル曲が演奏されました。
ロドリーゴの作品が2曲、「小麦畑にて」「祈りと踊り」が演奏されました。「小麦畑にて」は、生前のロドリーゴの前で演奏した曲だそうです。さすがにロドリーゴの曲だけあって、さまざまな演奏法が駆使されて、スペインの空気感が漂う聴き応える曲であり、演奏でした。
曲目紹介があって、前半の最後は、名曲の「アルハンブラの思い出」が演奏されました。見事なトレモロ奏法で、イスラムの異文化と融合したアルハンブラ宮殿が眼前に浮かぶようで、うっとりと聴き入りました。
休憩後は青地に花模様が配された衣裳に着替えて登場。艶やかさにうっとり。MCがあり、旅にちなんだ曲という自作の「パガモヨ」「エターナル・ファンタジア」の2曲が続けて演奏されました。
「パガモヨ」というのはタンザニアの港町のことで、NHKの番組で訪れたときの印象を曲にしたそうです。異文化が入り乱れる港町の喧騒を思い起こさせるような、さまざまな曲調が入れ替わる音楽で楽しませました。
「エターナル・ファンタジア」は、薬師寺のイメージだそうで、1300年の悠久の歴史を感じさせる壮大ながらも穏やかな音楽が奏でられました。
続いて、来年デビュー30周年を迎えることなど、楽しいトークがあって、武満徹編曲によるビートルズの名曲「ミッシェル」と「イエスタディ」が2曲続けて演奏されました。誰もが知る名曲ですが、武満による編曲の良さと、演奏の素晴らしさに、うっとりと聴き入りました。
トークと曲目紹介があった後、再び映画音楽の名曲です。最初は共演したこともあるという坂本龍一の「戦場のメリー・クリスマス」でが演奏されました。しっとりとした序奏から演奏に引き込まれました。
ここで今後の活動予定などが話され、最後は「愛のテーマ」「カヴァティーナ」「人生のメリーゴーランド」の3曲が続けて演奏されました。いずれも美しい曲ですので、うっとりと聴き入り、音楽世界に身を投じ、感動の海原を漂いました。
拍手に応えて、アンコールに「メモリー」をしっとりと演奏し、ギターの美しい音色に酔い、ジワジワトした感動が湧き上がりました。
さらに拍手は続き、アンコールは定番と言ってもよい「タンゴ・アン・スカイ」。しみじみとした終わり方をしましたので、最後はこれで盛り上げようという算段でしょう。抜群のテクニックに支えられたタンゴの情熱的なリズム。感動と興奮の中に終演となりました。
期待通りの素晴らしい演奏は、さすが村治さんですね。演奏は当然良かったのですが、その美貌、笑顔のチャーミングさに悩殺されました。
1曲演奏するたびに優しく微笑み、入退場のときも笑顔を絶やさず、ホールの隅々に視線を送り、煩悩だらけのジジイは胸を高鳴らせるのでした。
良い時間を過ごせて良かったです。肩の凝らない名曲の数々。これが芸術だと深刻ぶって聴く音楽も良いですが、何も考えることなく、美しい音楽に身を委ねるというのも良いですね。
爽やかな感動を胸に外に出ますと、天候は回復し、晴れ間も見えました。バイパスは通らず、抜け道を駆使して、光り輝く水田を見ながら帰路に着きました。
(客席:3-11、¥4000) |