”キック・オッフにいがた”
ワールド・ガラコンサート
 〜名曲でつなぐ世界の国々〜
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2002年5月29日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:大友直人、金 聖響
管弦楽:東京交響楽団
ソプラノ:キム・ヨンミー、 テノール:市原多朗
ピアノ:パウル・バドゥラ=スコダ
ギター:村治佳織
 
第1部:”水都(みなと)”新潟へようこそ (指揮:大友直人)
  吉松 隆:ファンファーレ”新潟”
  ドビュッシー:小組曲から「小舟にて」
  イベール:「寄港地」

第2部:世界のソリストを迎えて (指揮:金 聖響、ピアノ:パウル・バドゥラ=スコダ)

  モーツァルト:ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K.382

 (アンコール)
  モーツァルト:グラスハーモニカのためのアダージョ ハ長調

(休憩15分)


  ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 (指揮:金 聖響、ター:村治佳織)

  ヴェルディ:オペラ「椿姫」から 乾杯の唄「友よ、さあ飲みあかそう」 (市原、キム)
  ヴェルディ:オペラ「椿姫」から 「ああ、そはかの人か〜花から花へ」 (キム)
  プッチーニ:オペラ「トスカ」から 「妙なる調和」 (市原)
  プッチーニ:オペラ「ロンディネ」から 「ドレッタの夢」 (キム)
  プッチーニ:オペラ「トスカ」から 「星は光りぬ」 (市原)
  ヨンジョ:オペラ「黄眞伊」から 「青山里の碧渓水」 (キム)

  (指揮:大友直人)

第3部:忘れられない世界の名曲 (指揮:金 聖響)

  ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
  バーンスターン:キャンディード序曲
  外山雄三:管弦楽のためのラプソディ


 (アンコール)
  1:ビゼー:「アルルの女」第1組曲より アダージェット (指揮:金 聖響)
  2:J・シュトラウスII:「雷鳴と電光」 (指揮:大友直人)
 
 
 

 新潟でのワールドカップ開催記念のイベントです。本日はりゅーとぴあの「劇場」では「鼓童」のコンサートも行われ、ロビーはかなりの賑わいです。
 ホールに入ると、ステージ上には生花が飾られ、華やいだ雰囲気を演出しています。外国の方々が多数おられ、国際色豊かです。あらためてワールドカップ開催を実感させます。
 私の席の前には、県知事や市長、外国の要人方がずらりと並んでおられます。見回すと客席は8割方埋まっていますが、空席も目立ちます。即完売かと思い、電話予約にあせった私としては意外に感じました。

 楽団員の入場。今日のコンマスは大谷さん。吉松隆のファンファーレでいよいよ開演。これは新潟のために作曲された曲で、一昨年のジルベスターコンサートで初演されたらしいですが、残念ながら私は聴いていません。小編成のブラス版は東響定期の開場を告げる合図として演奏されたのを聴いたことがありますが、フル編成のオリジナル版は初めてです。壮麗さ、華やかさを感じさせ、祝祭気分を盛り上げるにふさわしい音楽でした。

 続いては、大友さんのトークを交えながらドビュッシーとイベール。東響の面目躍如たるチャーミングできれいな演奏でした。こんな小品をもっと聴いていたい気分にさせました。

 第2部となり、パウル・バドゥラ=スコダのピアノでモーツァルト。指揮は金聖響さんに交代。老練のピアニストと若々しい指揮者の取り合わせがおもしろいです。
 ピアノはいつものスタインウェイではなくてベーゼンドルファー・インペリアル。演奏に期待しましたが、ピアノの指遣いに「あれっ?」と思うところが多く意外でした。
 アンコールは軽やかで良かったですが。バドゥラ=スコダのピアノを味わうにはあまりにも短いプログラムで残念でした。また、ピアノの音に若干の濁りを感じ、鍵盤の音が気になったが、気のせいかな。

 休憩は15分と短く、まだ観客の着席が終わらず、ざわめいている中に楽団員が入場。いよいよアランフェス協奏曲。実は村治さんの弾くアランフェスを最も楽しみにしていたのです。
 今最も輝いているギタリストのひとり。薄紅色のちょっと地味な衣装で登場。もっと華やかかと思っていましたが、想像以上に清楚な雰囲気です。オペラグラスのピントを合わせる指も緊張します。
 演奏は予想通りすばらしく、抒情的な美しい演奏でした。ただ残念だったのは楽章間の拍手。お祭りコンサートだから盛り上がるのはいいですが、義務的に拍手することもないだろうに、と心の中で叫んでいました。
 第2楽章のメランコリックな余韻を残した静寂の中から第3楽章へと行ってもらいたかったなあ・・。と残念がっていたのは私だけでもないだろうと思います。
 演奏中の緊張した表情とは変わって、カーテンコールでの笑顔は美しかったです。蛇足ですが、演奏時に、ステージにスピーカーの様な箱が置かれていました。ギターの音量を補うためにアンプを使っているのでしょう。しかし、不自然さは全く感じなかったです。

 次は、指揮者が大友さんに交代し、市原、キムによるオペラのアリアの数々。2人ともすばらしい歌いっぷりでした。ホールいっぱいに響き渡る歌声に、しばし息を呑みました。最後の韓国の曲では、キムが韓国衣装で登場し、祝祭気分に花を添えました。

 ここらで時刻はとっくに9時を回り、聴く方も疲れてきましたが、まだまだこれから第3部。指揮は再び金聖響さんに交代。ベートーヴェンは意外にも正統的な演奏。
 次のキャンディードは金さんにぴったり。若々しくエネルギッシュな演奏に疲れも吹っ飛びます。そして、最後は管弦楽のためのラプソディ。お祭りコンサートの最後を飾るにはこれ以上のものはありません。会場は大いに盛り上がりますが、やっと終わりかという気分にもなりました。
 アンコールは、金さん、大友さんとも1曲ずつ。金さん指揮の「アルルの女」のアダージェットは東響の弦の美しさを再認識させるようなきれいな演奏でした。最後の最後は「雷鳴と電光」。大友さん得意の曲。颯爽たる演奏で3時間にも及ぶコンサートは漸く終了しました。

 総じて、金聖響さんの若々しい指揮ぶりに今後の活躍が期待されました。意外だったのはバドゥラ=スコダ。枯れた演奏というか、悟りの世界というか、素朴というか、骨董品というか、お疲れだったのかなあ。6月5日には隣の音楽文化会館でリサイタルが予定されており、ここでもベーゼンドルファーを弾くことになっています。今度はどんな演奏をされるのかなあ。私は行く予定はありませんが。

 ホールを出るともう10時。ライトアップされた公園の木々が美しく、県民会館前の塔上のフェニックスがひときわ輝いていました。風も肌に優しく、夏近しを実感させました。さあ、いよいよワールドカップのキックオフだ!
 

(客席:2階Cブロック中央)