新潟県文化振興財団は、日頃ホールまで足を運ぶことが困難な方々に音楽を楽しんでもらうため、病院、特別支援学校、特別養護老人ホーム等に、新潟ゆかりの音楽家が出向いて演奏する「ふれあいホッとコンサート」を開催しています。
今回は、新潟県文化振興財団創立40周年を記念して、このコンサートに出演している音楽家が一堂に会して、ガラ・コンサートが開催されることになりました。多彩な出演者による和洋のジャンルを超えた多彩なプログラムが注目され、後先考えないままチケットをネットを購入してしまいました。
しかし、よくあることですが、この日は仕事が入っていたのでした。どうしたものかと思案しましたが、何とか調整できそうでしたので、仕事の合間に聴かせていただくことにしました。
今日は朝から青空が広がり、まさに秋晴れと言うべき好天になりました。12時に午前の仕事を終え、りゅーとぴあへと向かいました。
中に入りますと既に開場されており、急いでチラシ集めをした後に入場しました。1階はほぼ満席で、2階正面もかなり埋まっていましたが、私の2階サイド席はガラガラ、3階正面はほとんど客はいませんでした。
しかし、料金が半額のA席エリアの3階サイド席はほぼ満席で、ステージ後方のP席にもかなりの客がおられました。客はいつものクラシックコンサートとは明らかに異なり、後半の史佳さん目当ての人も多そうでした。
開演時間となり、ホールがまだざわついているなか、若草色のドレスの山宮るり子さんと白いドレスの高江州愛さんが登場して、ハープの二重奏です。「エンターテイナー」を軽快に演奏して楽しませてくれました。
新潟市出身の山宮さんは、もう何度も聴かせていただいており、つい最近も東京交響楽団のコンサートに参加されていました。高江さんは東京都出身とのことで、新潟とのつながりはよく存じ上げませんが、美貌と実力を兼ね備えた素晴らしい奏者ですね。
ここでダークグリーンのドレスが麗しい奥村愛さんが登場して挨拶がありました。奥村さんは全国で活躍されており、新潟のヴァイオリニストでは全国的な知名度が一番高いのではないでしょうか。アムステルダム生まれではありますが、新潟市出身ということで頑張ってくださっています。
奥村さんによる山宮さんへのインタビューの後、山宮さんと奥村さんによる二重奏で、「ケルト・スピリッツ」が演奏されました。
スカボローフェア、グリーンスリーブスに始まり、ケルト音楽の名曲がメドレーで演奏されました。編曲の良さもあって、音量豊かに美しく響くハープとヴァイオリンが絶妙に絡み合い、情感豊かに感動を誘いました。
続いて、薫風之音の鯨岡徹さんが登場して挨拶と曲目紹介があり、奥村愛カルテットにより、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番第1楽章が演奏されました。チェロは奥村景さんです。
しっとりとしたメロディを、各パートが過度に自己主張することなく柔らかなアンサンブルで聴かせてくれ、1楽章だけで終わったのはもったいなく感じました。
続いて山宮さんと奥村愛カルテットで、ヘンデルのハープ協奏曲第1楽章が演奏されました。お馴染みのハープの定番曲を、山宮さんの安定した演奏で楽しませてくれました。バックを支えた弦楽四重奏も良かったです。
奥村さんが登場し、これから演奏するソプラノの鈴木愛美さん、高橋維さんが紹介され、それぞれから曲目紹介があり、前半の後半のオペラプログラムが始まりました。
まずは、紺色に花柄のドレスが麗しい高橋さんとフルートの丸田悠太さん、ピアノの山岸茂人さんにより「ああ、お母様聞いてちょうだい」です。
高橋さんの美しいコロラトゥーラソプラノに感動し、丸田さんのフルートとの絶妙な掛け合いで楽しませていただきました。フルートが加わることで、ソプラノ二重唱的効果をあげて、高橋さんの魅力を倍増させてくれたように思います。
次は高橋さんとテノールの山本耕平さんによる「愛の妙薬」からの「ラララの二重唱」です。山本さんはワイン瓶ならぬ一升瓶を持って登場し、酔っ払いを演じて、コミカルな中にも素晴らしい二重唱を聴かせてくれました。
続いてはドラえもんブルーのドレスが鮮やかな鈴木さんが登場し、「うぬぼれ鏡」を、美しいリリックソプラノで魅了しました。
続いて山本さんが登場し、「オー・ソレ・ミオ」を、声量豊かに歌い上げ、聴衆の感動を誘いました。否応なしに盛り上がる曲でもあり、一段と大きな拍手が贈られました。
再び鈴木さんが登場し、鈴木さんの十八番いえる「私は夢に生きたい」を明るく爽やかに歌い、円熟味を増した美しい歌声で魅了しました。
山本さんが再び登場し、テノールの定番曲である「誰も寝てはならぬ」を感動的に歌い上げ、ホールの聴衆を沸かせました。
山本さんが鈴木さん、高橋さんを呼び寄せて、最後はグラスを持って「シャンパンの歌」を楽しく歌い、明るい雰囲気の中に前半のプログラムを締めくくりました。
後半は、史佳さんと高橋竹育さんの二人が登場し、「津軽じょんから節」で開演しました。お母様の竹育さんは真っ赤な羽織が色鮮やかでした。
最初は二人での合奏でしたが、その後は史佳さんの独奏となり、一気にホールの空気を入れ替えました。ロックテイストも感じさせる超絶技巧により、拍手も沸きあがりました。
続いては、「親子二重奏掛け合い」です。まさに親子の共演・競演で、熟年の竹育さんと、脂が乗りきった史佳さんが、ホールを感動と興奮で満たしました。
奥村さんが登場してインタビューがあり、竹育さんが退場して、代わって薫風之音の二人が登場しました。「佐渡おけさ〜津軽あいや節」を、三味線、尺八、箏という、和楽器により、しっとりと、しみじみと聴かせてくれました。
続いては、薫風之音により、オリジナル曲の「波乱」と「百花咲く」をPAを使用して演奏し、ポップな雰囲気で盛り上げてくれました。
赤い衣裳で、ピンク色の台に載せられた箏を立って演奏する新潟市出身の藤崎浩子さん、富山出身ながらも新潟市で尺八奏者、邦楽指導者として活躍する鯨岡徹さん。邦楽の枠を超えて独自の活動を続けられており、新潟に欠かせない音楽家ですね。
鯨岡さんにより曲目紹介があり、前半に登場した鈴木さんが濃いピンク色のドレス、ハープの高江さんが青いドレスに衣裳替えして登場し、「星の夜」が演奏されました。ピアノ伴奏ではなく、ハープの伴奏でのソプラノは、情感豊かであり、より大きな感動をもたらしました。
続いてはフルートの丸田悠太さんと高江さんで、「アルルの女」の「メヌエット」です。フルートとハープといえばこの曲は外せませんよね。新潟が誇るフルート奏者・丸田さんの素晴らしい演奏にうっとりと聴き入りました。
続けて「モリコーネ・パラダイス」が演奏され、モリコーネの美しいメロディを、情感豊かな演奏で魅了し、感動に浸りました。ハープとの共演は味わい深く、より魅力的な演奏になりました。まだ演奏が終わらないのに一部の客から拍手が起こり、演奏の余韻を味わえなかったのは残念でしたが・・。
続いてトランペットの本間千也さんが加わり、「カルメン」から3曲が演奏され、その後は丸田さん、高江さん、奥村愛カルテットで「グリーンスリーヴス幻想曲」、さらにはザ・ブラスの5人により、「ロンドンデリー組曲」、「アメージング・グレイス」が演奏されるのですが、ここでタイムアップ。仕事に戻らねばならず、途中退場することになりました。
最後まで聴けなかったのは誠に残念でしたが、私が退場した時点で、すでに4時近くになっていましたので、終演はいったい何時だったのでしょうか。
多彩な出演者による多彩なプログラムで楽しませていただきました。途中退場とはなりましたが、ボリュームたっぷりなコンサートで、お腹いっぱいになり、十分に楽しませていただきました。
振り返って、新潟が誇る奥村愛さん、山宮さんはさすがですね。期待通りの演奏で楽しませてくれました。もう一人のハープの高江さんは前半も後半も大活躍でした。
史佳さんは存在感たっぷりで、自分の世界を押し通し、ホールの空気を自分のものとしていました。薫風之音は通常ならもっと盛り上がるはずなのですが、史佳さんの後では分が悪かったかもしれません。
大ファンで、何度も聴かせていただいている鈴木愛美さんは、落ち着きと味わいを増し、ますます円熟した歌声が魅力的でした。
上越市出身の高橋維さんは、今回初めて聴かせていただきましたが、素晴らしい歌声に感動しました。りゅーとぴあは新潟県音楽コンクールで大賞を取って以来とのことでしたが、現在二期会で活躍されており、来月上演される「こうもり」にアデーレ役で出演されますし、10月17日には王子ホールでもリサイタルを開催されます。
新潟市出身で東京佼成ウインドオーケストラで活躍し、キャトル・フルートアンサンブルでもお馴染みの丸田悠太さんは、さすがに安定感がありました。
佐渡市出身で、やはり東京佼成ウインドオーケストラで活躍されている本間千也さんの演奏を聴けなかったのは残念でした。
そのほかの方々もすばらしいパフォーマンスで楽しませてくれました。最後のザ・ブラスの演奏は聴けませんでしたが、きっと素晴らしいハーモニーで魅了してくれたものと思います。
最後まで聴けずに、後ろ髪を引かれながらりゅーとぴあを後にしました。大急ぎで駐車場に小走りし、現実世界に舞い戻りました。頑張らねば・・・。
(客席:2階D3-27、S席¥3000) |