55年の歴史を誇る「新潟県音楽コンクール」は、新型コロナの影響で、残念ながら昨年は中止になりました。音楽に触れ合う機会が少なくなった今、新潟の音楽文化をつなげていきたいと企画されたのがこのコンサートで、コンクールの受賞者、審査員等が多数出演されます。
出演者の顔ぶれは豪華であり、新潟を代表する演奏家が名前を連ね、ゲストとしてオルガンの石丸由佳さんや新潟市ジュニアオーケストラ教室も出演するとあって、これを聴きに行かないわけにはいきません。
ということで、18時半の開演に間に合うよう仕事を調整し、各部署に根回しして早く退勤させていただき、大急ぎでりゅーとぴあへと向かいました。駐車場に車をとめ、小雨が降る中、駆け足してりゅーとぴあ入りしました。
既に開場されており、開場の列が長く伸びていましたので、私も最後尾に並んで入場しました。正面の席は混み合っていましたので、2階のサイド席に席を取り、この原稿を書きながら開演を待ちました。
開演時間が近付くにつれて席は埋まり、かなりの入りとなりました。当初は3階席は使用されませんでしたが、客が増えてきて3階も開放されました。昨日の新聞記事によれば、集客は900人とのことでした。
P席に牧田さん、平山さん、佐々木さん、渋谷さんの4人が静かに登場して開演を待っていました。TOKI弦楽四重奏団の平山さんや活発な活動をしている佐々木さん、渋谷さんは今更紹介することもないですが、牧田由美さんの参加は素晴らしいですね。新潟市ではなかなか演奏してくれないので、今回は貴重です。
開演時間となり、P席の4人にスポットライトが当てられ、弦楽四重奏でエルガーの「愛の挨拶」が演奏されました。ホールに響く弦楽の響きが美しく、最初からうっとりとしました。
私は開館時からりゅーとぴあ通いを続けていますが、P席で演奏する弦楽四重奏は初めてのように思います。オープニングからいきなりのサプライズに感激しました。
続いてはステージ上に置かれた2台のピアノで、モーツァルトの「2台ピアノのためのソナタ」が演奏されました。各楽章でメンバーが入れ替わり、合計6人の若手ピアニストによる演奏で楽しませていただきました。いずれのペアもお見事であり、今後の活躍が期待されました。
ここでBSNの黒崎アナによる挨拶があり、以後黒崎アナの司会進行で演奏が進められました。
次は新潟の声楽界の重鎮・上野正人さんの歌唱で、2曲歌われました。さすがと唸らせるような安定感ある歌声は、いぶし銀のような輝きにあふれていました。
次は、中学1年の後藤苺瑚さんをソリストに迎え、長谷川さん指揮による弦楽アンサンブルをバックに、小品が3曲演奏されました。弦楽アンサンブルのメンバーは実力者揃いであり、その美しいアンサンブルに支えられて、後藤さんの演奏は堂々として落ち着きがあり、素晴らしかったです。
演奏技術の巧みさと音楽性は、とても中学1年生とは思えません。小学生で県知事賞を取った逸材であり、今後が期待されます。インタビューでは緊張しなかったと話されており、やはり大物ですね。でも、犬が大好きで、将来は獣医にもなりたいと答えていたときは中学生らしさも感じさせました。
休憩後の後半は新潟市ジュニアオーケストラの登場です。指揮はトランペットで受賞歴のある藤井先生で、「サウンド・オブ・ミュージック」と「ラデツキー行進曲」の2曲が演奏されました。
オケの編成は、弦が6-11-5-8-1と不規則で、数が少ない弦に比してフルートは6人とアンバランスでしたが、演奏はさすがという感じで、お見事でした。ジュニアオケを初めて聴いた人は驚いたのではないでしょうか。8月末の定期演奏会が楽しみです。
続いて石丸由佳さんにより、3曲演奏されました。定番のバッハのほか、石丸さんの藝大時代の学友の伊東さんの曲、そして誰もが知る「見上げてごらん夜の星を」の3曲です。
それぞれが美しく、パイプオルガンの魅力を知らしめてくれたものと思います。インタビューに答える石丸さんの話も素晴らしく、魅力を振りまいていました。
次は木管五重奏とピアノで、ルーセルの「ピアノと木管五重奏のためのディヴェルティスマン」。初めて聴く曲でしたが、実力者揃いですので、洒落た演奏に聴きほれるばかりでした。
続いては、前半で演奏した弦楽アンサンブルに木管五重奏の5人が加わっての小型オケ、チアフル・コンサート・アンサンブルをバックにしてのソプラノの歌唱です。
まずは高津さんによるプッチーニの定番「歌に生き、恋に生き」でしたが、声量豊かにホールいっぱいに響き渡る歌声の素晴らしさに感嘆し、ため息が出るほどでした。
次は吉田さんの「夜の女王のアリア」。これも素晴らしかったです。ソプラノでは難曲と思いますが、超高音も見事に歌いきり、実力を知らしめてくれました。
そして最後はソプラノの二重唱でモーツァルトの「ああ、これまでの愛に免じて許して下さい」を美しい歌声のハーモニーで魅了しました。
ソプラノの二人の素晴らしさのほかに、バックのアンサンブルの素晴らしさも特記すべきでしょう。メンバーを見れば当然なのですが、安定感のあるプロの音であり、いろんな曲を聴いてみたくなりました。
最後はジュニアオケを除いて出演者全員が登場して「ふるさと」です。ピアノの若手6人は歌唱で参加。ヴァイオリンの後藤さんはアンサンブルに加わりました。
独唱者3人の歌声のほか、パイプオルガンも加わっての演奏は美しく、胸に染みる演奏でした。後藤先生の編曲の素晴らしさも賞賛すべきでしょう。
時刻は9時を大きく回り、アンコールはカーテンコールも省略した形で、シューベルトの「音楽に寄せて」をしっとりと演奏し、上質のデザートをいただいて終演となりました。
予定終了時刻を大きく超え、2時間40分というボリュームいっぱい、内容豊富なコンサートでした。大掛かりなステージ転換が必要でしたが、主催の新潟日報関係者がてきぱきと作業し、その間黒崎アナが出演者にインタビューして飽きさせませんでした。
音楽コンクールの受賞者と審査員によって、魅力たっぷりな音楽が届けられ、心地良い疲労とともに、音楽の素晴らしさを再認識させていただきました。そして、りゅーとぴあという素晴らしいホールが新潟にある幸せをかみしめました。
(客席:2階D4-29、¥2000) |