ドグマ室内オーケストラ
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2020年2月11日(火) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ドグマ室内オーケストラ
中村太地(ヴァイオリン)
 


オール・モーツァルト・プログラム

ディヴェルティメント ニ長調 K.136

ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K.218 (ヴァイオリン:中村太地)

(ソリストアンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 より ガボット

(休憩15分)

セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」ト長調 K.525

交響曲 第29番 イ長調 K.201

(アンコール)
Fuga-shumga
Listen to the music
 

 「りゅーとぴあ・バレンタイン・コンサート」と題されたコンサートで、ドグマ室内オーケストラによるオール・モーツァルト・プログラムです。赤いチラシがバレンタイン気分を盛り上げます。

 バレンタインといっても、私のような熟年者には無縁の世界であり、バレンタイン・コンサートと銘打たれてしまいますと、貧相なジジイがひとりで行くのは躊躇してしまいます。そのため、しばらくチケットは買っていなかったのですが、S席4000円のところ、会員は全席2000円でチケットが買えますし、出演者にも興味がありましたので、思い切って聴かせていただくことにしました。

 とはいうものの、不勉強な私は、ドグマ室内オーケストラという名前は今回初めて聞き、どこの団体かも知りませんでした。
 チラシの説明によれば、ヴァイオリニストのミハイル・グレヴィチの呼びかけにより、2004年に16名の音楽家で結成され、ドイツを拠点にヨーロッパ各地で演奏活動をしている弦楽合奏団だそうです。
 「ドグマ」というのは、「1995年に映画監督のラース・フォン・トリアーによって、洗練された映画技術や特殊効果により、映画が劇的で非現実的な展開になることに反対する国際的な運動「ドグマ95」に由来する」とのことですが、浅学な私には理解できません。
 「若いながらも、すでに国際経験の豊富なタレントたちが集まり、クラシック音楽の新しい解釈によるユニークなスタイルのコンサートを精力的に行っている」とのことで、「ソリストとしての勢いと、団体としての力強さの融合がこのオーケストラの最大の魅力」だそうです。今回が初めての来日公演とのことであり、期待を持ってコンサートに臨みました。

 共演は、2017年にブラームス国際コンクールで日本人初の優勝を飾ったほか、数々の国際コンクールに入賞している中村太地さんです。どんな音楽を聴かせてくれるのか楽しみでした。
 なお、中村さんは、昨年10月のりゅーとぴあ1コインコンサートに出演されていますが、平日で聴くことができませんでした。


 今日は建国記念日。世間は新型コロナウイルス感染の話題ばかりで、建国を祝う空気は感じられません。寒波が去って高気圧に覆われ、青空も見えて、穏やかな休日となりました。某所で休息と昼食を摂り、早めに会場入りしました。

 チラシ集めのため県民会館を覗いてみますと、サカナクションというグループのコンサートの開場待ちの列ができていて、若者たちで賑わっていました。
 りゅーとぴあで某コンサートのチケットを買い、ロビーで時間をつぶし、開場が始まったかと思ってコンサートホールに行きましたが、静まりかえっていました。どうしたのかと不安になり、確かめてみましたら、開演が14時のつもりで来たのですが、15時開演の間違いでした。先日も同じ間違いをしたばかりなのですが、またやってしまいました。

 ということで、ロビーでこの原稿を書いて時間調整し、開場とともに入場しました。ホールは1階席とステージ周りを除く2階席が使用されましたが、客席はびっしりと埋まっていて、盛況で何よりです。
 若いカップルが多いかなと期待したのですが、いつもの如く高齢者が目立ち、平均年齢は高そうでした。馴染みやすいポピュラーな演目でもあり、バレンタイン・コンサートと題しているのですから、もっと若い人たちにたくさん来てほしかったかなと思いました。私の前の席には、賢そうな盲導犬がいて静かに横になっていました。

 さて、今回の日本公演は、8日の埼玉県久喜市に始まり、三重県津市、東京、そして新潟と、4日連続で、新潟は最終日のようです。
 編成は、第1ヴァイオリン5人、第2ヴァイオリン4人、ヴィオラ3人、チェロ3人、コントラバス1人の計16人で、ほかに賛助出演として、オーボエ2人、ホルン2人の奏者が加わりました。この賛助出演は、まだ若そうな日本人奏者でした。

 時間となり、オール・モーツァルト・プログラムが開演しました。最初は弦楽だけでディヴェルティメントです。チェロ以外は立っての演奏です。
 まず、音の美しさに息を呑みました。"同じ音楽性を持つソリスト集団"とのことで、個々の奏者の力量が感じ取られる見事なアンサンブルでした。明るく軽快な音楽は、緑の草原を飛び跳ねるような爽快感を感じさせました。良質な音楽に、早くも満足感を感じました。

 続いて4人の管楽器奏者が加わり、中村さんが登場して、ヴァイオリン協奏曲第4番です。これも軽快そのもの。中村さんの演奏もお見事でした。実力者集団と堂々と渡り合い、融合し、躍動感ある音楽を創り出しました。
 アンコールのガボットも聴き応えバッチリ。柔らかなヴァイオリンの調べ。朗々と音量豊かに響き渡り、聴く者の心を暖かくさせました。ふくよかな美しいヴァイオリンの音はグァルネリならではでしょうか。

 休憩後の後半はアイネ・クライネ・ナハトムジークで開演しました。誰もが知るお馴染みの曲ですが、4つの楽章の対比も鮮やかに、前半同様に色彩感、躍動感にあふれ、聴き飽きた感のあるこの曲に、新鮮な感動をもたらしました。

 最後は再び管楽器が加わって交響曲第29番です。これもこれまでの印象そのものに、生き生きとした音楽で魅了しました。躍動感に満ちた音楽に心も躍るようでした。賛助出演の4人の演奏もすばらしく、小編成のアンサンブルから聴き応えある見事なシンフォニーを作り上げてくれました。

 アンコールはリーダーのグレヴィチ氏の自作曲が2曲演奏されました。これはロックテイストも感じさせるカッコいい曲で、ホールの空気を一変させて沸かせました。サービス精神あふれる楽しませる音楽と演奏に脱帽です。

 大きな拍手に応え、最後は出演者全員がステージに1列に並んで何度も礼をし、手を振って終演となりました。期待にたがわぬ演奏に、ホールを埋めた聴衆は大きな満足感を感じたものと思います。

 今回驚いたのは、私の隣の席が私の知人だったこと。偶然とはいえびっくりしました。そして、盲導犬のすばらしさ。2時間もの間、大人しく音楽を聴いていました。訓練の成果とはいえ、たいしたものと感激しました。犬もモーツァルトを楽しんでくれたでしょうか。

 終演後には中村さんのサイン会が開催されました。帰り際に、レセさんからバレンタインのチョコレートをいただき、ほっこりした気分で駐車場へと向かいました。

 

(客席:2階C3-7、会員優待:\2000)