新潟セントラルフィルハーモニー管弦楽団第6回演奏会
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2020年2月2日(日) 14:00 新潟市秋葉区文化会館
指揮:磯部省吾
チェロ:渋谷陽子
コンサートマスター:清水俳二
 


(追悼演奏)
グラズノフ:「ライモンダ」 より アダージョ

 

フォーレ:パヴァーヌ

サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番

(アンコール)フォーレ:夢のあとに

(休憩15分)

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」

メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 「イタリア」

(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲第7番
 

 新潟で活躍するプロの音楽家を中心に2011年に結成された新潟セントラルフィル。オケとしては小型ですが、さすがにプロの集団だけあって、県内に数あるアマオケとは一線を画し、音色はまさにプロオケ。県内最高水準のすばらしい演奏を聴かせてくれます。

 そして、新潟と縁のある奏者との共演も魅力です。昨年の第5回演奏会は、ファゴットの小武内茜さん、フルートの石丸涼子さん、オーボエの渡辺 茜さん、クラリネットの広瀬寿美さんという新潟を代表する木管楽器奏者4人が揃って出演するオール・モーツァルト・プログラムで楽しませてくれました。
 今回の演奏会は「ロマン派のいぶき 〜フランスの風、ドイツの薫り」と題され、前半がフォーレとサン=サーンス、後半がメンデルスゾーンです。
 今回のソリストは、渋谷陽子さんで、サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されます。渋谷さんファンの端くれとしましては、何としても聴かねばなりません。しかし、こういうときに限って仕事が入るのが常で、当初は希望がかなわず残念に思っていたのですが、幸運にもたまたま予定が変更になり、無事に行くことができました。

 相変わらず暖冬が続いており、今日も朝から晴れ間が見られ、新潟の冬らしからぬ上天気でした。昼頃からは雲が広がり、小雨がぱらついたりはありましたが、寒すぎることもなくて良かったです。

 ゆっくりと昼食をとり、混みあうことを予想して早めに家を出て、秋葉区文化会館へと向かいました。13時前に到着しましたが、館内は閑散としていて、テーブルで勉強に励む学生さんのほかは誰もいません。開場時間となっても開場の列はできず、どうしたのかと不安に思いましたが、それもそのはずで、開演が14時と思っていたのですが、14時30分だったんですね。30分早く来ちゃいました。

 ロビーで本を見ながら時間をつぶし、気がつけば、いつの間にやら開場待ちの列ができていました。私も列に並び、開場を待ちました。
 時間となって入場し、このホールでのいつもの場所に席を取りました。満席ということにはなりませんでしが、ホールの立地場所を考えれば、まずまずの入りでしょうか。

 開演時間となり、照明が暗い中に団員と指揮者が入場。先月逝去されたバレエの高野廣子先生を追悼し、「ライモンダ」から「アダージョ」が演奏されました。
 このオケはバレエ公演の演奏のために2011年に創設され、高野先生とは密接な関係を持っています。高野先生は「ライモンダ」の公演に力を注いでおられたとのことで、この曲を追悼演奏に選んだとのことです。
 演奏が終わり、静寂の中に指揮者が退場し、聴衆も奏者ともに追悼しました。この演奏がすばらしく、最初の1音を聴いたときからまさにプロの音。オケのレベルの高さを最初から実感しました。

 照明が明るくなり、本公演の開始です。オケは小型の編成で、弦5部は、6-5-4-4-2です。ヴァイオリンが左右に分かれ、チェロとコントラバスが左、ヴィオラが右という対向配置です。
 コンマスは、昨年は加藤礼子さんでしたが、今年は清水さんです。第2ヴァイオリンのトップは昨年同様に庄司愛さん。そのほか、メンバーは昨年と入れ替わりがありますが、新潟で活躍している音楽家がずらりと並んでいます。
 プロと上質なアマチュアのハイブリッドということですが、ステージに並ぶ34人のメンバーのほとんどが女性で、男性は4人しかいません。考えて見ますと、新潟でプロとして演奏活動している音楽家はほとんど女性ですものね。音楽界の現実、厳しさを垣間見るような気もしましたが、考えすぎでしょうか。

 さて、前半はフランスのロマン派の音楽です。まずはフォーレの「パヴァーヌ」。美しいメロディに美しいアンサンブル。管も弦もお見事です。楽器の音に濁りはなく、上質な白ワインの如く、爽やかな音楽に心が洗われるような癒しを感じました。

 続いてチェロの演奏台がセットされて、上がピンクの衣裳が麗しい渋谷陽子さんを迎えてのサン=サーンスのチェロ協奏曲です。
 非常に落ち着いた演奏であり、安定感がありました。女性らしい、いかにも渋谷さんというような上品さが漂い、かといって柔な演奏ではなく、内に秘めた情熱のほとばしりが感じられるものでした。さすが渋谷さん、これぞ渋谷さん。期待にたがわぬ演奏に胸を熱くしました。
 アンコールはオケをバックにして、フォーレの「夢のあとに」。協奏曲の興奮を鎮めてくれるような、優しく歌うチェロ。しっとりと胸に染み渡りました。

 休憩後の後半は、ドイツのロマン派の音楽として、メンデルスゾーンの2曲が演奏されました。まずは「フィンガルの洞窟」です。スコットランドにあるヘブリディーズ諸島に「フィンガルの洞窟」があるのだそうですが、どんな洞窟なのかは見たことはありません。波に揺られるような主題により始まるこの曲は、幽玄な曲調で、神秘な洞窟探検をするような印象を感じさせます。
 演奏は透明感があり、クリアなオケの響きが、メデルスゾーンが描かんとする風景を、鮮やかに眼前に浮かび上がらせてくれたように思います。小編成のオケならではの魅力が実感されました。

 最後はメインの交響曲第4番「イタリア」です。いかにもイタリアというような明るい曲調のこの曲を、機動力溢れる小編成のオケが、颯爽と演奏し、躍動感ある演奏で気分を高揚させました。各楽章の対比も鮮やかに、フィナーレへと駆け上がり、興奮と感動をもたらしました。

 アンコールはドイツつながりで、小太鼓が加わって、ブラームスのハンガリー舞曲第7番でした。1番でも5番でもなく、7番というのが良いですね。明るく爽やかにコンサートを締めくくってくれました。

 総じて、オケの水準の高さを再認識させる演奏会でした。プロ・アマ混在とはいえ、現在メイド・イン・ニイガタで聴ける最上のオーケストラ演奏ではないでしょうか。小編成ならではのクリアなオケの響きは、色彩感があり、躍動感ある演奏は心を揺さぶります。これからも素晴らしい音楽を提供していただきたいと思います。

 ちなみに次回の第7回演奏会は、来年3月14日で、同じ会場です。ソリストに鍵冨弦太郎さんを迎えて、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ほかが演奏されます。今から楽しみなのですが、来年というのが残念です。もっと演奏会が多いと良いのですけれど・・。

  

(客席:8-14、\3000)