前橋汀子 ヴァイオリンリサイタル
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2019年10月5日(土) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ヴァイオリン:前橋汀子
ピアノ:松本和将
 


J.S.バッハ:G線上のアリア
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調 op.47 「クロイツェル」

(休憩20分)

ドヴォルザーク(クライスラー編):わが母の教え給いし歌
ドヴォルザーク(クライスラー編):スラヴ舞曲 op.72-2
クライスラー:ウィーン奇想曲
クライスラー:愛の喜び
マスネ:タイスの瞑想曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ op.28
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

(アンコール)
ドビュッシー:美しき夕暮れ
エルガー:愛の挨拶
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番、第5番
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
 

 

 日本ヴァイオリン界の女王・前橋汀子さんのリサイタルです。りゅーとぴあでは、2012年7月に「デビュー50周年記念ヴァイオリンコンサート」を開催しており、あれから7年。ということは、今年はデビュー57周年ということですね。
 また、新潟でのリサイタルは、2017年7月に音楽文化会館で開催された「無伴奏オール・バッハ・プログラム」以来2年ぶりになります。

 今回のリサイタルは、50周年記念のときと同様に、ピアノは松本さんで、プログラムもほぼ同じです。あれから7年の年月を積み重ねられ、どのような演奏を披露してくれるか楽しみでした。

 上古町の楼欄で極上の冷やし中華をいただき、県民会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあへと行きますと、既に開場されており、私も入場しました。
 客席は1階とステージ周りを除く2階席のみ使用されましたが、なかなかの入りではないでしょうか。今回の席はDブロック右端です。

 開演時間となり、黄色いドレスの前橋さんとピアノの松本さんが、譜メクリストとともに登場。姿勢は良く、足腰はしっかりされているようでした。
 G線上のアリアで開演しました。最初の出だしが不安定で、どうなるかと勝手に心配しましたが、堂々とG線を歌わせ、穏やかな、心に染みる音楽を作り出しました。

 退場せずに、そのまま続けて、クロイツェル・ソナタの演奏に入りました。全体にゆったりとしたテンポで進み、年輪を感じさせる危うさや音の揺らぎも魅力に感じさせる風格溢れる演奏でした。堂々とした有無を言わせぬ演奏は、正に熟練の技と言えましょう。
 ピアノの松本さんは視線を絶えず前橋さんに送り、目立ちすぎることなく、優しくサポートしていました。演奏を讃え、楽章間には盛大な拍手が贈られました。

 休憩後は有名な小品が続きました。前橋さんは右肩を大きく出した真っ赤なドレスで登場。数々の名曲を、ゆったりと優しく包み込むように演奏し、温かみのある音楽は、聴く者の心を癒しました。静かな場面で着信音を鳴らしたご婦人には興ざめでしたが・・。

 クライスラーが終わった後で、前橋さんが譜メクリストに何やら指示して、舞台袖に伝言しに行かせましたが、どうしたんでしょうね。

 圧巻は最後の2曲。熟練の技が冴え渡る快演と言って良いでしょう。音楽の神が舞い降りたかのような渾身の演奏でした。年を積み重ねてきたからこそ具現化できる魂の演奏とでもいいましょうか。若者には負けないという気迫を感じさせる演奏に、圧倒されながら聴いていました。

 疲れも見せずに、アンコールをたっぷりと演奏し終演となりました。アンコールも含め、50周年のときとほぼ同じプログラムでしたが、7年の加齢も感じさせず、熟練の技で魅了しました。さすがにヴァイオリン界の重鎮ですね。たいしたものです。

 外に出ますと小雨がぱらついており、急ぎ足で駐車場へと向かいました。ほっとするような、母のぬくもりを感じるような、暖かな音楽に癒され、気分爽やかに家路に着きました。

 

(客席:2階D4-29、¥3500)