トロン・トリオ with 佐藤芳明&野口雅史コンサート
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2019年4月28日(日) 11:30 新潟市民芸術文化会館 能楽堂
 
トロン トリオ:Vn 廣川抄子、Vc 渋谷陽子、 箏 武藤祥圃
アコーディオン:佐藤芳明
バリトン:野口雅史
 

ピアソラ:オブリビオン

シューベルト:アヴェ・マリア

ショスタコーヴィチ:5つの小品
           プレリュード、ガボット、エレジー
           ワルツ、ポルカ

山田耕筰:砂山

モンティ:チャルダッシュ

カザルス:鳥の歌

ワーク:大きな古時計

(アンコール)
100万本のバラ
 

 春の新潟音楽ウィークの2日目。朝10時半から「0歳からのコンサート」が開催されましたが、ジジイの私はこれはパスして、この公演からスタートしました。
 実はこの公演と重なってロビーコンサートが行われており、特に小黒亜紀さんのステージを聴けなかったのが誠に残念でした。ロビーコンサートの予定が決まる前にこの公演が発表されてチケットも発売されてましたので、まさかロビーコンサート重なるとは予想だにせず、主催者を恨みました。公演数は決して多くはないのですから、わざわざ重ねなくたって・・・。昨日は重ならない配慮があったのですが・・。まあ、いろいろいろあるんでしょうね。

 ということで能楽堂に入場。なかなかの入りで、盛況でよかったです。オレンジ色のドレスのヴァイオリンの廣川さん、濃紺のドレスのチェロの渋谷さん、和装の箏の武藤さん、そしてゲストで参加したアコーディオンの佐藤さんが登場して、「オブリビオン」で開演しました。
 ヴァイオリン、チェロ、箏という異色の組み合わせのトロン・トリオ。それにアコーディオンが加わって、しっとりと切なく、感傷的な胸を打つ音楽を聴かせてくれました。

 佐藤さんのトークの後、箏の武藤さんが抜け、バリトンの野口さんが登場して「アヴェ・マリア」。しっとりと、しんみりと、優しく歌うバリトン。この曲は女声で聴くことがほとんどだと思いますが、バリトンで聴くのも良いですね。

 以後、軽妙な語り口で楽しませる野口さん、それに負けない佐藤さんのトークで、和やかな雰囲気の中で演奏が進められました。トロン・トリオの3人は口数が少なく、ゲストの2人がトークで盛り上げるという変わった進行となりました。

 次は、武藤さんが戻り、野口さんが下がって、シュスタコーヴィチの5つの小品が演奏されました。本来は2台のヴァイオリンとピアノのために書かれた曲ですが、編曲の良さもあって、チャーミングな曲を楽しく演奏してくれました。

 続いては、アコーディオンの佐藤さんが抜けて、野口さんにより山田耕筰版の「砂山」が歌われました。冬の新潟の鉛色の空を髣髴させ、物悲しさが漂う曲を、しっとりと情感豊かに歌ってくれました。

 佐藤さんが戻り、野口さんが下がって、4人により「チャルダッシュ」。通常はヴァイオリンで聴く曲ですが、武藤さんの超絶技巧による見せ場もあって、楽しく聴かせていただきました。

 次は、佐藤さんが下がって、トロン・トリオの3人によりチェロの名曲「鳥の歌」が演奏されました。曲の良さを失うことなく、切々と情感豊かに演奏し、感傷を誘いました。

 プログラム最後は、4人をバックに野口さんの歌で「大きな古時計」。野口さんが解説してくれましたが、歌詞を良く見てみますと、曲には悲しい出来事が秘められています。そんな背景を胸に野口さんの穏やかな歌声を聴いていますと、感動もひとしおです。

 アンコールは「100万本のバラ」。野口さんの十八番的な曲のようです。赤いバラを持って登場し、ラストで客席に投げ入れるという趣向で盛り上げて終演となりました。

 終わってみますと、野口さんのエンターテイナー振りが目立って、一見野口さんのリサイタルじゃなかったっかと思うほどでしたが、バックの演奏のすばらしさがあればこそです。
 トロン・トリオとアコーディオンが絶妙に絡み合って、和楽器と洋楽器のミスマッチさを魅力に変えて、極上のサウンドを創り上げていました。

 ちなみに、トロン・トリオの名前の由来が語られましたが、皆さん想像できますでしょうか。ヴァイオリン、チェロ、箏の頭を取ると語呂が悪いので、箏の「ト」、チェロの「ロ」、ヴァイオリンの「ン」と、最後をとって「トロン」なんだだそうです。
 和楽器と邦楽器の異色の組み合わせ。こんなユニットは他になく、全国的にも珍しいと思います。といいますか、ほかにはないでしょう。さらにここにアコーディオンが加わり、貴重な体験をすることができました。

 大ファンである渋谷さんのご主人様にもお目にかかれて良かったです。恋敵に会ったかのように思いましたが、こんな美男なら許してあげましょう。会場には渋谷さんの娘さんもおられたとのこと。ご両親の共演を楽しまれましたでしょうか。

 派手ではなかったですが、じわじわと染みてくるような感動が込み上げてきました。楽しませていただき感謝です。

 感動をじっくりと反芻したいところでしたが、進行中のロビーコンサートを聴くべく、エレベーターを待ちきれずに階段を駆け下りました。

 

(客席:正面5-1、¥2000)