ワルター・アウアー&シュトゥットガルト室内管弦楽団
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2018年10月12日(金) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
フルート:ワルター・アウアー
 
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525

プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ長調 作品94 (Fl:ワルター・アウアー)

(アンコール)
グルック:精霊の踊り

(休憩15分)

バーバー:弦楽のためのアダージョ

チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48

(アンコール)
チャイコフスキー:「四季」より 10月「秋の歌」
芥川也寸志:「トリプティーク」 より 第3楽章
モーツァルト:「カッサシオン」 K.63 より Vアンダンテ

 ウィーン・フィル首席フルート奏者のワルター・アウアーとシュトゥットガルト室内管弦楽団の共演が売りのコンサートです。個人的にはアウアーというよりシュトゥットガルト室内管弦楽団に懐かしさを覚えて楽しみにしていました。
 若い頃、まだLPレコードの時代、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団はネビル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団とともに、私に音楽の楽しみを教えてくれました。大変お世話になったオケであり、何か旧友に会うかのような感慨を持ちながらコンサートに臨みました。

 職場を早く出て、大急ぎでりゅーとぴあに到着。既に開場されており、ホールは賑わいを見せていました。インフォで某コンサートのチケットを買ってから入場。3階席は使用されず、1階席と2階B、C、Dブロックのみ使用されましたが、客の入りはかなり良く、8割程度でしょうか。

 開演時間となり、奏者が入場。第1ヴァイオリン5人、第2ヴァイオリン4人、ヴィオラ4人、チェロ3人、コントラバス1人という編成で、チェロ以外は立っての演奏でした。指揮者はなく、コンンミスのリードで演奏されました。室内管弦楽団というものの、管楽器も打楽器もなく、弦だけの編成ですので、弦楽合奏団というべきでしょう。

 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」で開演しました。弦楽アンサンブルの美しさ、軽快で弾むような、生き生きとした音楽。名曲中の名曲というべきこの曲のすばらしさを再認識させる演奏でした。
 楽章間に拍手が入り、クラシックコンサートに慣れていない人も多いようでした。でも、これはすばらしいことであり、クラシックコンサートに新しい客が増えたということを示します。こういう名曲コンサートをきっかけに、クラシック音楽に興味を持ち、コンサートに足を運んでもらいたいものです。

 続いてはワルター・アウアーさんを迎えてのプロコフィエフのフルート・ソナタです。この曲を聴くのは初めてです。ソナタというものの、弦楽オーケストラとの共演というのも面白く、フルート協奏曲として楽しめました。
 アウアーさんのしなやかで柔らかなフルート。草原を吹き渡る風の如く、爽やかさも感じさせました。美くしい弦楽アンサンブルと融合し、せめぎ合い、聴き応えある音楽を創り出していました。

 アンコールには「精霊の踊り」。囁くように優しく歌うフルートとビロードのように柔らかな弦楽の調べ。胸に染みる清廉な音楽に心が洗われるようでした。

 休憩後の最初は、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」で、弦楽合奏の真髄を聴かせてくれました。うねりながら天に昇る心痛な感情の高ぶり。絶望感の中にみえる一条の光。良い音楽を聴いたという感慨に耽りました。

 最後はチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」です。各楽章の対比も鮮やかに、ロマン溢れる胸を打つ音楽に身を委ねました。第3楽章「エレジー」はため息が出るほどに美しく、小気味良く加速し、高揚感あふれるフィナーレで感動の音楽を締めくくりました。

 アンコールはサービス良く3曲。季節に合わせた「秋の歌」をしっとりと演奏し、意表をついた「トリプティーク」で盛り上げ、「カッサシオン」で興奮を鎮めて終演となりました。

 プロモーション的にはアウアーのフルートを前面に出したコンサートでしたが、シュトゥットガルト室内管弦楽団の極上の弦楽アンサンブルに酔いしれた一夜でした。ここ数年で聴いたなかでも最高のアンサンブルではなかったでしょうか。良かったです。

 大きな感動と満足感を胸に、ホールを後にしました。車のTVでビッグスワンで行われているサッカーの日本代表戦の中継を聴きながら帰路に着き、家に着いたところで日本の勝利が決まりました。良い気分で晩酌をして眠りにつきました。
 

(客席:2階C3-7、会員割引:¥4500)