東京交響楽団第85回新潟定期演奏会
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2014年9月23日(火) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:準・メルクル
コンサートマスター:田尻 順
 



早坂文雄:左方の舞と右方の舞

R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

(休憩20分)

メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

(アンコール)
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
 
 
 6月以来の久しぶりの東響新潟定期です。いつもは日曜日開催ですが、今回は祝日の開催です。21日に川崎で開催された名曲全集と同じ内容です。

 東京か川崎で本番をやった後、新潟で演奏するというのが新潟定期の売りですが、実は東響は、昨夜宇都宮で、飯森さんの指揮で「クロネコファミリーコンサート」で演奏しています。川崎の後に別の指揮者で、全く別の曲を演奏し、その後にまた演奏ということですから、気持ちの切り替えが難しいのではないかと勝手に心配しました。団員の皆さんはご苦労さんです。

 穏やかな好天の中、所用を済ませて会場入り。定期会員席以外は、いつもより空席が多いような印象です。

 拍手の中楽員の入場。今日のコンマスは、いつも次席で活躍しているアシスタント・コンサートマスターの田尻さんです。

 メルクルさんが登場して、最初は早坂文雄の曲。ちょっと仰々しいような曲ですが、音響的に楽しめました。この曲の作曲は1941年で、初演は1942年とのこと。太平洋戦争の始まった直後です。戦時下でこんな曲が作られていたなんて、たいしたものと感銘しました。早坂氏の生まれたのは1917年ですから、作曲時の年齢が24歳というのも驚きです。当時の日本の音楽水準も高かったのですね。

 続いては「ティル」。東響の絶妙なアンサンブルで、精緻かつ軽妙なR.シュトラウスの世界が示現されていました。各楽器のソロも無難にまとめていて、さすがに東響と感銘しました。

 休憩後は「イタリア」。全体に早めのテンポで、第1楽章は、快晴の空の下、オープンカーで疾走するような爽やかで軽快な演奏でした。第2、第3楽章は伸びやかに歌わせ、木陰でひと休みという感じ。そして第4楽章は、再びギアチェンジしてエンジン全開。速いテンポでグイグイと加速し、ドイツ車でアウトバーンを猛スピードで走るような爽快感を感じました。
 東響のアンサンブルは、一糸乱れることなく、明るく元気な、躍動感ある音楽を創り出していました。メルクルさんは暗譜で指揮をし、東響の実力を余すことなく引き出していました。

 演奏が終わって、時刻はまだ6時半。あまりに早く、きっとアンコールがあるに違いないと思いましたが、メルクルさんの日本語での挨拶の後、期待通りに「フィンガルの洞窟」を爽やかに演奏して終演となりました。

 こんなにも生き生きとした東響を聴くのは久しぶりに思います。リズム感、躍動感に溢れ、生命感があり、飛び跳ねるような音楽に心躍りました。コンマスを務めた田尻さんも素晴らしかったです。

 20日:サントリー、21日:川崎、22日:宇都宮、そして今日は新潟という強行軍。東響の皆さんはきっと疲れているに違いないと心配していたのですが、全くの杞憂でした。疲れなど微塵も感じさせず、元気溢れる音楽を聴かせていただき、大満足でした。メルクルさんと東響の相性も良いように思われ、またの共演を期待したいと思います

 今日の演目の「イタリア」とアンコールに演奏した「フィンガルの洞窟」を聴きながら、大学1年のとき、長沢亀先生の音楽の授業で聴いたのが懐かしく思い出されました。レコードを聴いていれば単位がもらえたという講義でしたが、それをきっかけに音楽好きになったという私なのでした。

   
   
(客席:2階C*−*、S席:定期会員 \5500)