トリオ・ベルガルモ 結成10周年記念コンサート
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2014年7月26日(土) 14:00  だいしホール
 
トリオ・ベルガルモ  Vn:庄司 愛、Vc:渋谷陽子、Pf:石井朋子
 


フンメル:ピアノ三重奏曲 ヘ長調 Op.22

フォーレ:ピアノ三重奏曲 ニ短調 Op.120

(休憩20分)

チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50 「偉大な芸術家の思い出に」


(アンコール)
ラフマニノフ:6手のためのワルツ
パッヘルベル:カノン
 
 

 新潟が世界に誇るミューズたち。新潟のクラシックファンに絶大な人気を誇る「トリオ・ベルガルモ」が結成10周年を迎えました。この記念コンサートが開催されるとあって、ベルガルモ・ファンの一員としましては、聴きに行かないわけにはいきません。チケットは発売開始とともにゲットし、あとはスケジュール調整のみ。

 今日の演目は、スタジオ・スガマタ室内楽シリーズで演奏された中から3曲が選ばれています。フンメルはこれまで聴いたことがありませんが、フォーレは、先週のインストアライブで感激したばかりです。チャイコフスキーは2012年のクリスマスコンサートでの感動が今なお記憶に残っています。今日はどんな演奏が聴けるのか期待は膨らむばかりです。

 今日は朝から晴れ渡り、気温は上昇し続け、今年最高の暑さとなりました。汗を拭きながら、1時にホール入り。開場待ちの列の2番目に並びました。私がこのコンサートに臨む意気込みとご理解ください。開場となり、正面2列目に席を取りました。ホールは老若男女で満席の大盛況。ベルガルモの人気のほどが伺えます。

 黒のドレスの渋谷さん、青のドレスの庄司さん、濃紺のドレスの石井さんが登場して開演です。最初はフンメル。初めて聴きましたが、モーツァルトの内弟子とのことで、モーツァルト的雰囲気か感じられるチャーミングな曲でした。コンサートの最初を飾る前菜としてふさわしく思われました。第3楽章のトルコ行進曲は聴き映えがして楽しめました。

 続くフォーレは先日聴いたばかりですが、インストアという狭い空間で聴いたときとは全く印象が異なりました。インストアライブでも緊張感ある演奏に感激したのですが、別次元の演奏に驚きました。演奏環境もピアノも違いますし、演奏への意気込みも違いましょうから当然かもしれませんが、3人が寄り添ったり、ぶつかり合ったり、丁々発止のせめぎ合いに、唖然と聴きほれるばかりでした。

 後半はチャイコフスキーです。前半の感動が冷めやらぬ中、後半に突入しました。石井さんのピアノの前奏に重ねて、渋谷さんが哀愁溢れるメロディを朗々と奏で、そこに庄司さんが加わって第1楽章が始まりました。緊張感溢れる迫真の演奏。息をつく間もありません。前半抑えていた石井さんのピアノも全開。ヴァイオリンとチェロの切々とした悲しげな調べに隠れた激情が、胸を打ちました。

 第2楽章の変奏は、メリハリが付けられ、味わい深いものとなりました。途中で若干の休みを入れて演奏が続けられましたが、3人の息詰まる演奏に、途中で拍手したくなる場面もありました。フィナーレの第1楽章のメロディが再現される場面は、情熱がほとばしるような鬼気迫る演奏となり、胸が高鳴り、精神的高揚を感じました。この圧倒的な演奏を前にして、息を呑むしかありませんでした。

 こんな演奏を新潟で聴けるなんて、何と幸せなことでしょう。新潟にベルガルモがあればこそです。この幸運を感謝せねばなりません。

 庄司さんによる挨拶の後、アンコールは、意表をついて3人のピアノ連弾で、6手のためのワルツが演奏されました。ヘビーな演奏の後の息抜き的な演目に、ベルガルモのセンスの良さを感じました。その後、抜かりなく、ちゃんと三重奏でパッヘルベルのカノンを演奏し、終演となりました。

 冷房の効いた館内でしたが、まさに10年の集大成というべき熱演に、ホールの熱気は最高潮。猛暑の外に負けていません。「凄い演奏を聴いちゃった」という驚きと感動、幸福感を胸に会場を後にしました。

 10年の節目を迎え、今後の益々の活躍が期待されます。3人とも、演奏家として、指導者として活躍されておられ、新潟の音楽界に欠かせない存在になられています。個人として、ベルガルモとして、さらに円熟した音楽を聴かせてくれるものと思います。陰ながら応援を続けていきたいと思います。
 


(客席:B−7、2000円)