東京交響楽団第75回新潟定期演奏会
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2012年11月11日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮・ヴァイオリン:ネマニャ・ラドゥロヴィチ
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
 



J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番二短調BWV1004より)

J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV1041

(休憩20分)

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

(アンコール)
J.S.バッハ:アルマンド(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番二短調BWV1004より)
 
 

 9月から3ヶ月連続の東響新潟定期です。昼のロビーコンサートを聴き、一旦帰宅して、再度出直しました。何とか雨が降らないで持ちこたえてくれましたが、怪しげです。

 さて、今日の定期は、75回を数えるこれまでの新潟定期の中でも、異色のプログラムです。ラドゥロヴィチの独奏と協奏曲の弾き振りというだけでも面白いのですが、その存在すら知らなかったメンデルスゾーンの「もうひとつの」ヴァイオリン協奏曲を演奏するというのも楽しみでした。
 そして、クラシック演奏らしからぬいでたちのラドゥロヴィチそのものにも興味がわきました。昨日は東京オペラシティで同じプログラムが演奏されましたが、大興奮だったようです。さて、新潟ではいかなる演奏を聴かせてくれるでしょうか。

 ステージにはチェンバロと椅子が少数あるのみで、ちょっと殺風景です。開演時間になっても団員の入場はなく、最初はなんとヴァイオリン独奏です。
 長髪でパーマのかかった頭。燕尾服をモジャモジャにしたような黒のジャケット。そして黒いタイトな革のパンツにブーツ。容姿はまさにハードロックのスターです。外見からはクラシックを演奏するようには見えず、エレキギターが似合いそうです。

 しかし、その姿からは想像できない心打つ音楽に、度肝を抜かれました。決してハードロックのような荒っぽさはなく、繊細で澄んだヴァイオリンの音が素晴らしいホールの響きと調和し、ときに優しく、ときに燃え上がるように、心にダイレクトに迫りました。
 テンポや強弱を大きく揺り動かしながら、体をくねらしたり、足を踏み鳴らしたりしながら演奏する「シャコンヌ」は、バッハの音楽というより、ラドゥロヴィチの音楽というべきでしょう。いきなりの名演奏に驚きを禁じ得ませんでした。

 2曲目はバッハの協奏曲です。東響のメンバーは、弦5部が、4−4−3−2−1の編成で、チェンバロが加わりました。チェロとチェンバロ以外は立っての演奏です。コンマスはニキティンさん。次席は廣岡さんです。
 演奏はやはり大きく揺り動かしながらの演奏で、オケとヴァイオリン独奏とが溶け合った見事な演奏でした。ラドゥロヴィチの良さもさることながら、東響の弦楽メンバーの素晴らしさを再認識しました。音のひとつひとつに輝きがあり、生命感にあふれていました。ホールの響きも良くて、極上のバッハを聴かせていただきました。

 後半はメンデルスゾーンです。最初は、1951年にメニューインによって再発見されたというニ短調の協奏曲です。オケは弦楽だけで、6−5−4−3−2の編成です。
 初めて聴く曲なので、評価はできないのですが、テンポを大きく揺り動かし、自分の音楽を創り出しているようでした。小編成の演奏で、前半のバッハからの流れを感じさせました。メンデルスゾーンが13歳のときの曲だそうですが、よくもまあ、こんな曲を書けたものと感心しました。

 最後は、おなじみのホ短調の協奏曲です。弦の人数が増え、管楽器とティンパニが加わって、通常のオケの編成となりました。これまで同様に指揮台はなく、弓で指揮しながらの演奏です。
 聴き飽きた感のある曲ではありますが、デフォルメされ、新しい音楽に生まれ変わっているかのようでした。生き生きと弾けるような音楽は心地良く、爽やかさを感じました。繊細な音ながらも、情熱も感じさせます。見事なメンデルスゾーンでした。

 アンコールはバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番から「アルマンド」が演奏されました。最初の「シャコンヌ」と同様に、心打つ演奏でした。無伴奏ヴァイオリンで始まり、無伴奏ヴァイオリンで終わる演出は心憎いですね。

 噂には聞いていましたが、ラドゥロヴィチは只者ではありません。外見からは想像できない心打つ音楽に感動しました。かなり崩した感もあり、好みは分かれるかもしれませんが、私は大好きです。演奏後の挨拶の仕方も丁寧であり、人柄の良さも感じました。

 定期演奏会としては異質なプログラムであったかと思いますが、楽しめたコンサートでした。こういうプログラミングをした東響もすばらしいと思います。

 外に出ると小雨がぱらついていました。明日からまた1週間が始まります。天候が荒れませんように・・・。


 3ヶ月連続の新潟定期の反動で、次の定期は来年の3月になります。大晦日にはジルベスターコンサートで新潟に来られますが、しばらく聴けないのは寂しいですね。

 さて、新潟定期が終わったのですが、これから東響の皆さんは多忙な新潟でのコンサートが待っています。火曜日、水曜日に、新潟市内の小学校5年生が全員参加する「わくわくキッズコンサート 」と一般向けの「特割コンサート」が開催され、2日間とも1日3公演というスケジュールです。
 飯森さんの指揮で、素晴らしい演奏を聴かせてくれるものと期待しています。子供たちのオーケストラ体験は、きっと良い思いでとなるものと思います。
 でも、今日から水曜日の夜まで新潟暮らしで、団員の皆さんは大変ですね。新潟の美味しいものでも食べて、頑張っていただきたいと思います。
 

(客席:2階C5−**、S席:定期会員:¥5500)