メジューエワは新潟に何度か来演し、すばらしい演奏を聴かせてくれて、クラシックファンの中では語り草となっていますが、私は都合が合わず、これまで聴くことができませんでした。
今回はりゅーとぴあのベートーヴェン・チクルスの一環として、ベートーヴェンのピアノ・ソナタを2回に分けて演奏するという興味深いプログラムであり、スケジュール調整もできましたので、是非聴きに行こうと楽しみにしていました。
昨日来の強風が吹き荒れ、大荒れの日曜日となりました。雨が降らないだけましという感じでした。ホールに着くとすでに開場されていました。客の入りはちょっと寂しかったですが、その分ゆったりと聴くことができました。
当初のプログラムでは9番・20番・18番の順でしたが、演奏順が入れ替わりました。赤いドレスのメジューエワが譜めくりを従えて登場し、演奏開始です。
まずピアノの音のきれいさに感銘を受けました。完璧なテクニックに裏打ちされた、流れるような演奏に息を呑みました。どんなに速いパッセージでも乱れることはありません。
ダイナミックレンジが広く、スリムな体からは想像できないような力強い音を作り出します。輝きのある高音に音量たっぷりな低音。強奏部でも音の濁りは微塵もありません。速めのテンポで、音楽が泉のごとく満ち溢れ、大きな流れとなってホールを音の洪水で埋め尽くしました。
圧巻はワルトシュタインでした。魔法の箱から湧き上がる音の噴水。機関銃のごとく繰り出される力強い音楽。血沸き肉踊る情熱溢れる演奏に打ちのめされました。すごいベートーヴェンを聴いちゃったというのが率直な感想でした。
一見華奢に見えるメジューエワの体の中には、煮えたぎるマグマが潜んでおり、ピアノを通して溶岩を吹き上げているかのようです。音の火砕流から逃れるすべはなく、ただ圧倒されるのみでした。
外に出ると肌寒さを感じましたが、気分は爽快。精神的高揚を感じて、心は熱く燃え上がっていました。期待以上の良い演奏に大満足でした。次の第2回も楽しみです。今度はもっと客席が埋まると良いですね。
(客席:2階 C2-9、S席:会員割引:3150円) |