東京文化会館50周年記念フェスティバル 記念オペラ 古事記 | |
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2011年11月23日(水) 14:00 東京文化会館 大ホール | |
指揮:大友直人 演出;岩田達宗 管弦楽:東京都交響楽団 合唱:新国立劇場合唱団/日本オペラ協会合唱団 |
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プロローグ 語り部:観世銕之丞 |
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東京文化会館開館50周年記念事業のメインとなる公演です。1996年にドイツのリンツで初演されたものの、日本では演奏会形式での上演が2001年に東京交響楽団の定期演奏会で大友さんの指揮で上演されていますが、オペラとしてのステージ上演はこれまでになく、今回(20日)が日本初演となりました。このオペラは大友さん以外は誰も取り上げなかったとも言えます。 昨夜のベルリンフィル鑑賞のために上京したついでに、せっかくなのでこのオペラを観ることにしました。新国立劇場のルサルカとどっちにしようかと最後まで悩んだのですが、新国は高額チケットしか残がなく、チケットが若干安いこのオペラを観ることにしました。 午前は新百合丘で東京交響楽団のモーツァルトマチネを聴き、大急ぎで上野に向かい、開場時刻に無事到着できました。昼食代わりのサンドイッチをほおばり、開演を待ちました。 ステージ上には傾斜のついた丸い舞台とそれを取り囲む円弧状の舞台のみで、いたってシンプルです。場内が暗転し、オケピットに大友さんが登場して開演です。 プロローグは、観世銕之丞が能の謡い方で日本語で語られました。その後は、25分間の休憩をはさんで全四幕が演じられ、エピローグとして再び観世銕之丞の語りがあって、音楽が消えるようにして、終演となりました。 日本の作曲家による、日本の神話を題材にしたオペラを、日本人がドイツ語で歌い、それを日本人が字幕を見ながら見るというのは、なかなか趣深く感じます。プロローグとエピローグだけ日本語というのは一貫性がないような気もしますが。 長大な神話をコンパクトな話に凝縮していますが、その分わかりやすく、飽きずに楽しむことができました。音楽は効果音的で、わかりやすく、場面を音で見事に表現していました。おどろおどろしい低音の響きが、神秘性を醸し出していました。 舞台装置は単純で、4幕を通じて変化はほとんどありませんでした。円形舞台上ですべてが進行しました。ヤマタノオロチ退治が見せ場とも思えますが、単に合唱団が状況を語るのみで、大蛇が出てくることもなく、スサノウが活躍する演技もありません。シンプルで良い演出とも言えますが、娯楽としての演出もあって良かったかもしれません。 日本神話の世界は、その物語性を考えると、ワーグナー張りの、壮大な楽劇に仕上げることができそうに思えますが、残念ながら、そこまでの雄大さはありません。実際オペラとしての完成度はどうなのでしょうか。1996年にドイツで初演されたものの、日本で演じられなかった理由はあるのだろうなあ、と感じた次第です。 黛氏の最後のオペラを日本で始めて上演したという意義はあるのでしょうが、前記しましたようにオペラとしての完成度はどうなのか、客観的に考えますと疑問がわきます。 でも、実際に観たからこそこんなことを言えるわけですから、まあ、観れて良かったです。 (客席:1階27-32、A席:13000円) |