新潟出身のヴァイオリニスト・枝並千花さんのデビューCD発売記念のコンサートです。先月東京でも開催され、今日はいよいよ故郷での開催です。枝並さんは、昨年末で東京交響楽団を退団され、ソロ活動に専念されるようになりました。今年1月の燕喜館コンサートで聴いたおり、CD発売とこのコンサート開催のアナウンスがあり、楽しみにしていました。
今日は2時まで仕事でしたので、急いで駆けつけましたが、着いたのは開演間近でした。客席は1階と2階正面(Cブロック)のみ開放されていて、すでに2階は満席となっており、1階の前方に席を取りました。結果的に間近で見たり聴いたりできて良かったです。(その後サイド席も開放されたようです。主催者発表の観客数は670人でした。2階正面の特等席はずらりと招待者席になっていて一瞬ムッとしたりしました。)
水色のシワシワのドレスの枝並さんと黒シャツの長尾さんが登場して開演です。枝並さんは長身でスレンダー。相変わらずステージ映えします。ドレスはチラシの写真やCDジャケットの写真と同じ様でした。近くで見ると、美しさもさることながら、体の細さ、特に腕の細さにびっくりしました。一方長尾さんは坊主頭で、失礼ながらクラシックの音楽家には見えず、私と同じ容姿で親近感が湧きました。
さて、これまで枝並さんは東京でフランス音楽のリサイタルをシリーズで行っており、今日の演目は、これまで演奏した中から選曲してプログラミングしたそうです。
前半はフォーレの曲を年代順に演奏しました。「ロマンス」、「月の光」の2曲は美しい小品で、うっとりと聴いていました。ヴァイオリンの音色もきれいであり、豊かな響きのホールに美しく響き渡っていました。3曲目のソナタは後期の曲で、優しさと厳しさが交錯する聴き応えあるものでしたが、馴染みにくい曲調もあってか、単調さを感じないではありませんでした。
後半最初はドビュッシーの小組曲が演奏されました。もともとはピアノ連弾用であり、オーケストラ用に編曲されたものは聴くことがありますが、ヴァイオリンとピアノの演奏は初めてです。前半のフォーレ同様に、柔らかな音色で癒されました。
そして、最後は今日のメインであるフランクのソナタです。やや線が細い印象であり、メロディラインは美しいのですが、音の厚み、力強さはもう一歩のように感じました。ピアノに負けていた感は否めません。しかし、曲の良さは伝わってきました。
アンコールは、誰も聴いたことがないだろうと言っていたサン=サーンスの曲が演奏されました。確かに聴いたことはなく、曲名も知りません。最後にCDのタイトルにもなっている「夢のあとに」が演奏され終演となりました。
いずれの曲も、これまでリサイタルやレコーディングで弾きこんでいただけあって、なかなか素晴らしい演奏ぶりであり、音色もきれいでした。メロディの歌わせぶりも素晴らしいと思いました。しかし、繊細さが感じられた分だけ音の力強さには欠け、線が細いように感じました。小品の演奏では、演奏と音色がうまく噛み合って良かったのですが、ソナタとなると、長尾さんのピアノが良かった分だけヴァイオリンのひ弱さが感じられました。
最初にも書きましたが、枝並さんは長身でありながら非常にスリムで、華奢な体型です。特に腕の細さが気になりました。もっと筋肉を付け、体重を増やした方が良いのではないかと感じました。その方が音の厚み、力強さ、余裕が出てくるんじゃないかと聴きながら勝手に考えていました。余計なお世話でしょうけれど。
デビューCDというと名曲の小品集となることが多いように思いますが、枝並さんの場合は、最初からフォーレとフランクのソナタという意欲的なものです。ヴィジュアル的なJクラシック路線で売れそうですが、アイドル路線とは一線を画した姿勢には感服します。
今日のプログラムも、聴きやすい小品と本格的なソナタを交えてのもので、飽きさせず、よく練られたものと思います。適切な曲目紹介もあって良かったと思います。ただし、客席の方は様々なようで、未就学児入場不可のはずなのに幼児がおられたり、老若男女さまざま。聴きにくい曲もあったのに皆さん静かに聴き入っておられたのは良いのですが、楽章間に拍手が入って、曲への集中をそがれてしまったのが誠に残念に思いました。
素人の感想を勝手にいろいろ書きましたが、期待以上の演奏に十分に楽しませてもらいました。会場で先行発売されたデビューCDも気になりましたが、懐さびしく購入はしませんでした。ごめんなさい。
今後もソナタを演奏していきたいと話されていましたが、益々の活躍が期待されます。ソリストとしてどのように羽ばたいていくのか見守っていきたいと思います。
噂によりますと、近々にめでたい話があるとのこと。お幸せをお祈り申し上げます。
(客席:1階3-8、全席自由:2500円) |