エディタ・グルベローヴァ ソプラノ・リサイタル
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2008年11月18日(火) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ラルフ・ヴァイケルト
管弦楽:東京交響楽団 (コンサートマスター:大谷康子)
 
第1部  
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 (オーケストラ)

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より 
  ドンナ・エルヴィーラのレチタティーヴォ ”なんと酷いことを” 
  〜アリア ”あの人でなしは私をあざむき”  (グルベローヴァ)

モーツァルト:歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」序曲 (オーケストラ)

モーツァルト:歌劇「イドメネオ」より
  エレットラのレチタティーヴォ ”イドメネオ王が亡くなられた?”
   〜アリア ”この心の中に感じるものすべては” (グルベローヴァ)
  バレエ音楽 ”パ・スール” K.367 (オーケストラ)
  エレットラのレチタティーヴォ ”心が乱れる”
   〜アリア ”オレステスとアイアスの苦しみを” (グルベローヴァ)

(休憩20分)

第2部
ドニゼッティ:歌劇「シャモニーのリンダ」より 
  リンダのアリア ”この心の光” (グルベローヴァ)

ロッシーニ:歌劇「ウィリアムテル」序曲 (オーケストラ)

ドニゼッティ:歌劇「ルクレツィア・ボルジア」より
  ルクレツィアのロマンツァ ”安らかに眠っている・・・なんと美しい” (グルベローヴァ)

ベッリーニ:歌劇「ノルマ」序曲 (オーケストラ)

ベッリーニ:歌劇「海賊」より
  イモジェーネのアリア ”その汚れない微笑と” (グルベローヴァ)

(アンコール) 
バーンスタイン:「キャンディード」より
  ”きらびやかに楽しく” (グルベローヴァ)
J.シュトラウスII:喜歌劇「こうもり」より 
  アデーレのアリア ”田舎娘の姿で” (グルベローヴァ)

 
 

 いよいよ冬の訪れ。大荒れの天気です。悪天候の中ホールに向かいました。いつもの駐車場に空きがなかったですが、10分ほど待っていたら、出て行く車と入れ違いに駐車することができました。

 今日の公演はウィーン国立歌劇場来日記念特別演奏会で、新潟テレビ21開局25周年とりゅーとぴあ開館10周年記念公演として開催されました。新潟の他は東京(サントリーホール)、大阪(ザ・シンフォニーホール)と横浜(みなとみらいホール)だけでの開催です。伴奏を務めるのが新潟ではお馴染みの東京交響楽団というのも豪華です。今年初めから主催者の放送局ではスポット広告を流して話題作りしており、私も宣伝につられて早々にチケットを買い、楽しみに待っていました。

 ホールに着くとちょうど開場の時間で、ホワイエは賑わっていました。高額な入場料ながらも入場時に渡されたものは演目の書かれた紙が1枚のみで、パンフレットは1000円で別料金というのは残念でした。さすがのグルベローヴァといえども、地方都市の新潟では満席にはならず、両サイドに空席が目立ちました。S席エリアと最安席エリアだけが賑わっていました。今日のプログラムは、前半がモーツァルト、後半はドニゼッティ、ロッシーニ、ベッリーニで、オーケストラ演奏とグルベローヴァの歌が交互に演じられるという構成です。

 いつものように拍手の中東響のメンバーがステージに上がり開演です。コンミスは何と大谷さん。もう名演が約束されたも同然です。東響との長い付き合いの中で、大谷さん出演の時はハズレがほとんどありませんでしたから。
 ヴァイケルトが登場して「ドン・ジョヴァンニ」序曲で演奏開始です。すでにサントリーでの公演を終えているためもあってか、ヴァイケルトとの息もピッタリ。各パートともすばらしい演奏でした。
 次にいよいよグルベローヴァの登場です。白い衣裳で現れ、圧倒的存在感です。ステージは華やぎ、女王のオーラを発しています。声も良くて一気に引き込まれました。低音部では声が出にくいような様子ですが、声量豊かな歌い振りに感激しました。りゅーとぴあに響き渡る声は美しく、歌姫というにはお年をめされていますが、コロラトゥーラの女王と呼ぶにふさわしく感じました。
 以後、オケの演奏と交互にグルベローヴァが登場して歌声を披露してくれました。各曲は短いですが、オペラの全曲を聴いたかのような満足感を与えてくれました。

 休憩後はグルベローヴァの歌で始まりました。今度は衣裳替えして赤いドレスです。このドニゼッティのすばらしさは本日の公演の白眉じゃなかったでしょうか。ホールに朗々と響き渡る声の美しさ、逆に小さく歌うときの繊細さ、細かいトリル。まさに超絶技巧です。もちろん東響の演奏もすばらしかったです。ブログでお馴染みのチェロ主席の西谷さんのソロで始まったウィリアムテルも良かったです。管楽器も良くて、やっぱり東響はいいなあ、と再認識しました。
 後半のグルベローヴァは前半のモーツァルトとは違って超絶技巧をこれでもかと披露してくれて、驚くばかりでした。当然ながらブラボー(ブラーヴァ)の声が飛び交い、ホールは興奮のるつぼです。
 盛大な拍手とスタンディングオベーションに応えて、アンコールは2曲歌われました。これも当然大盛り上がり。コミカルな演技を交えての「こうもり」で最高潮となりましたが、手を振ってステージを後にして、終演となりました。

 実は今年62歳のグルベローヴァに大きな期待を持ってはいませんでした。歌手としての最盛期は過ぎているはずであり、衰えを感じさせるに違いないと勝手に思い込んでいました。ところが予想に反して若々しく、存在感たっぷりに光り輝くその姿に驚き、衰えを感じさせないその歌声にさらに驚嘆しました。20年位前に録音されたCDを持っていますが、その歌声と遜色なく、むしろ円熟した奥深さを感じます。生で聴くその歌声はCDの比ではありません。一流の歌手というのはこういう人を言うのだろうなと感慨を新たにしました。
 また、りゅーとぴあの盛り上がり方も尋常ではなかったです。おそらくは最初は東京からの追っかけの皆さんが盛り上げてくれたのでしょうが、それに刺激されて新潟の地元民も熱狂していました。

 ホールの熱気を後に外に出ると、寒さが身に染みます。雨の中駐車場まで駆け足しました。今日の公演は県外からの客も多いらしかったですが、駐車場にも県外ナンバーが見られました。
 新潟にいながらにして、こういうすばらしいコンサートを楽しむことができて幸いでした。チケットは高額でしたが、値段分は楽しめたように思います。
 

(客席:2階C5−11、S席、17000円)