Wing Piano Trio Concert
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2008年11月16日(日) 14:30  だいしホール
 
ヴァイオリン:白澤美佳、森まりや  ピアノ:金山千春
 
 
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲

サン=サーンス:序奏とロンドカプリチョーソ (森、金山)

リスト:バラード第2番 ロ短調 (金山)

ダッラピッコラ:タルティーニアーナ・セコンダ (白澤、金山)
        
(休憩15分)

サラサーテ:ナヴァラ 作品33

モシュコフスキー:2台ヴァイオリンとピアノの組曲 作品71

(アンコール)  
モンティ:チャールダッシュ
 

 
 

 今日は朝から雨模様、昨日の好天がうそのようです。冷たい雨が降りしきり、気分はブルーになりますが、こんな時はいい音楽でも聴いて、元気を出さねばなりません。今日は新潟市内の各ホールともいろんな催しがあり、「舘野泉ピアノリサイタル」、「山本真希チャリティコンサート」、「クリスティーネ・ショルンスハイム クラヴィコード・コンサート」、「Wing 〜トリオコンサート〜」などの魅力あるコンサートがあります。しかし、残念なことに見事に時間が重なっています。新潟も文化都市なんだなあと感慨を感じますが、どこに行くべきか悩んでしまいます。さて、本当にどうしましょうかねえ。

 ということで、やっぱりここは正統的には舘野さんでしょうと、雨の中りゅーとぴあに向かいました。白山公園の紅葉は真っ盛り。雨に濡れて一段と色鮮やかとなっていました。ホールに着くとちょうど開場が始まっていました。当日券を買い求めようと受付の前で財布を出しましたが、中年オヤジの頭にはチラシで見た美女3人の顔がよぎり、急遽だいしホールへと予定変更しました。
 雨が降りしきる中駐車場に急ぎ足で向かうと音楽仲間の姿が・・。「あれ?舘野泉聴かないんですか?」と尋ねられましたが、恥ずかしいので「ええ、ちょっと用事ができて・・」とお茶を濁しました。駐車場に着くとまたまた知人に出会ってしまいました。やはり舘野泉さんを聴きに行く人が多いようです。音楽仲間は当然私も聴きに行くものと思っていたらしいです。

 まあ、そんなわけで、だいしホールで開催された「Wing」のコンサートに行きました。Wingというのは、ピアノの白澤美佳、森まりや、ピアノの金山千春の3人のユニットで、出身地は違いますが、3人とも高校、大学と桐朋の同級生だそうです。このうち白澤さんは新潟出身で、「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」のメンバーとしても活躍中です。
 当日券を買い、自由席でしたから、なるべく前方に席を取りました。さすがに本日は催し物が重なっているためか空席が若干目立ちます。ピンク色のチラシのキャッチコピーには「恋人たちに贈るハートフルメロディー」とあり、ペアチケットまで用意されていましたので、中年オヤジが一人で行くのがはばかられたのですが、行ってみたら高年齢層が多く占めていて一安心しました。

 いよいよ開演です。ステージに登場した3人はチラシの写真より大人っぽく、数段きれいです。スリムな体型はドレスがよく似合います。最初は3人で「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲です。ヴァイオリンの2人の音色が違って、最初は違和感を感じましたが、しだいに3人の柔らかなハーモニーが醸し出され、聴く人の心をとらえ、癒されました。自己紹介の後、2曲目は森さんによる「序奏とロンドカプリチョーソ」です。ヴァイオリンの音色はソフトでしたが、緊張したようなこわばり感を感じさせませした。楽譜から目を離さず、余裕がない様子でしたが、演奏としては良かったと思います。3曲目は金山さんのピアノ独奏で、「バラード第2番」。ベーゼンドルファーの重厚な響きがホールにこだまし、これまた良かったと思います。4曲目は白澤さんで、「タルティーニアーナ・セコンダ」という珍しい曲です。初めて聴く曲ですが、叙情的な部分と激しい部分が交錯する聴き応えある曲で、力強いヴァイオリンの音色に圧倒されました。少し上を見ながら弾く姿は美しく、いい演奏だったと思います。

 休憩後の後半は3人による演奏です。3人とも衣裳を変え、髪型まで変わっています。3人とも前半以上にきれいであり、妖艶さも感じさせました。トークの後、最初は「ナヴァラ」です。初めて聴く曲ですが、2台のヴァイオリンの超絶技巧の掛け合いがお見事でした。前半同様に緊張したような森さんに比して、白澤さんは堂々としていて、ときどき天井を見上げて弾く姿は風格すら感じさせます。白澤さんがガンガン弾くので、柔らかな音色の森さんが目立たない場面がありましたが、森さんの演奏も良かったです。次の「2台ヴァイオリンとピアノの組曲」も当然ながら初めてです。モシュコフスキーという名前など聞いたことがありません。4曲からなり、激しさ、躍動感あふれる第1曲、第4曲の間に、叙情的な親しみやすい第2曲、第3曲が挟まります。聴き応えがあり、曲としても隠れた名曲だと思います。演奏はやっぱりすばらしく、2台のヴァイオリンのぶつかり合いとそれを支えるピアノが渾然一体となり、情熱的な音楽を作り出していました。アンコールは「チャールダッシュ」。白澤さんがメインとなり、森さんが伴奏をする感じで、盛り上げてくれました。

 実は、これほどまでにしっかりした演奏を聴かせてくれるとは期待していませんでした。ヴィジュアル的に楽しめれば当所の目的は達成と考えていたのが恥ずかしく思えました。チラシの写真などいかにも今時のギャル風で、通俗名曲のポップスコンサート風かなと思っていたのですが、選曲も渋く、音楽を聴かせようという意欲をひしひしと感じさせました。トークの時などはにこやかで、若さを感じさせますが、演奏になると一転して音楽家に変身します。普通はチラシの写真が一番きれいで、実物はアレッということが多いのですが、3人とも実物の方が何倍もきれいです。特に白澤さんの演奏姿の美しさには息を呑みました。背筋を伸ばし天井を見据える姿は、音楽の女神を感じさせます。特に首の美しさが格別です。あんなにきれいな胸鎖乳突筋は珍しいと思います。興奮して自分でも何を書いているのか分からなくなってしまいましたが、要するに、演奏が良くて、その姿も美しかったということです。今後の益々の活躍が期待され、応援したいと思います。

 最後に、金山さん手作りというパンフレットに3人のサインを入れたというのはすばらしいアイデアと思います。新潟への新幹線の車中で書いたとのことですが、思わぬプレゼントでした。
 

(客席:F−7、全席自由、2800円)