東京交響楽団 第50回新潟定期演奏会
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2008年10月19日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮: ドミトリー・キタエンコ
ヴァイオリン: 鍵冨弦太郎
 

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニ・オネーギン」作品24 より ”ポロネーズ”

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

(休憩:20分)

チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

(アンコール)
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ より 第2楽章

 
 

 今日の定期演奏会は50回という節目であるばかりでなく、1998年10月22日に開館したりゅーとぴあの開館10周年を記念する特別演奏会と位置づけられています。2006年5月の第36回新潟定期で名演を披露してくれたキタエンコも楽しみですが、新潟出身の鍵冨さんが楽しみです。開館記念のガラ・コンサートで、小学校5年生で東響と共演を果たしていますが、その後コンクールで優勝したり、CDを出したりと活躍はめざましく、ついに新潟定期初登場となりました。この10年間でどれほど成長したかを見せてくれるものと期待は高まりました。実は7月のリサイタルでは実力を発揮しきれなかった印象があり、はたして東響と共演できるのだろうかと不安に感じていました。昨日は川崎で同じ演目を演奏していますが、ネット上での評判は今ひとつのようです。
 このように期待と不安が交錯し、その分とても楽しみなコンサートではありましたが、今日は所用があって遠出しなければならず、夕方5時の開演に間に合うかどうか微妙な状況でした。案の定、帰路を急ぎましたが、ホールに着くとすでに1曲目の演奏が始まっていました。

 今日のプログラムはオール・チャイコフスキーです。1曲目は「ポロネーズ」。中には入れませんでしたが、モニタースピーカーからはきれいな音色が聞こえてきました。5分ほどの小品ですが、前菜としては最適だったようです。
 演奏終了とともにホールに入り、いつもの席に着席しました。客の入りは良く、わずかに空席があるのみで、ほぼ満席と言ってもいいくらいです。今日のコンマス(コンミス)は大谷さん。もう名演が約束されたようなものです。

 2曲目は鍵富さんが登場してヴァイオリン協奏曲です。黒シャツ姿で今どきの若者風の出で立ちです。演奏は可もなく不可もなくというところでしょうか。個性は感じられず、演奏で精一杯という感じでした。第1楽章半ばでは息切れしそうでしたが、どうにかカデンツァを乗り切ってくれました。第1楽章終了後に拍手が湧きましたが、思わず拍手するほどの名演とは感じられず、単に間違えた人が多かったのでしょう。総じてそれなりの演奏はしてくれたようには思いましたが、ヴァイオリンの音色は良くなく、特に高音域の音は聞き苦しく感じました。
 一方東響の演奏はすばらしく、弦のきれいな音色に 感激しました。ホールの響きもいつになく良いように感じられました。鍵富さんは、協奏曲で東響と渡り合うにはまだまだ役者不足のようです。キタエンコと東響が何とか取り繕ってくれて、大きな破綻なく演奏し終えることができましたが、ステージマナーを含めて反省すべき事は多かろうと思います。せっかく共演の機会を得たというのにチャンスを生かせきれなかったのは残念です。カーテンコールの時、大谷さんと田尻さんが話をしていましたが、何を話していたんでしょうね。考えてみれば、鍵富さんはまだ学生さんです。この経験を糧として、今後の研鑽に期待しましょう。

 休憩後の後半は交響曲第5番です。サントリー、ミューザと2回の本番を経ての演奏ということもあって、文句のない熱演を披露してくれました。もっと爆発するのかと思いましたが、節度ある演奏だったと思います。管楽器の皆さんもすばらしく、第2楽章のホルンソロも完璧でした。キタエンコと東響が一体となっていることが伝わってきました。大谷さんがあれほど情熱的に体を動かしながら演奏するのは珍しいように思います。キタエンコと東響の相性の良さを感じました。会場も大いに盛り上がりましたが、まさにブラボーに値する名演だったと思います。
 アンコールはやはりチャイコフスキーで、弦楽セレナーデが演奏されました。東響の弦のすばらしさを再認識させて終演となりました。

 東響の皆さんは今週は新潟市の小学校5年生を対象とするコンサートや特割コンサートがあり、新潟での公演が続きます。大変ご苦労なことと思いますが、子供達に音楽の楽しみを味わわせてもらいたいと思います。
 

(客席:2階C5-**、S席:定期会員、5000円)