夏枯れの8月が終わり、新潟の音楽シーズン開幕を告げるコンサートです。目立った宣伝もされていませんでしたが、奥村ファミリーを中心とするコンサートで、曲目も魅力的ですし、奥村愛さんも登場しますので、個人的に楽しみにしていました。チケットも早々に完売とのことでした。
自由席でしたので、早めに行ったのですが、すでに開場は始まっていて、前方の席は埋まっていましたので、やや後方の中央に席を取りました。開演時にはまさに満席。奥村一家の人気はたいしたものですね。
最初は奥村愛(Vn)、奥村和雄(Va)、奥村景(Vc)、相馬上子(Pf)でモーツァルトのピアノ四重奏曲です。オレンジ色のドレスの愛さんはひときわステージに映えます。お父さんのヴィオラに支えられて、愛さんのヴァイオリン、景さんのチェロが歌い、そこにピアノが重なる。なかなか良い演奏と思いましたが、響かないホールの響きもあってか、音としては物足りなく感じました。ピアノが重く感じ、ヴァイオリンは金属的、チェロは鳴りません。席が悪かったのかなあと思いましたが、ヴィオラはきれいでした。
2曲目はボロディンの弦楽四重奏曲です。奥村ファミリーのほか、2ndヴァイオリンに白井さんが加わりました。音響的にはやはりきれいではありません。どうにも愛さんのヴァイオリンが刺激的に感じますし、チェロが響いてきません。それに比して、白井さんのヴァイオリンやお父さんのヴィオラはいい音で響いてきます。どうしてなんでしょうね。演奏も私好みとは違っていました。この曲は数ある弦楽四重奏曲の中でも、抒情性の豊かさでは屈指じゃないかと思うのですが、このようなメランコリーさは排除したような演奏でした。少し早めに感じ、攻撃的な演奏でした。現代曲でも聴くような感じで、メロディは流れません。癒されることなく演奏が終わりました。会場からはブラボーの声が上がってましたので、演奏としては良かったのでしょうけど、私好みではありませんでした。
ちょっとがっかりして、休憩時間は席から立つことなく物思いにふけりました。そして後半はドヴォルザークのピアノ五重奏曲です。演奏は前半同様に、各楽器がせめぎ合うような緊張感ある演奏でした。ホールの響き、楽器の音に耳も慣れ、演奏の仕方も曲にマッチし、これは良かったと思います。さすがに新潟を代表する音楽一家だと感心しました。演奏開始前にお父さんが忘れ物を取りに行って、その間愛さんがトークで場をつないでいたのはご愛敬でした。
ブラボーの声に答えて、愛さんの挨拶の後、アンコールが演奏されました。これは抒情性豊かな演奏でした。ボロディンもこういう演奏をしてほしかったなあなどと感じてしまいました。
総じて感じたのは、お父さんのヴィオラのすばらしさです。しっかりと基礎を保って、手の上で愛さんや景さんを踊らせているようでした。ピアノも含め、いずれの奏者もしっかりした演奏だったと思いましたが、その中にあって、チェロは一歩及ばずという印象もありました。座席の場所が悪いためか、音が響かないこともありましたが、メロディを歌わせない演奏が馴染めませんでした。そういう曲解釈なのかも知れませんけれど。
ということで、良くもあり、悪くもありというコンサートでした。でも、愛さんはヴィジュアル的にもすばらしく、ますます輝きを増しておられるように感じました。新潟での演奏機会がもっともっと増えますように・・・。
終演はかなり遅くなり、駐車料金が高額になってビックリ。中心部の駐車料金は高くて困ります。何とかならないかなあ・・。
(客席:全席自由、I-16、2000円) |