レッド・プリースト
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2007年12月12日(水)19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
 
バッロク・ファンタジア”

J.S.バッハ:プレリュード ホ長調
        (無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 BWV1006 より)
G.P.チーマ:3声のソナタ
イングリッシュ・ファンタジー組曲
R.ジョンソン:サティロスのマスク/平板なマスク
N.ストランジ:怒り
R.ジョンソン:魔女の踊り
A.ヴィヴァルディ:コンチェルト・グロッソ イ短調 RV522
G.F.ヘンデル:恋のアリア(トリオ・ソナタ ロ短調 Op.2-1 より)
J.S.バッハ:プレリュード ト長調(無伴奏チェロ組曲第1番 BWV1007 より)
T.ヴィターリ:シャコンヌ

(休憩20分)

A.ヴィヴァルディ:「四季」
 春 アレグロ(春が来た−鳥の歌−泡立つ小川−嵐−鳥の歌)
    ラルゴ (眠るヤギ飼い/ざわめくシダの葉と草/吠える犬)
    アレグロ(牧歌的な踊り)
 夏 アレグロ・ノン・モルト(熱暑でぐったりして−カッコー−キジバト−
                    ゴシキヒワ−薫る風−北風−嘆く農夫)
    アダージョ/プレスト(嵐を心配して落ち着かない休息/ハエとブヨ/雷)
    プレスト(激しい夏の嵐)
 秋 アレグロ(踊り歌う農夫たち−酔っぱらい−まどろむ酔っぱらいたち)
    アダージョ・モルト(眠る酔っぱらいたち)
    アレグロ(狩り−逃げる雄ジカ−ライフルの銃声と猟犬−雄ジカの死)
 冬 アレグロ・ノン・モルト(痛む凍傷−無慈悲な風−寒さの中で踏みしめる足
                        −風−ガチガチと鳴る歯)
    ラルゴ (炉端で安らかに足りた気分で/戸外の雨)
    アレグロ(氷の上を用心して歩く−転倒−疾走−氷が割れる−シロッコ
                      −闘いを繰り広げるすべての風)

(アンコール)
J-M.ルクレール:タンブーラン
G.タルティーニ:海の音を聴け

 
 

 レッド・プリーストは型破りのバロックという噂は聞いていましたが、実際の演奏は聴いたことがありませんでしたので、興味深く思い、早々にチケットを買っていました。「これでもバロック? これでもクラシック?!」というチラシのコピーが期待を持たせました。ちなみにレッド・プリーストとは赤毛の司祭という意味で、ヴィヴァルディのあだ名なんだそうです。1997年の結成で、リコーダーのピアーズ・アダムス、バロック・ヴァイオリンのジュリア・ビショップ、バロック・チェロのアンジェラ・イースト、チェンバロのハワード・ビーチの4人組です。
 今回の公演は、ステージ上と1階席前方、P席のみが販売されました。ステージ上の席が一番高額ですが、音楽を聴くには良さそうではありません。チケットの販売数そのものが少なかったと思いますが、それなりに客席は埋まっていたようです。私の席は正面左手の通路沿い。ステージの見晴らしが良く、視覚的にも音楽的にも結果的にいい場所でした。

 さて、演奏は・・・。噂通りの型破りな演奏でした。リコーダーのアダムスの英語での曲目解説を交えながら演奏が進みました。いずれのメンバーも演奏技術は素晴らしいものを持っているようです。リコーダーは大小併せて6種類くらい使い分けていました。超絶的な指使いの速さは驚きでした。バロック・ヴァイオリン、バロック・チェロは現代の楽器に比して音量が少ないようですが、柔らかないい音を出していました。曲に合わせて動き回ったり、ダンスをしたり、声を上げたり、ステージに寝転がったりと大忙し。チェロはギターのように抱えて弾いたり、立って弾いたりと常識破り。パフォーマンスのしすぎのようにも感じましたが、嫌みにはならず、上品さは失われません。演奏技術の裏打ちがあり、動き回っても演奏は乱れません。照明の明暗の演出も効果を上げていました。バッハのプレリュードはまじめに弾いてじっくり聴かせてくれました。

 後半は客席後方からメンバーが登場して驚かせました。四季を全曲演奏しましたが、各楽章にドラマとテーマを与えて編曲されており、そのイメージを解説しながら演奏されました。前半同様に驚異的な演奏とパフォーマンスに度肝を抜かれました。リコーダーは取っ替えひっかえ、時には2本同時に吹いたりと、曲芸の域です。チェンバロのビーチは春のラルゴではヴァイオリンを弾いて客席を回って歩いたり、ステージに寝ながら弾いたりと大熱演。あまりにも有名な四季ではありますが、型破りの編曲と演奏で、色彩感豊かな新鮮な喜びを感じさせてくれました。もともと曲に秘められているドラマ性を誇張してデフォルメし、再認識させてくれてました。何気なく聞き流していたこの曲の奥深さを知らしめてくれたように思います。

 アンコールを2曲演奏して終演となりましたが、大いに楽しめたコンサートだったと思います。ただし、音楽パフォーマンスとしては最高だったと思いますが、超絶的演奏にも関わらず、音楽的感動がどうだったのかと振り返ってみても、心に残るものは意外にも乏しかったと言わざるを得ません。これはバロックだのクラシックだのというジャンル分けで考えるべきものではありません。型にはまった邪念を廃して、一夜の喜びを感じ取ればいいのだと思います。娯楽として楽しめたことだけは確かであり、このような音楽を楽しむ心の余裕と感受性は失いたくないと思います。

(客席:1階4-17、S席:会員割引 4500円)