晩秋の新潟。ホールへ向かう小道は落ち葉で埋もれており、冬はすぐそこまで来ていることを実感します。このところコンサートや会合が重なり、さすがに疲れ気味です。足取りは重いですが「りゅーとぴあ」の灯りを見ると期待感で気分は徐々に高まります。
さて、京都市交響楽団は久し振りの新潟公演です。前回は1998年の9月であり、「りゅーとぴあ」開館直前に県民会館で佐渡裕の指揮で幻想交響曲ほかを演奏しています。
今回は京都市交響楽団創立50周年記念の全国ツアーの一環です。オーケストラと狂言がどう結びつくのか理解に苦しみますが、古い京都の伝統を代表する茂山狂言との共演で京都色を出そうということなのだろうと思います。なかなか興味深い試みであり、楽しみにしていた公演です。
ところがチケットの売れ行きは悪かったらしく、客の入りは半分にも満たない状況。これは多分に日程の問題があろうと思います。19日に東響定期があったばかりなのに、中1日でのコンサートはつらいものがあります。コンサート狂いの私でもきつい日程であり、躊躇されたクラシックファンも多かったに違いありません。1週ずらしてくれたら良かったのにねえ・・。と言うことで、ちょっと寂しいコンサートでした。
大友さんと茂山さんによるプレトークの後、いよいよ開演です。楽員はパラパラと入場し、それぞれが勝手に音出ししています。開演のチャイムも聞こえないほど賑やかです。クラリネット奏者が車椅子であったのが目を引きました。東響から移籍したニキティンさんはコンマス席ではなく、その隣りに座っていました。指揮者の大友さんは新潟では大変おなじみ。また本日共演の茂山狂言も毎年能楽堂で公演しており、新潟とは縁が深いです。
前半の「こんぺい糖」は、2004年の「京都の秋音楽祭」の開会記念コンサートのために制作されたオリジナル作品を、今回の50周年記念ツアー用に再編されたものです。
31世紀の「茂山研究所」の博士とその助手が「自然」を巡ってドタバタを演じるというもの。「くるみ割り人形」の曲間に狂言が演じられ、ステージやP席に特設された舞台のほか1階客席にも登場して会場を盛り上げました。
テーマは環境問題を扱った深遠なものですが、娯楽としては楽しい演目で、笑いを誘いながら、和やかな空気の中演奏が進められました。
しかし、京都議定書をネタに使っていましたが、全体としてどこが京都らしいのかは理解できず、狂言との共演の意味は伝わってきませんでした。さらに、純粋に曲の演奏としても驚きはありませんでした。大友さんらしい卒のない演奏ではありましたが。
休憩の後はマーラーの1番。これは私の大好きな曲であり、9月に新潟メモリアルオーケストラで聴いたばかりです。京響の実力を拝聴しようということで期待しました。
さて、演奏は、大友さんのせいなのか、オケの特質なのか、特徴のない凡庸な演奏でした。音楽の流れが感じられず、ばらけた演奏に感じられました。
各楽器が微妙にずれており、管楽器は優秀ですが、弦が弱く感じました。第1楽章冒頭のヴァイオリンの弱奏から音の濁りを感じ、その後も不安定さが垣間見えました。オケ全体が厚みのない抑制がきいた響きで、爆発することはありません。
ちょっと欲求不満でしたが、最後はホルンが頑張って盛り上げてくれました。やはりホルンが起立して演奏するのは精神的高揚に導いてくれて良いですね。
ちなみに第3楽章の出だしはパート全員ではなく、コントラバス1人のソロでした。やっぱりコントラバス1本の方が心にしみます。
アンコールのハンガリー舞曲は流れるような流麗な演奏。本日最高のでき。アンコールが最高というのは残念なことです。
総じて楽しめたコンサートではありましたが、客の入り同様にイマイチのコンサートでした。東響を聴き慣れたせいか、京響の粗が見えすぎてしまいました。東響の演奏水準の高さを再認識しました。音の厚み、音の同期性が向上すればもっと聴き映えがしたと思われます。東響ゆかりの大友さんとニキティンさんでレベルアップを図ってほしいです。
(客席:2階C1−23、S席:4950円、会員割引) |