ウクライナ国立歌劇場 キエフ・オペラ 「トゥーランドット」
  ←前  次→
2006年11月14日  新潟県民会館大ホール
 
 
 
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」 全3幕

指揮:ヴォロディミル・コジュハル
管弦楽:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
合唱:ウクライナ国立歌劇場オペラ合唱団
バレエ:ウクライナ国立歌劇場バレエ団

トゥーランドット:リジヤ・ザビリャスタ
カラフ:オレクサンドル・フレツ
皇帝アルトウム:オレクサンドル・ジャチェンコ
ティムール:セルヒィ・マヘラ
リュー:リリア・フレヴツォヴァ

 
 

 久しぶりのオペラです。それも「トゥーランドット」は初めての実演鑑賞です。私はクラシックを聴き始めて30年以上になりますが、オペラに関しては有名な序曲やアリアを聴く程度で、舞台芸術としてのオペラの良さに気づいたのは、ほんの10年前位からです。NHK教育TVでやっていた「トゥーランドット」や「トスカ」をたまたま見て、オペラのおもしろさに目覚めたのです。
 以前から「誰も寝てはならぬ」は好きで、もし私の声が良かったら、好きな女性の前で歌ってみたいと夢想していました。「もしも歌が歌えたら・・・」「もしもピアノが弾けたなら・・・」と思いは募りますが、見果てぬ夢。

 ということで、数あるオペラの中でも「トゥーランドット」は思い入れがあります。しかし、新潟のような田舎では見る機会はありませんでした。今回キエフ・オペラの公演で「トゥーランドット」をやると聞き、早々にチケットを手に入れました。
 キエフ・バレエは何度か来日しているようですが、キエフ・オペラは今回が初来日だそうです。9月23日から12月3日まで、「トゥーランドット」と「アイーダ」の2演目で全国で60もの公演を行い、1日2公演の日もあるという強行スケジュールです。新潟公演の翌日は上越市で「アイーダ」。過酷な日本ツアーに同情します。

 平日の18時半からの公演は時間的にきついですが、何とかやりくりをつけて県民会館に行くことができました。トリノオリンピックで「誰も寝てはならぬ」が話題になったためというわけでもないでしょうが、客の入りは良く、9割程度は埋まっています。
 今回の席は2階席の最前列。遮るものは何もなく、オーケストラピットから舞台奥まで見晴らしは十分。音響的にも県民会館のベストポジションと私は思っています。狭い県民会館のオーケストラピットに入りきらないためか、舞台袖右側に打楽器群が陣取り、左手にハープが配置されていました。舞台の幕はオペラで良く使われる赤い幕ではなく、県民会館の緞帳がそのまま使用されました。

 開演すると、舞台装置のすばらしさに感心しました。全国を日々巡業する公演ですので、ステージセットも簡素なはずですが、照明の妙もあって、神秘的で奥行き感を感じさせました。衣装もすばらしいです。
 各出演者はダブルキャスト、トリプルキャストですので、新潟公演がどのようなレベルの出演者なのかわからないですが、なかなかの好演と思われます。
 ミヤコ蝶々似のちょっと太めの「トゥーランドット姫」は存在感があり、小柄な「リュー」は可憐であり、薄幸な役柄にピッタリ。ただし、「カラフ」は他の出演者に比して声量が乏しく、オケや合唱に埋もれる場面が多々あったのは残念です。「誰も寝てはならぬ」も力不足は否めません。先日サッバティーニの名唱を聴いたばかりなので、差を感じてしまいました。それを除けば、合唱も力強く、オケの演奏も迫力満点でした。

 音響の良くない県民会館ですが、私の席では音のバランスも良く、何の不満もありませんでした。1幕の後に20分間、2幕の後に30分間の休憩時間が取られ、ホワイエをうろついていると知った顔がちらほら。皆さんお楽しみの様子でした。しかし、設備的に貧弱な県民会館はリッチな気分にさせてくれないのが難点。せめてもう少しホワイエが広いといいのですけどね。

 新潟でオペラを見ようと思っても選択肢などはありません。年に1〜2回しか公演が無く、それも東欧圏の外貨稼ぎの全国ツアーばかりです。東京まで行って5万円もの大金を出してオペラを見れる身分でもありません。1流の歌劇場ではないですが、田舎で安価に見られるということだけで満足しなければなりません。
 そんな現実ではありますが、今回はすばらしい公演内容であり、オペラのすばらしさを改めて実感させてくれました。寒風・氷雨など気にならず、胸を高鳴らせながら帰路につきました。もちろん「誰も寝てはならぬ」を口ずさみながら・・・。
 

(客席:2階1−12、S席:14000円)