ずいぶん前にチケットを買ってしまい、実は後悔しながら会場に向かいました。今週はいろいろと忙しくって、体調も悪く、コンサートへ行く元気もないというのが正直な状況でした。
本日はりゅーとぴあの劇場では「ノイズム」の公演が、音楽文化会館では「上海カルテット」のコンサートがあり、駐車場も満杯。賑わいをみせていました。知り合いの音楽仲間は上海へ行った人がほとんど。私は上海の公演が発表される前にフジ子さんのチケットを買ってしまっていたのでどうしようもありません。
しかし、新潟のような小都市にも関わらず、同じ日、同じ時間にコンサートをぶつけなくてもいいのにねえ・・。個人的にはフジ子さんは2004年7月以来です。今回はフジ子さんというよりモスクワフィルを聴きたいというのが私の目的です。
入場するとフジ子さん関連の露天が並でいます。相変わらず商売上手です。客席に入ると、さすがのフジ子さん人気にも陰りが出てきたのか、あるいは新潟のクラシックファンの多くが上海へ行ってしまったのが原因はわからないですが、S席エリアにかなりの空席があります。8割ほどの入りでしょうか。それでも1階席やステージ回りはぎっしり。客層はいつものコンサートとは明らかに異なります。いやな予感が頭をかすめます。
拍手の中楽員が入場し、シューベルトで演奏開始。オケの音色は硬質で、乾燥した音であり、潤いはありません。金属的な弦の音色が耳に不快です。ただし演奏そのものは難はありません。
オケを見回すと女性の多さに驚きます。もしかしたら女性の方が多いかも。特にチェロは9人中8人(主席の男性以外)が女性という具合です。
2曲目はショパンのコンチェルト。ピアノをセッティングしてフジ子さんの登場。奇抜な衣装が名物ですが、今夜は何と振り袖を羽織っています。それもボリュームがあり、ボサボサ頭と相まって、ボロ布の固まりが歩いていたかと思ってしまいました。
長い序奏に引き続いてフジ子さんのピアノが始まります。さすがにお年を召されたためか、はっきり言って、雑な演奏です。ミスタッチだらけ、指が回らず、力任せに鍵盤を叩き、まるでモールス信号みたいな音。ショパンのロマン性などみじんも感じられません。配られたプログラムに楽章簡には拍手しないよう書かれてありましたが、各楽章間には盛大な拍手が沸き上がります。ほとんどの客は音楽を聴きに来たんじゃなく、フジ子さんを聴きに来たんだろうなと納得しました。
アンコールはショパン2曲とお決まりのラ・カンパネラ。カーテンコールの出入りも面倒くさいのか、3曲を続けての演奏。さすがに18番のラ・カンパネラは手慣れた演奏であり、心揺さぶるものは確かにあります。技術的には問題がありましょうが、この曲で生きている気迫が感じられました。
休憩の後、後半はチャイコフスキー。フジ子さん目当ての人は帰ってしまい、空席が目立ちます。フジ子さんのコンサートの伴奏にモスクワフィルが来ていると勘違いしている人も多いようです。クラシックコンサートの常識で考えると、モスクワフィルの日本公演にフジ子さんがソリストとして参加ということのはず。毎度の事ながら、サモンプロモーションの宣伝の仕方には問題があると思います。
で、演奏はというと、これは聴きものでした。さすがにロシアのオケでのチャイコフスキーはすばらしいです。時間も押しており、後半開始は8時35分。組曲というので、数曲演奏して終わるのかと思いきや、延々1時間演奏が続きました。抜粋とは言うものの十分すぎる内容。シモノフの面目躍如。決してフジ子さんの添え物じゃないのだぞという気概を感じさせました。
オケの音色はやはり乾燥した印象であり、銅鑼は薄っぺらで、大太鼓は軽く、ハープはガリガリと攻撃的な音。しかし、金属的な弦の音は慣れると耳に馴染みます。管楽器はいずれもすばらしいです。シンフォニックな演奏に前半の不満を解消してくれました。アンコールのノクターンではチェロ唯一の男性の独奏がお見事。音にもつやがありました。
終演は何と9時45分。たっぷり内容豊富な一夜でしたが、疲労感も大きかったです。新潟には来年は6月24日にスペイン国立放送交響楽団と来演するそうです。毎度様々なオケと共演しますが、フジ子さんというよりはオケには興味があります。
(客席:2階C4−11、S席15000円) |