フジ子・ヘミング&ベルギー国立管弦楽団
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2004年7月5日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ミッコ・フランク 
ピアノ:フジ子・ヘミング
 
ラヴェル:マ・メール・ロワ

リスト:ピアノ協奏曲第2番 イ長調 S.125

(アンコール)
ショパン:エチュード 第1番「エオリアン・ハープ」
ショパン:エチュード 「遺作」
リスト:ラ・カンパネラ

(休憩20分)

シベリウス:交響曲2番 ニ長調 Op.43

(アンコール)
シベリウス:交響詩「フィンランディア」
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より「モンターギュ家とキャピュレット家」

 
 
 

 テレビ、CD、コンサートと活発な活動で話題のフジ子・ヘミングですが、私の目当てはフジ子さんではなく、ミッコ・フランクです。
 実は2001年2月の東響定期で新潟に来演するはずでしたが、急病のためアントニオ・ピロッリに急遽変更になったことがありました。当時21歳にして世界的に活躍しており、この若い指揮者を是非聴いてみたいと以来思い続けていました。今回フジ子ヘミングと共演するオケの指揮者がミッコ・フランクと知り、フジ子さん目当てではなく駆けつけた次第です。

 興行元の商魂が見え隠れし、あくまでフジ子さんがメインで、ベルギー国立管弦楽団はオマケみたいな宣伝の仕方であるのが不快です。通常のコンサートならば、ミッコ・フランク指揮のベルギー国立管弦楽団の来日公演の共演者としてフジ子さんが出演ということだろうと思います。
 この来日公演のフジ子さん出演以外のコンサートは、美人ヴァイオリニストのジャニーネ・ヤンセンが出演します。チケット代はフジ子さん出演の方が5000円高いですが、この分ボロもうけということでしょうか。さらに、演奏曲目も、ショパン・ピアノ協奏曲第2番もしくはリスト・ピアノ協奏曲第2番、ムソルグスキー・展覧会の絵もしくはシベリウス・交響曲第2番と当日行ってみないと何を演奏するかわからないというのは客を馬鹿にしているとしか言いようがないですが、フジ子さん目当ての人にとってはこれでも良いのだろうと思います。

 会場に赴くとCDやら絵やら、フジ子さん関連のグッズがにぎやかに売られています。まるで縁日のよう。フジ子さんの過去のコンサート・プログラムの販売までしているのに、今回のベルギー国立管弦楽団の来日公演ツアーのパンフレットなどの販売はないのは残念です。入り口で公演チラシと演奏曲目がかかれた紙切れが渡されただけで、演奏者や曲目の詳しい解説はありません。ともかくフジ子さん目当ての客に商品を売ってやろうという姿勢はちょっと不快に感じました。

 ホールに入ると客席は9割ほどの入り。クラシック公演としては盛況です。客層はいつものコンサートとはかなり異なり、老若男女いろいろ。フジ子さん人気のすごさがうかがえます。
 私の客席はEブロック。S席なのでもう少しいい席かと思ったのですが、ローソンで購入したらここになってしまいました。指揮者の顔がよく見えてこれもまた良いだろうと納得するしかありません。

 本日のコンサートの演目は上記内容。曲目だけ見ると、フジ子さんの影が薄い正統的なプログラム構成で、思わずニヤリとしました。チラシにはフジ子さん独奏による「ラ・カンパネラ」その他が演目として書かれていましたが、入り口で配られた演奏曲目の紙にはリストのピアノ協奏曲しかフジ子さんの演目がなく、代わりにチラシには書いていなかった「マ・メール・ロワ」が加わっていました。やむを得ず曲目が変更になることがあるとチラシには断り書きがあったのですが、フジ子さん目当ての人にとっては残念に思われたかもしれません。もちろん私は大喜び。

 さて、拍手の中楽員が入場し、入念なチューニングの後にミッコ・フランクの登場ですが、登場するまでの間がかなりあり、なかなか出てきません。ここまで待たせた指揮者はあまり記憶にありません。
 ミッコ・フランクは25歳という若さのはずですが、小柄ではありますが、予想以上に巨匠然とした風貌で、少しびっくりしました。病気をして長く立っていられないとのことで、指揮台に椅子が用意され、座ったり立ったりしながらの指揮ぶりでした。

 1曲目のラヴェルは特に個性的な演奏ではなかったですが、美しいオケの響きを楽しませてくれました。そして、フジ子さんが登場してリストのピアノ協奏曲。いつもの個性的な衣装、髪型で、演奏もまた個性的。技巧的とは言えず、余情性も乏しいです。曲目自身も好きでないので、感銘は乏しかったです。
 拍手に答えてアンコール。ショパンのエチュード2曲とラ・カンパネラをぬかりなく演奏しましたが、カーテンコールが面倒くさいのか、義務的に3曲をメドレーで弾いてさっさと引っ込んでしまいました。今日は気分が乗らないのか、お疲れなのか、演奏は粗っぽく、ミスタッチも多く、雑に感じました。カーテンコールくらいしっかりやってサービスしてくれてもいいのにねえ。

 後半はシベリウス。指揮台の椅子は前半よりもしっかりしたものに交換されていました。チューニングの後また長い間をおいてミッコ・フランクが登場。フィンランド出身のミッコ・フランクにとっては18番の演目ではなかろうかと思います。奇をてらうことのない正統的な演奏に感銘しました。オケの力量もなかなかのもので大いに満足しました。
 アンコールにフィンランディアとくればいやがおうにも盛り上がります。鳴りやまない拍手に答えロメ・ジュリまで演奏してコンサートが終わりました。

 フジ子さん目当ての人も感動してくれたに違いありません。ミッコ・フランクは期待通りのすばらしさでした。立ったり座ったり、指揮台の手すりにつかまったりとせわしない指揮ぶりではあったのですが、キビキビとして、とても25歳とは思えないマエストロぶりでした。チラシに「若くして老練なる天才指揮者」と紹介されていましたが、ぴったりな表現です。この若さでこのオケの音楽監督をしており、今後の活躍がますます楽しみです。
 なお、今日のブラボー屋さんはかなり気合いが入っていました。絶妙の間で拍手のタイミングを教えてくれあした。主催者が雇ったプロのブラボー屋さんじゃないかと勘ぐってしまったほどですが・・。

 最後に苦言をひとつ。客層の問題もありましょうが、マナー違反がいろいろ。演奏途中で席を立つ人、携帯(?)の音を鳴らしてしまった人、座席でペットボトルのお茶を飲んでいる人、フラッシュ撮影している人などいろいろ。靴音を響かせながら平然と席を立つ妙齢のご婦人には常識を疑いました。最低限のマナーは守りたいものです。

 フジ子さんの演奏は別にして、ミッコ・フランク指揮ベルギー国立管弦楽団の演奏会としてはすばらしい一夜でした。でも、フジ子さんを看板にしないとこれだけの盛況にはならなかっただろうと思うと寂しくもなります。こんな現状、こんな宣伝のされ方をして、ミッコ・フランクやオケの面々はどんな気持ちで日本ツアーをやっているんだろうかとよけいな心配までしてしまいました。

 しかし、フジ子さんはどうして手を変え品を変え似たようなコンサートばかりやってるんでしょうねえ・・。共演相手は違っても、やってることは似たものばかり・・・。おそらくは日本一のCDの売り上げを誇るピアニスト。そんなに稼がなくたっていいのにねえ。
 

(客席:2階E5-16、S席:13000円)